ディスカバリーチャンネルの全裸サバイバルという番組を観ていると、文明が消えた世界で生き残るのは自分には無理って思えてきます(Youtubeで配信しています)。
彼らも21日間なら生き延びるでしょうが、21年ならばどうでしょう。もしくは210年ならば。
その意味でロビンソン・クルーソーは偉大でした。
僕らは恵まれた豊かな環境にいますが、それに感謝することは少なく、不満ばかりがエゴと共に増大しますw
失ってはじめて分かることはたくさんあります。
そうであるのであれば、頭の中で全てを失ってみるのも方法です(気功技術のARなどがこの発想ですね)。
マッド・マックスな世界になったり、廃墟の世界を歩いていると夢想します。
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「だから僕たちは自分の置かれた状況の本当の状態を、その逆の状況によって示されるまで決して見ないし、自分たちが楽しんでいるものを、それが欠乏するまで大切にするすべを知らない」(「ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー)
漫画のDr.ストーンでは漫画的な清々しさで多くの問題が解決していきます(そう考えると転スラもご都合主義的ではないのかも)。
ただしそこで描かれているのは、徹底的に「科学的」であることです。科学的態度が何より優先されます。
現代文明や現代科学がこれほど大規模なフィクションを用いなくても、実はあっさりと消え去ることはよく知られています。
(というか、我々の歴史は車輪の再発明の繰り返しです)(すなわち、偉大な発見や発明は何度も失われているのです)
科学ではなく、文化であっても同様です。
そんな主題を描いたのが、ビートルズが消えた世界である「Yesterday」です。
昨日まではみんながビートルズを知っていたのに、今日は誰も知らないのです。
この「自分以外のすべての人がビートルズを知らなくなったら??」という世界を描いた映画らしい映画が「イエスタディ」です。
いや、本当に映画らしい映画です。
ビートルズが好きならば、感動間違いなしです。
というか、ボヘミアン・ラプソディがクイーンを知らない世代にも突き刺さったように、このYesterdayもビートルズを知らない世代にビートルズを知るきっかけになって欲しいと思います。
本当に名曲ばかりです。
それほど知られていない役者さんをキャスティングしているのも、非常に良いです。
もう一つ嬉しいのは、エド・シーランがカメオ出演していることです。
いやいあ、カメオ出演というよりは、むしろ準主役クラスでバリバリ出ています。
(ちなみにジェームズ・コーデンも本人役で!!)
どのシーンも非常にリアルで最高です。
良かったのは、彼がビートルズの歌詞を思い出すところ。
世界に存在しないものを生み出すときって、こんな感じなのではないかと思います。
頭のどこかにアクセスして、引き出しながら、消去法で消していく、そんな創作と想起の秘密を
思わせます。
「では、知識がなにかこんな風に仕方で生じたときに、それは想起であるということも、われわれは同意するだろうか。どんな風な仕方かと言えば、こんなだ。もしもだれかが何かを見たり、聞いたり、なにか別の感覚でとらえたりした場合に、その当のものを認めるばかりではなくて、別のものをも想い浮かべるとすればーーーこの両者については同一のではなく、別の知識が存在するのだがーーこの想い浮かべたものをかれは想起したのだ、と言うのは正しくないだろうか」(プラトン『パイドン ー魂の不滅について』)
ネタバレは避けたいので、あまり多くは語りませんが、ビートルズ好きであれば(そしてエド・シーランが好きならなおさら)是非見てみてください!
