23日の深夜、準夜勤より帰宅すると、Amazonからの包みが届いてました。これを待っておりました。
佐野元春のセルフカバーアルバム『自由の岸辺』です。出勤前にうやうやしく拝聴しました。
アルバム『Back To The Street』から二曲、『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』から三曲、『Sweet 16』から二曲、『Stone & Eggs』から二曲、そしてオムニバスアルバムの『VARIOUS ARTISTS Vol1』から一曲、というセレクト。なかなかバランス良く取られた渋い選曲です。前作の『月と専制君主』の時に陽の目を見なかったアルバムからあえて選って取ったのかしら?その辺はよくわかりません。
レア曲であればあるほど、聴けて喜ぶのが佐野元春ファン。このアルバムの選曲にも納得です。
一曲目「ハッピーエンド」、ゆったり横揺れジャングルビートにベースの音がブリブリ鳴っていて、なんと心地好いサウンドか。ニューオリンズなノリはすっかりHBKバンドの御手前ですね。
今作はセルフカバーでなく、セルフ・アップデイト・アルバムだ、と元春がコメントしてますが、二曲目の「僕にできること」はまさにそれ。このヴァージョンは原曲と甲乙つけがたく、早速僕のフェイヴァリットです。ご機嫌に歌い跳ねるベースラインは、アルバム『フルーツ』の収録曲の中でもモチロン、すべての元春ナンバーの中でもイントロ大賞候補にあげたいほどカッコ良くて好き。リアレンジでもこの印象的なベースラインを残してくれて嬉しいですよ。
「僕にできること」の歌詞が一文字、替えられます。《繰り返されてる》が《繰り返されても》になってるのですけど、この《も》の効果がホント素晴らしい。技ありの一品!
「夜に揺れて」の元歌は「夜のスウィンガー」。前作のセルフカバーアルバム同様、英語フレーズを日本語に(可能な限り)書き直して歌ってます。そのことで元歌より良くなってるかは判断が難しいけど、なかなか上手い歌詞をあてていて面白い歌になっています。日本語の歌詞も細かく内容を変えていて、そこも聴きどころ。
「メッセージ」の収録は個人的にとても嬉しかった。僕の好きなあのイントロは跡形もなく、印象的な英語フレーズもがっつり日本語に替わっています。もう一音上げてシャウトしてくれてたら、もっともっと興奮しただろうにな。
「ブルーの見解」→「エンジェルフライ」→「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」の流れが秀逸です。アルバムの頭からジャングルビートの歌を三曲聴かされると、かっこいいんだけれど似たアレンジばかりだなぁ、ってなる、そこへ、「ナポレオンフィッシュと~」と「ブルーの見解」がガツンと風通しを良くしてくれています。
「ブルーの見解」のアレンジはライブではお馴染みのアレですが、ようやくスタジオ録音されて、アルバムで聴けるようになった。喜ばしい。
アルバム内で唯一、2001年の録音「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」は、シングル「君の魂大事な魂」のカップリングで発表されたもの。アナログレコードには収録されないので、ボーナストラックみたいな扱いなのかも知れませんが、この7分強に渡る超絶テンションの名演は、アルバムでもう一度ちゃんと聴かれて評価されるべきでしょう。本当に素晴らしいもの。
「自由の岸辺」はアルバムのタイトル曲、きっと元春も出来に自信があるのでしょうね。前作の『月と専制君主』のタイトル曲も素晴らしかったですから。原曲よりメロディを伸ばして歌い上げるサビがいい。そしてエンディングの《すべてはひとつぅぅぅう》の叫びが実にいい。
ちなみに作詞作曲のクレジットは、この「自由の岸辺」のみ“BLUE”名義。誰が聞いたって元春が作ったってわかるのに、謎のこだわりは継続中です。
「最新マシンを手にした子供たち」、元歌の歌詞《ビデオフィルムのエンドマーク》をグーグルの検索に替えていてドキっとします。
「ふたりの理由、その後」は、正確に言えば『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』に収録されている「ふたりの理由」とベツモノ(あちらはAメロは詞の朗読)で、スピンオフ的な楽曲です。これは小坂忠のアルバムに提供した楽曲のセルフカバー。元春ヴァージョンを楽しみにしていました。聴けて嬉しいですよ。
「グッドタイムズ&バッドタイムス」、1stアルバムの元歌にあったギルバート・オサリバンの風味はすっかり消え、楽しいレゲェのリズムになってる。前の「ふたりの理由」から続けて聴くと、もうタマンナイ。
一度二度聴いたくらいで、感想もなにもないのですけど、率直に今、とても良質なアルバムを聴けたと思いました。すごくキレイな水で育てた野菜や家畜を、身体にいい調理法でバリバリ食べさせてもらったような気分かな。
欲を言えば、もっともっとポップでガツンとノラせてほしかったけど、それはマァ贅沢な話です。文句なしにとびきり良い演奏だってのは分かる。でも、オーガニックな料理の間にジャンクな味付けも少し欲しくなったりするものです。良い音楽がその時に聴きたい音楽と必ずしも一致するとは限らない。
そんなこんな言いつつ、僕はこのアルバムを押します。『MANIJU』が若い聴衆に向けたアルバムなら、この『自由の岸辺』はミドルエイジの聴き手の心に響かないわけがない。これでもかって優れた音でいっぱい耳を肥やすことができそうです。
アルバムのクレジットを見ると、各曲のレコーディング日が表記されてあって、ついじっくり見入っちゃうんですけど、昨年の一月にはもうすべての曲のレコーディング終わってるのにちょっと驚いた(レコーディングしていたのは噂になってましたけど)。
てことは、『MANIJU』の発売前に『自由の岸辺』も作り終えてたってことですよね。昨年の今頃、元春は二枚新譜を持っていて、出すタイミングを手ぐすね引いていたワケですか。なんか、凄いですね
マシス