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人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

 

 

【Episode.3それぞれの旅】

 

 

13

 

 

ナパを出発して2週間。

クリシュナ隊商の

今日の移動は昼までで終了し

街道脇の野営設備の整った野営場で

今日の夜を明かす準備に取りかかっていた。

大きな街道沿いには何カ所か

こういう場所が設けられていて

旅人が自由に使えるようになっている。

煮炊きする釜戸や調理場には

粗末ながら屋根が設置されていた。

店や宿も少ないが何軒かあり、

小さな宿場町と化して

それなりに旅人達で賑わっていた。

 

 

 

木に寄りかかって休憩していたマコマに

ふくよかな中年のアラム人女性が近付いて来た。

そして、布で手を拭きながら

マコマに話しかけた。

 

 

 

 

「マコちゃん、ちょっといい?

手伝って欲しいんだけど…」

 

 

 

「はい、いいですよ

ハリシャさん」

そう言ってマコマは

疲れた身体を起こす。

 

 

チョビ髭の商人ハキームの妻ハリシャは

マコマに申し訳ないと思いつつ、お願いをする。

 

「ごめんねえ

肉の下処理をしてもらいたいの

思ってたより作るのに

時間かかっちゃって…」

 

「わかりました」

そう答えてハリシャの後を付いて行く。

 

 

粗末な板張りの屋根が掛かった調理場には

薪をくべた釜戸と

大きな石の調理台が2つずつ並んでいた。

 

その一つの調理台の上には、皮を剥がされて

内臓の取り出された二羽の

血まみれ野ウサギと

捌くのに使ったであろう包丁が転がっていた。

 

「これですね?」

 

マコマは包丁を手に取ると

慣れた手つきでウサギを

解体していく。

 

それを笑顔で見つめるハリシャ。

 

 

最近では、マコマは料理当番の手伝いが多い。

肉の下処理や調理の仕方など

料理に関わることの

ほとんどは、このハリシャに手ほどきを受けた。

野鳥の羽根をむしったり、

野ウサギの皮を剥いだり

内臓の取り出しなど

最初は肉の感触、血の臭い

内臓のグロテスクさに怖じけついていたが

拙(つたな)いながらも、今はハリシャのおかげで

何とか出来るようにはなった。

 

 

 

今日はハリシャが食事当番のようで

ハリシャの五才の娘

ジャミーラも母親の手伝いをしていた。

 

一生懸命、パンを作るため

もう一つの調理台の上で

小麦粉をこねているジャミーラ。

 

「やあ、ジャミラちゃん

マコ姉もお料理手伝うよ」

 

「わあ、マコねえちゃん!プッペちゃんも!

ありがとう!」

 

「こねこね手伝うでヤンスよ、ジャミにゃん」

 

「わあ、いっしょにやろう!」

 

小麦粉の付いた手で

プッペの頭を撫でるジャミーラ。

プッペの頭は真っ白になってしまった。

それを見て笑いながらマコマは言う。 

 

「ジャミラちゃんは偉いね」

 

「へへっ」

頬と鼻に小麦粉を付けたまま

はにかむジャミーラ。

 

 

 

 

 

実際、五才の子供が親といっしょとはいえ

この遠征隊商に加わっているのだから

大した物だとマコマは感心した。