【Episode.3それぞれの旅】
14
ハキームはアラムの王都
マハーワープルで小さな乾物屋を商っていた。
と言っても自分の店はなく
アラムの王族お抱えの大豪商に
雇われた商人である。
一夫多妻制を敷くアラム帝国では珍しく
ハリシャ以外の妻を持たないハキームは
妻が多いほど有能の証とされる
アラム王国での地位は低い。
ちなみにアラム人男性は
髭の豊かさもステータスとなる。
チョビ髭のハキームは
見た目のステータスも低い。
気が弱く、争いごとが嫌いな
温厚な性格のため
交渉事に弱く、
あまり商人に向いてないと
ハキーム自身も思っている。
しかし、いつかは自分の店を持ち
一旗揚げたいと切に願っていた。
そうさせたのは、娘のジャミーラが
生まれたからであった。
子供に誇れる自分でありたい
ハキームはそう思うのであった。
あるとき、雇い主の大豪商に
この遠征隊商の話を持ちかけられ
このクリシュナ隊商に加わる一大決心をした。
ハキームはこの隊商で
商人としての経験と実績を積む
良い機会だと判断した。
まだ小さな子供と妻を残して
長旅に出るのは不安だからと
ハリシャとジャミーラを同行させ
専用の荷馬車もその大豪商から貸与してもらい
ハキーム家族はそれに乗って移動している。
ハキームが扱っている商品は
主にクルミやピーナッツなどの木の実や
干し肉や干した果実などの乾物
途中で仕入れた酒なども扱う。
マコマが移動時によく寄り添っている酒樽を
運んでいるロバはハキームの所有物で
酒樽の中身は途中ワインの名産地
ヴィーノで仕入れた物であった。
アラム人にとって酒は宗教上
御法度なので酒は主にバルティカ帝国内で
売りさばくために仕入れている。
ちなみにマコマは、このロバに
「サカダル」と勝手に名前を付けている。
時々、マコマはハキームを見て
思い出し笑いをすることがある。
それはアプサラに添い寝されているとき
ふと彼女が真顔で言った言葉が原因であった。
「ハキームちゃんの顔って、ブタに似てるよね?」
マコマは失礼ながら
今日も笑ってしまうのである。


