「まったくわからないな。いいかい? 私が走らないことは知っているだろう?」(ルー・タイス) | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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「妄想」というのはヘーゲルの文脈で使いたいと思っており、ヘーゲルの当該の部分を引用しました。

 

かつての寺子屋「ヘーゲル」でもレジュメで長々と紹介した部分ですね。

 

ミネルヴァの梟(ふくろう)は夜飛び立つ、というやつですね。

(すなわち、一番遅いという意味です)

(哲学者が最も遅いという意味です)

ご承知のとおり、ミネルヴァという梟(ふくろう)はアテネの別名でもあり、アテネのペットでもあり、知性や哲学の象徴ですね。

 

 

ミネルヴァのふくろうは、たそがれがやってくるとはじめて飛びはじめる。(『法の哲学』)

 

誰もが知っているこの有名すぎるセリフですが(セリフなのか)、これはとても含蓄深い話です。

 

 

哲学が先に行き、大衆がそれに追随するという(プラトン的な)モデルをヘーゲルは採用していません。Best&Brightest的な世界観では無いということです。

これってどちらかと言えばフレーム問題的ですよね?

すなわちフレーム問題をいかに生命が回避するかについてを先取りしているように思います。

 

ヘーゲルは「哲学はもともといつも来方がおそすぎる」と明確に書いています。遅れてやってくる、と。

現実が先で、哲学は後だと。後知恵だと。

 

(引用開始)

世界がいかにあるべきかを教えることにかんしてなお一言つけくわえるなら、そのためには哲学はもともといつも来方がおそすぎるのである。哲学は世界の思想である以上、現実がその形成過程を完了しておのれを仕上げたあとではじめて、哲学は時間のなかに現れる。(略)

哲学がその理論の灰色に灰色をかさねてえがくとき、生の一つのすがたはすでに老いたものになっているのであって、灰色に灰色ではその生のすがたは若返らされはせず、ただ認識されるだけである。ミネルヴァのふくろうは、たそがれがやってくるとはじめて飛びはじめる。(引用終了)(『法の哲学』)

 

ミネルヴァのふくろうは、たそがれがやってくるとはじめて飛びはじめる。(『法の哲学』)

 

黄昏時という「誰そ彼」の時間がやってきて、その時間の中にミネルヴァのふくろうであるところの哲学者は老いた生を静かに認識するのです。

 

 

 

 

ちなみにヘーゲルを読むにはラテン語とギリシャ語が堪能である必要があり、そして古典に通暁している必要があります。

 

たとえば、Rabbit Holeと言われたら、不思議の国のアリスが思い浮かぶように、です。

 

もしくは自分のコンピューター画面に

 

Follow the white rabbitと書き込まれたら、懐中時計をぶら下げたウサギを思い出すように、です。

 

 

懐かしいですね。

次回作が楽しみです。

 

 

 

たとえば、ヘーゲルが

 

哲学がその理論の灰色に灰色をかさねてえがくとき、生の一つのすがたはすでに老いたものになっているのであって、灰色に灰色ではその生のすがたは若返らされはせず、ただ認識されるだけである。

 

と言ったときに、僕らの胸に去来するのは、

 

「いいかい、きみ。すべての理論は灰いろで、緑に茂るのは生命の黄金の樹だ」

 

というゲーテの、いやファウストの言葉です。

 

もしくは、

 

「ここがロードスだ、ここで跳べ」というイソップ物語をヘーゲルが(「ここがローズだ、ここで踊れ」と)言い換えたとき、そこに使われている洒落は、、、こんな感じです。

 

すなわち、ギリシャ語のロドス(島の名)をロドン(ばらの花)に、ラテン語のsaltus(跳べ)をsalta(踊れ)に少し変えたのです。

 

(引用開始)

 

さっきの慣用句は少し変えればこう聞こえるであろうーー

 

ここがローズだ、ここで踊れ

 

(引用終了)

 

 

今回のシン・メンターBootCampのテーマはGame Changerです。

 

ヘーゲルもルー・タイスも全く違う星から来て、全く違うゲームをしているかのようです。

 

それが共感覚で見通せることが課題です!!

