(6)【Prologue】6 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

【Prologue】

 

6

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、魔王が静寂を破る。

狂気を纏(まと)った魔王の声が

容赦なく勇者達に浴びせられた。

 

「せいぜい楽しませてくれよっ!?」

 

 

 

 

 

魔王の高笑いが

ドーム状の天井を駆け巡り

幾重にも響く。

 

 それを合図に側近達が

ゆっくりと身構えた。

それが少女の最後に見た光景…

 

その直後

激しい衝撃が少女の身体を貫き

赤い液体が飛び散った…

 

何が起こったのか理解できぬまま

少女と勇者と呼ばれた者達は

冷たい床の上に倒れ

温かい自分の血で

肌が濡れるのを感じながら

意識が朦朧としていった…

 

少女は最後の瞬間

黒い幽鬼のような存在が覆い被さり

視界が真っ暗になった。

暗闇の中で哀しく泣き叫ぶ男の姿が

一瞬脳裏に映った…

それが誰だったのかは…

もう思い出すことはできない…

 

 

 

 魔王の宴は

勇者たちが死のダンスを演じて

呆気なく幕を閉じた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王都イシュタル北城壁の外に続く

なだらかな丘。

そこには無数の墓が存在する。

 

 古いもので

千年以上前のものも存在するという…

かつて魔王に挑み命を散らした者達。

 彼らに敬意を払ってか、

それとも慈悲からか、

歴代魔王は自分に挑み、死んでいった者を

弔うことを慣習としている。

 

 いつからか、その共同墓地は

【勇者の丘】と呼ばれた。

 

 

 

無数の勇者の墓標。

 

 

 

 

 吹き荒(すさ)ぶ風が

荒涼とした墓地の穢れを舞い上げ

無数の墓標の間を駈け抜けてゆく。

 

 その中の新たに加えられた

小さな墓標には

壊れた木人形と薄汚れた子供の

人形が添えられていた…

 

 

 

 

 

 

 ここが少女の終焉の地。

 

少女の旅は終わった…

 

 

 

 

 

 

 

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