時間軸で言えばちょうど中間地点で終わるのも、TENETと「オッペンハイマー」は共通しています。
アインシュタインとのくだりは1947年です。
彼がプリンストン高等研究所の所長となり、アインシュタインと挨拶します。
原爆の開発にも投下にも成功し、戦勝の英雄とされ、公聴会や赤狩りはこの後です。
TENETもそうですが、ちょうど物語の(時間軸の)中間地点で映画が終わります。
ちなみに「TENET」のラストシーンはニールによるナレーションで終わります(このニール役のロバート・パティンソンがクリストファー・ノーラン監督に渡したのが、映画『オッペンハイマー』原作のアメリカンプロメテウス)。
以下はネタバレ注意!!!
It’s the bomb that didn't go off.
The danger no one knew was real.
That's the bomb with the real power to change the world.
(爆弾は爆発しなかった
誰も知らなかった危険は現実のものだった
それこそが、世界を変える真の力を持つ爆弾なのだ)
その意味ではTENETは爆発しなかった爆弾に関する物語であり、「オッペンハイマー」は爆発した爆弾の物語なのかもしれません。
オッペンハイマーについては、プリヤによってTENETでも言及されています。
PRIYA
You’re familiar with the Manhattan Project? As they approached the first atomic test, Oppenheimer became concerned the detonation might produce a chain reaction, engulfing the world.
(マンハッタン計画を知ってる?最初の原子実験に近づくにつれ、オッペンハイマーは爆発が連鎖反応を起こし、世界を飲み込むのではないかと心配するようになった)
PROTAGONIST
They went ahead anyway, and got lucky.
(彼らはとにかく先に進み、幸運に恵まれた)
PRIYA
Think of our scientist as her generation’s Oppenheimer – she devises a method for inverting the world, but becomes convinced that by destroying us, they destroy themselves.
(この科学者を、同世代のオッペンハイマーだと考えてほしい。彼女は世界を反転させる方法を考案するが、我々を破滅させることで自分たちも破滅すると確信するようになる)
PROTAGONIST
The grandfather paradox.
(祖父のパラドックスだな)
PRIYA
Unlike Oppenheimer, she rebels,
(オッペンハイマーと違って、彼女は反抗的だ)
ただ、実際は幸運に恵まれたかどうかは不明で、少なくともオッペンハイマーはアインシュタインに向かって、I believe we did.と答えています(ラストシーン)。
「オッペンハイマー」が描き、「TENET」が描くように、因果は巡るのですが、それは時間を逆行したり、複数の世界線や時間軸が干渉したりします。その意味では、エブエブやDr.ストレンジⅡはあまりに単純な多世界解釈であり、実際はもっと奇妙奇天烈です。
c.f.過去への旅はなにひとつ変えませんでしたが、わたしが学んだことはすべてを変えました(テッド・チャン) 2023年01月26日
僕らはこのことを理解することはできません。
映画を通じて体感するだけです。
You have to start looking at the world in a new way.
Don’t try to understand it.
Feel it.
(世界を全く新しい方法で観始める必要がある。
理解しようとしないで
感じて)