(5)【Prologue】5 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

【Prologue】

 

5

 

 

 

 

 

 

 魔王を取り巻く側近は7人。

ひとりは魔王に抱きつき身悶えている

道化師の格好をした女性。

 

 透き通るような白い肌に

口元のホクロが淫靡な印象を与えた。

艷やかな金色の髪が道化帽からはみ出し

長いまつげは涼しげな

エメラルドグリーンの瞳を

覆い隠している。

 

 厚い唇は血のように真っ赤な紅で彩られ

その口元からは切ない吐息が漏れた。

そして悩ましげにその顔を歪めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 女道化師のすぐ後に

大剣を床に突き刺し両手を剣の柄へ添えて

不気味なくらい静かに佇んでいる巨躯の剣士。

 

ここからでも血の匂いが漂ってきそうな

赤黒い鎧兜で全身を包み、その上から

同じ色のマントを羽織っている。

 

兜のせいで顔は見えないが視線は感じる。

 

 

 

 

 ひとりは魔王の玉座の後ろに控えた

実体があるのかないのか

はっきりしない影のような存在。

 

 刃のような薄い眼は、

少女の姿を目にするや否や見開かれ、

食い入るように少女だけを凝視している。

 

身体を覆う黒い闇が

ざわめき逆立って揺らめいていた。

枯れ枝のような彼の長い人差し指は

少女を貫くように差す。

 

 

 しばらくそのまま固まったように

なっていたが、その後腕を交差させ

苦しそうに身悶え、そして痙攣した。

 

 

 大きな顔の張り型を被った者もいる。

簡素な衣装に身を包み、

張り型の口に手を当て

「ほほほっ!」

とおどけたように微笑む。

 

服から覗く腕の筋肉は

金属のような光沢を放っていた。

 

 

 

 

 どう見ても場違いな子供がふたり。

十才くらいの、ふたりの女の子が

笑顔でこちらの様子を窺っている。

 

 黒いジャンパースカートを履き

頭には黒いベレー帽を被っていた。

 

 ひとりは大きな赤い眼を

くりくり可愛らしく動かして

こちらをずっと観察している。

まるで子猫が遊んでくれ

と言わんばかりの表情で…

 その隣の子は高価そうな

古い本を両手で抱え

少し困ったような、眠たそうな笑顔を向け

静かに口元を結んでいる。

 

 ふたりとも金色の髪だが

光の当たり具合によって黒っぽくも見えた。

 

 

 

 最後の1人は異国の剣を

肩に掛けた中年男。

服装もどこか異国風のものだった。

 

 日に焼けたような土色の肌。

黒い直毛を頭の上で

結って乗せた独特の髪型。

右手で硬そうな無精ヒゲを

撫でながら

太い眉毛を歪ませて

突き刺すような鋭い視線を

こちらに向けていた。

 

 

 

  暫しの沈黙が対峙する勇者たちと

魔王とその側近の間に流れる。

 

 

 

 

 

 

 

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