日本人は体外受精の妊娠率が低い? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

人種間の違いは医療の様々な場面で認められています。下記の論文は、アジア人(黄色人種)は体外受精の妊娠率が白人より低いことを示したものです。

Fertil Steril 2007; 87: 297-302
要約:米国在住のアジア人(黄色人種)と白人の初回の体外受精の妊娠率を、米国不妊クリニック登録1999~2000年報告(1429人vs 25843 人)、UCSF大学病院の2001~2003年報告(370人vs 197人)で比較しました。アジア人と白人は患者背景と卵巣の反応性に違いを認めませんでしたが、アジア人の妊娠率は白人の0.71倍(オッズ比)であり、同様に生産率は0.69倍でした。多変量解析により、この妊娠率低下は、アジア人であること以外に説明できる要因がなく、アジア人であると妊娠率は白人の0.59倍になるという結果でした。

解説:本当は、下記の理由から卵巣や身体的条件はアジア人の方が白人よりも妊娠率が良いはずなのです。
1)原始卵胞の減少は、アジア人の方が白人より少ない。
2)低BMI(痩せている方)で妊娠率が高い。
3)ひとつの卵胞から出るE2は、アジア人の方が白人より多い。
ただ、本論文では検討できていない事項に、人種間の食生活の違いがあります。しかし、食文化の欧米化により、両者の差異は少なくなりつつありますし、本論文では、米国在住の方のみの調査です。アジア人の妊娠率が低いのは、生物学的あるいは遺伝的な要因であると考えるのが妥当だと思います。以前から米国で発表される体外受精の妊娠率がやけに高いと感じていましたが、人種による違いだとすればある意味納得できます。