 

 

 

長くなったので、ここで終わります!

実は「妄想」がらみで書きたかったのですが、イントロだけで終わってしまいました。

 

お詫びにキプチョゲのくだりの日英対比を貼り付けておきます。

 

(引用開始)

以前、キプチョゲ・ケイノというケニア出身の長距離ランナーのコーチを務めたことがありました。彼はモントリオール・オリンピック出場を目指していたところで、レースの最終ラップ、最後の四〇〇メートルになるといつも経験する激痛に打ち勝つために、何か心理学的な訓練方法はないか知りたがっていました。

Once I worked with Kip Keino, a distance runner from Kenya who wanted to compete in the Montreal Olympics, and he wanted to know if he could do something psychologically to beat the excruciating pain that he always experienced during the last lap, the last quarter mile of the race.

            *excruciating:耐え難い

 

私は彼にたずねました。

「レースのそのポイントに差しかかったとき、何を考える?」

I asked him, "What do you think about when you get to that point in the race?”

 

「あと四〇〇メートルも走らなければならないと、思います」

He said, "When I get to that point, I think, 'Man, I still have to run another quarter mile.' “

 

「しなければ」を基準に考えることで、自らの痛みの原因をつくり出していました。

By thinking in terms of have to, he was coercing himself and thus creating more pain for himself.

 

そこで、私は言いました。

「解決策はあるよ。でも、君はそれを嫌がるかもしれない」

So I said, "Well, I've got the solution; but you might not like it.”

 

「教えてください。どんな方法ですか?」

He said, "Tell me, please. What is it?”

 

「最終ラップに入って、最後の四〇〇メートルを走らなければならないとわかったら、そこで止まるんだ。走るのをやめるんだよ。そこで止まって、トラックの内側に座り込むんだ」

"When you get to that point, when you know you have to run the last quarter mile, simply stop. Stop running. Stop right there and sit down on the inside curb of the track.”

 

キップは言います。

「そんなの、ばかげています。座り込んだら、レースで負けてしまうじゃないですか」

Kip said, "That's stupid. If I sit down, I will lose the race.”

 

「そうだ。でも、少なくとも君の肺は苦しくなくなる」

I said, "That's true, but at least your lungs will stop burning."

 

「僕が何のために走っていると思っているんですか?」

He said, "What do you think I run for?”

 

「まったくわからないな。 いいかい? 私が走らないことは知っているだろう? 私だって、あの痛みは我慢できないさ」

I said, "I haven't got the slightest idea. Look at me. Do you think I run? I can't stand the pain myself.”

 

「僕が走るのは、モントリオール・オリンピックで勝てたら、牛がもらえるからです。僕の国では、それでずいぶん金持ちになれるんです。家族は、僕をアメリカの大学に送るために自分たちの生活を犠牲にしてきました。だから僕は、家族のためにも国のためにも、金メダルをとりたいんです」

He said, "I run because if I win the Olympics in Montreal, I'll win a cow. They'll give me a cow. And in my country that will make me rich." He told me, "My family sacrificed to send me to the university in the United States. Now, I want to win the gold medal for my family and my country." Remember that his country pulled out of the Montreal Olympic games.

 

私は言いました。

「じゃあ、黙って走ったらどうなんだ? 君は走る必要はない。でも、走ることを選んだ。私になぜ走りたいかを話した。それは君自身の考えだ。本当は無理して走る必要などないんだよ。レースを終える必要なんてないんだ。いつだって止まることができるんだ」

I said, "Why don't you just shut your mouth and run then? You don't have to run. You choose to run. You told me why you want to run. It's your idea. Really, you don't have to run. You don't have to finish the race. You could stop at any time.”

 

「僕は走って勝ちたいんです」

He said, "I want to run and win.”

 

「じゃあ、それに気持ちを集中しろ。『したい』『選ぶ』『好む』を忘れずに練習しなさい」

I said, "Then focus on that. Put your training on a want to, choose to, love to basis.”

 

(pp.85-86 ルー・タイス『アファメーション』、Lou Tice"Smart Talk”)