【Episode.3それぞれの旅】
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天幕の外から仕切りをはぐられて
心臓が飛び出る程驚いたマコマ。
「おまえら、さっきから
うっせーんだよっ!早く寝ろっ!」
マチルダが二人に怒鳴る。
外を見ると
所々焚き火がついていて
剣を抱いた傭兵達がそこで丸くうずくまり、
天幕の横でプッペも
犬のように丸くなって寝ていた。
マチルダは寝ずの番で
隊商の見回りをしていた様子。
「明日も今日以上に歩くからな
早く寝ろ、マコ!
アプサラぁ、あんたもいい加減にしろよ?」
二人は叱られて
布団に潜った。
布団の中から
クスクスとふたりの笑い声が聞こえた。
ナパを出発して十日が過ぎた。
その間クリシュナ隊商は
ガルガンチュア山脈に沿った
町や村をいくつか経由して
帝国街道をひたすら西へ移動していた。
雑用係のマコマの毎日は忙しい。
荷物運びは勿論のこと
野営の天幕設置の手伝い
夕食作りなど。
町や村に着けば
広場を野営に使用出来るか
権力者のところへ隊長が話し合いに行く。
その時マチルダと共に隊長に付いて行ったり
宿が必要なときは
宿を手配する商人に付いていったり
市場で売買の手伝いや
街道沿いに農家や牧場があれば
直接出向いて
野菜や穀物、家畜などの
仕入れ交渉しに行く商人に付いて行き
食料や物資を運ぶ手伝い等々。
すべて手伝いではあるが
仕事は多岐にわたるため
マコマは毎日疲れ切ってしまっていた。
そんなマコマを
癒やしてくれるのが
実は天幕でのアプサラの添い寝であったりする。
アプサラの添い寝は
色んな旅の話や人の話が聞けて
その上、夜露もしのげて、中々快適だったのだが…
昨日の夕食時、妻帯者のアラム商人から
アプサラに声が掛かって終わりを告げた。
「アプサラ、今晩いいかな?」
「う〜ん、どうしよう…
そろそろ営業開始しようかしらん?」
とマコマに微笑みかける。
「…どうぞ」
と目を合わさず応えるマコマ
男が「じゃ、あとで」と去って行く。
男の姿が見えなくなって
マコマはこそっとアプサラに訊く
「…あの人、奥さんいるのに
いいんですか?
喧嘩とかにならないんですか?」
「ふふ、それは貴方達バルティク人の感覚ね
アラム人は別にそんなこと
気にしないわぁ 」
マコマは口をへの字にした。
「ふ〜ん、やっぱり理解出来ないなぁ」
マコマはそのまま
焚き火の横を陣取り
その日初めて野宿を経験した。
夜中、焚き火をしていても
身体が夜露に濡れて湿ってくる上
固い木の寄りかかって寝ると
身体が痛くなる
とりあえず
何処か町を通りかかったら
頭からすっぽりかぶれる
分厚いローブのようなものを
購入しなければと思案した。
マコマは今まで天幕の中で
温々と過ごせたことの
ありがたみをこの時初めて痛感した。
