(9)【Episode.1 祈り 】3 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

【Episode.1 祈り】

 

3

 

 

 

 マコマは居間で木人形を抱いて

絵本を読んでいた。

 

 

 

 

 

 

 外が 急に光り、

木が裂ける乾いた音と共に

振動が部屋にまで伝わると

急に怖くなりテラスにいるはずの

ガティアの元へ走った。

 

「おばあちゃーん!」

 

 テラスへ続く廊下を抜けると

目が眩むようなような鋭い

雷光がマコマを襲い、視界を奪った。

 

 

 

  固く閉じた目をゆっくりと開ける。

 

次第に拡がる光景は

 マコマにとって生涯忘れることの出来ない

出来事を脳裏に刻むことになる。

 

 テラス軒の石積みの壁は崩れ落ち、

軒を支えていた柱は

へし折れて倒れていた。

 

 机は何かでえぐられたように真っ二つになり

花瓶は砕け、生けてあった花は

床の四方八方へ散らばって

ヒラヒラと花びらを揺らしていた。

 

 稲妻が走り、辺りを照らす。

轟音と共に木の破片が庭に舞い上がり

ボロボロになった日除け布が

狂ったように踊った。

 

マコマが最後に見た時同様

庭を向いたまま

ロッキングチェアに座った

ガティアはそこにいた…

 

ただ…

両腕は椅子の肘掛けからだらりと落ち、

血が皺を伝って指先から滴り落ちていた。

 

「…おばあちゃん?」

 

 マコマは恐る恐る後ろから話しかける。

返事はない。

ガティアの影が稲光と共に

自分まで伸びてくる。

 

怖ろしいことが起きている…

 

 本能がそう呼びかけてくる。

心臓の音が速くなるのを感じる。

椅子が風に揺られて

キイキイ不気味な音を鳴らす。

 

 音のする足元を見ると、

そこには血溜まりができていて

その中に老犬プークの姿があった…

背中が痒いときによくやっていた

仰向けのポーズのまま動かない…

虚ろな眼は左右別々のほうを見つめ

裂けたように大きく開いた口からは

伸び切った舌が上顎と下顎の付け根辺りから

だらりと垂れ下がり

腹からは臓物が飛び出していた。

 

 マコマは絶句し、

時が停まったように思えた。

抱いていた木人形が、

思わず腕から滑り落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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