(10)【Episode.1 祈り 】4 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

【Episode.1 祈り 】

 

4

 

 

 

 

 再び稲妻が走った時

椅子に座ったガティアの身体がずるりと

床に転がり、マコマと対面した。

 

苦悶の表情で見開いた眼は光を失い

焦点が定まっていなかった。

 

血の涙が皺だらけの

頬を伝って流れていく。

口は大きく開き、

そこから涎のように

血が流れ出て床を汚した…

 

轟く雷鳴は心揺さぶり、

稲光は凄惨な現実を映し出す。

暴風雨は血を撒き散らした。

張り詰めていた緊張が一気に弾け飛ぶ。

 

 

 

  恐怖と混乱…

 

そして絶望と喪失…

 

マコマの中で繋がっていた何かが途切れ

身体を巡る血液が一瞬にして

足元にまで下がったような気がした。

 

頭が妙にひんやりする。

鼻の奥がツンっと刺激された。

視界が急に狭くなり

外側から徐々に暗くなっていく。

 

自分が立っているのか、倒れているのか

それすら、わからなくなった…

 

意識が朦朧として

気を失う瞬間

黒い服を着た見覚えのない男が

突然、目の前に現れ

優しい手付きでマコマの首に

首飾りを掛けて言った。

 

「あなたの祖母の形見です、

大事にしなさい…」

 

その男の声は暖かさを帯びた

慈愛に満ちたものだった。

 

この凄惨な現実から逃避させてくれるような

ぬくもりを感じる声。

 

 そのぬくもりに包まれ安堵しながら

意識が次第に薄れていく。

 

 

 

 ぼんやりと見える黒い服の男…

マコマはふと疑問に思った…

なぜこの人の身体は燃えているのだろう…

なぜおばあちゃんの造りかけの人形を

脇に抱えているのだろうと…

 

 

 

 そして、マコマは意識を失った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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