監督のこだわりで録音はすべてライブ録音だそうです(レ・ミゼラブルでアカデミー録音賞を撮ったサイモン・ヘイズによる収録)。
漫画「Dr.ストーン」も映画「イエスタディ」もどちらも荒唐無稽なSFです。
しかし、我々の世界はいつも小さな「イエスタディ」を繰り返しています。
(映画の中でも消えてしまったものはただビートルズだけではないことが明かされています)
オルテガは「大衆の反逆」の中でこんな風に(注で)書いています。
今日の最も偉大な物理学者の一人で、アインシュタインの同僚でもあり継承者でもあるヘルマン・ヴェイルは、友人との対話の中でつねに次のようなことをいっている。つまり、もし特定の十もしくは十二人の物理学者が突然死んだとすれば、今日の物理学の軌跡が永遠に人間から消え去ってしまうことはほとんどまちがいないだろう。人間の知性を物理理論の複雑な抽象性に適合させるには、何世紀にもわたる準備期間が必要だったのである。なんらかの突発事件がかくも驚異的な人間の可能性ーーーしかもそれは未来の技術の基礎でもあるのだがーーーを抹殺してしまうことさえありうるのだ。(オルテガ『大衆の反逆』)
そしてこのような「かくも驚異的な人間の可能性の抹殺」はおそらくは日々起きています。絶滅危惧種が絶滅種になっていくように。
昨日までは当たり前のことが、今日は大きな災厄となっているのです。
そして、そこでは自分一人だけが継承者であるという自体も想定されます。
(というか、もう少し話は単純で、我々は六次の隔たりどころか二次の隔たりしかない近さだとしても、臨場感空間なるバリアでバリバリに分断されていて、ある空間での情報は他の空間では石器時代におけるスマホくらいのギャップがあったりします)(逆にそれを市場の歪みと認識すれば、そこにキャッシュポイントを見つけられます)。
そこでは明晰判明で確実な知識のみが生き残りの必須条件となります。
そう考えれば、我々の価値判断の多くは転倒し、硬い正確な知識のみにしか興味がなくなるのではないかと思います。
それは能力の輪の中心になる賢者の石のようなもので、他の人にとってはただのつまらない石に見えるですが、輪の中にいる人には奇跡を起こす石なのです。
抽象的で分からないと考えるならば、気功師の皆さんはこう考えてください。
自分以外の誰一人気功を知らない世界に移行してしまったとしたら、、とw
というわけで、是非、「イエスタディ」を楽しんでください!
ちなみに小ネタを一つ。
ポール・マッカトニーに映画のタイトルを「イエスタディ」にするよと伝えたら、ポールは真顔で「いや、『スクランブルド・エッグ』の方がいい」とガチで答えられたそうです(ご承知のとおり、ポールが最初にYesterdayを思いついたときの歌詞はスクランブルドエッグでしたw)
c.f.ポールの創作の秘密と糖質制限だけではダメな理由 〜何を食べようかと思いわずらうな〜 2014年06月14日
【映画紹介】
ジョーカーの恋人(ハーレクイン)の映画も面白そうです(^o^)
*主演のマーゴット・ロビーは、最近で言えば「Once upon a time,,,in Hollywood」でシャロン・テートを優雅に演じ、スケートリンクの上で「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」を本人ばりに演じあげ(ドキュメンタリーと思った人も多いのでは)、そして「スーサイドスクワット」でハーレクインを演じています。楽しみすぎます。
そしてこれはこの種の映画としては、最高に面白かったです。
現代アートを赤裸々に描きます!
サザビーズのオークションの裏側を経糸に、アーティストたち、ギャラリスト、コレクターたちを横糸に美しく編み上げます。ラストも見事すぎる!
映画「アートのお値段」です!!
欲しくなりますね、、、、。
【書籍紹介】
文庫版とキンドル版が出ました!!
ロビンソン・クルーソーの引用はここからの孫引きですm(_ _)m
Dr.ストーンのネタ本と岡田斗司夫さんがおっしゃっていました。
ゆっくりで良いので、しっかり読んでおきたい作品です。
パイドン―魂の不死について (岩波文庫)
792円
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我々の頭の上にはダモクレスの剣がぶら下がっているのです。脆弱な土台の上にいます。
大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)
968円
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二次の隔たりうんぬんはシャノンです。
こちらかの引用というか、紹介です。