白人と黒人はどちらが妊娠しやすい? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

白人と黒人の比較は妊娠に限らず、多数の調査が報告されていますが、体外受精の妊娠率に関しては本論文が最大数です。本論文では、妊娠のための条件が悪いのは、白人より黒人ですが、妊娠率は同じだったという報告です。

Fertil Steril 2009; 91: 2414-8
要約:George Washington大学における2004~2005年の初回の体外受精の妊娠率を、黒人(71人)と白人(180人)で比較しました。白人と比べ黒人は、得られた受精卵が少なく、BMIが高く、hMG使用量が多く、子宮筋腫の頻度が高かったという悪条件にもかかわらず、妊娠率、生産率、着床率は両者は同等でした。

解説:近年、遺伝子解析をもとに作成された人種の系統図によると、アフリカン(黒人)からコーカソイド(白人)が分岐し、コーカソイドからオセアニアン(オーストラロイド)・イーストアジアン(モンゴロイド)が分岐、そしてイーストアジアンからネイティブアメリカンが分岐したことが明らかになりました(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:遺伝的近縁図.png)。本論文では、妊娠のための条件が悪いのは、白人より黒人ですが、妊娠率は同じ。昨日の論文では、妊娠のための条件が悪いのは、アジア人より白人ですが、妊娠率は逆。人種の系統図のより上流にある方が生殖能力が強く、人種の分岐につれて生殖能力が損なわれたのかもしれません。