渡邊昇談話を読む(14) | またしちのブログ

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幕末史などつれづれに…

「子爵渡邊昇氏談」の中で、渡邊昇は大久保邸で会った坂本龍馬と中岡慎太郎に「君は危険だぞ、用心しろ。早く京都を去って大村に帰るがよかろう」と帰国を勧められています。二人は更に

 

「君の危険なのを知ったればこそ、俺等は安全の境に立って居るのだ」

「俺達の安全なのも由緒がある。又貴公の危険を知ったのも、深い由緒が有る事だ」

 

と渡邊に言っているのですが、これは一体どういう意味なのでしょう。ちょっと謎めいた言葉ではありませんか。

 

おそらく前者は「君が危険」つまり渡邊が幕吏に狙われていることを知ったので、我々も安全(と危険)の境に立っている(のを知った)のだという意味で、後者は俺達は安全、つまり幕吏に狙われることはないとわかった。これにはちゃんと理由がある。なおかつ渡邊が危険、つまり幕吏に狙われていると知ったのには深い理由がある、という意味でしょうか。つまり渡邊昇は明らかに幕吏に狙われているが、坂本龍馬と中岡慎太郎は、この時点では「ぎりぎりセーフ」だったということになります。

 

つまり、大久保邸で二人と会った以前に、すでに渡邊は幕吏に狙われるような「何か」をやっていたということになります。そして坂本と中岡は狙われていないというわけですから、それは薩長同盟とは別の何かということになりそうです。いや、そもそも仮にこの三人が薩長同盟締結に大きく貢献していたとしても、それで幕吏に命を狙われるというのは考えにくいし、まして渡邊一人がということになればなおさらではないでしょうか。

 

そうしたことから推測すると、渡邊はこの一件を起こす以前に幕吏に命を狙われるような「何か」をやっていたのではないかと思われます。しかも、おそらくそれは京の都においてです。そして、近藤勇は「そのこと」で渡邊が幕吏に捕らわれたり殺害されたりすることを望まなかったのでしょう。

 

では、それは一体何だったのかを次回考えてみたいと思います。