(11)【Episode.1 祈り 】5 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

【Episode.1 祈り】

 

5

 

 

 

 

 

(7年前、おばあちゃんが亡くなった

あの日の出来事を

今でも時々夢にみる。

 

その後はいつも決まって、

真っ黒い闇のような泥沼にはまり

足掻き藻掻き溺れる夢が続く…)

 

 

 

 

 

 

 

 (その時、手を差し伸べ救ってくれるのは

不思議なことに、私…

雰囲気のまるで違う、もうひとりの私…)

 

 

 

 

 

 

 (この夢を見るといつも自分の身体と魂が

分離してしまいそうな不安定な感覚に陥る…

身体が怠い…

意識の彼方から私を呼ぶ声がする…)

 

 

「…ヤンスッ!…起きるでヤンスッ!」

 

 

 

「……おは…よう…

…ぐうう」

「寝るなっ!でヤンスッ!」

そう言って寝ている少女のそばにいる

木人形は少女の頭を叩く。

「 !! いった〜い!

何も叩かなくてもいいでしょっ !?」

「いつまで寝てる気でヤンスか?

もう隊商の人達は

出発の準備始めてるでヤンス!

せっかく、じいちゃんが話をつけてくれたのに

置いてかれるのはヤでヤンスよ?」

「…分かったわよ」

怠そうにベッドから

起き上がった少女は

自分を叩いた木人形を

軽く叩き返した。

 

「お〜い、マコや

起きたんか?」

下の炊事場から老人が声をかけてきた。

 

「う~ん、今起きたところ〜」

 

「早く起きといで、

ご飯にしようや」

 

「わかった〜すぐ行く〜」

 

 

炊事場の窓から外を眺め

物思いに耽る老人がひとり。

 

広がった額から白髪を後ろへなで付け

口髭と顎髭、豊かな眉毛も

すべて真っ白な老人。

歳に不相応な筋肉質の腕が

シャツの袖から出ている。

その傍らには、

老人と同じくらいの背格好の

木人形が立っていた。

 

 老人は炊事場で

しばらく佇み、

老人がマコと呼ぶ少女が初めて

この家に来た時のことを

思い起こしていた。

 

 

「マコがここへ来て、

もう10年経つかのぅ…」

 

老人はひとり呟いた。

 

 

 

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