『怒りの荒野』 | 日々是(ひびこれ)デス・ロード

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〜拳銃は撫でるようにして撃て!!〜

クリフトンという小さな町で娼婦の子として住人たちから蔑まれる不憫な青年・スコットは、ある日、町にやってきたガンマン・タルビーと出会う。
自分を一人の男として扱ってくれるタルビーに惹かれ、弟子入りを懇願するスコットだったが……。



儂、西部劇が大好きです。
で、そのスターの中でも一番好きなのはリー・ヴァン・クリーフ!
そいでもって、禿げの俳優の中で一番好きなのがリー・ヴァン・クリーフ!!
そして、リー・ヴァン・クリーフの出演作で指折りに大好きなのがこの『怒りの荒野』!!!

そんな『怒りの荒野』は、リー・ヴァン・クリーフ演じるカリスマアウトローのタルビーに心惹かた結果ほろ苦い経験をすることになる青年スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)の非常に濃い人間ドラマが見事に描かれた大傑作西部劇です。

一見粋なアウトローかと思いきや、その正体はやはり悪党というタルビー。
しかしながら、スコットを一応それなりに気に掛けたり、スコットに撃たれたラストとか、節々で非常に人間くさいという塩梅が非常に魅力的。
そのなんとも言えぬ人間くささ満載のキャラをより一層魅力的にしているのが、演者のリー・ヴァン・クリーフの技!

この『怒りの荒野』はマカロニ・ウエスタンの例に漏れず「人間」というものをよく描いていて、物語の中に善悪はない。
けれど、「良心」の有無は存在するという超技。
そう、この映画は「人間は「良心」があるかないかでその質が決まる」ということを実に秀逸に描き切っています。

そして、油断を許さないピリピリとした緊張感。
たまらん。

可哀想なスコット。
詳しくは書きませんが、人から散々見下され馬鹿にされ続けてきた俺はスコットの気持ちが痛いほどよく分かります。
批判を覚悟で言いますが、このスコットの気持ちというのは、自分の力だけではどうしようもないくらいに抗えないレベルの弱い立場の者でなければ絶対に分からないし、共感はできないのだ。

で、次第にタルビーの横暴なやり方に疑問を持ちはじめたスコット。
唯一自分に変わらず優しくしてくれ続ける老人マーフがタルビーに射殺された時、スコットは遂に正気を取り戻す。

結果、タルビーを射殺したスコット。そして拳銃を放り捨てる。
結局、タルビーのもとでもそれまでと変わらず奴隷だったスコットが、初めて人間になってこの先生きていかねばならぬということになった瞬間である。

人は所詮独りだということが切に分かる映画です。
そして、それと同時に人には良心があれば互いに助け合って生きていくことができるということも意味しています。

で、しっかしリー・ヴァン・クリーフはいつ見ても超絶格好良いですな!!
自信に溢れた気骨あるその姿、イカすセリフ、エレガントな身のこなし、目に見えぬほどの早撃ち――その全てが完璧!!

青臭いジュリアーノ・ジェンマも実に良いですね~。
ジュリアーノ・ジェンマも好きです!

タルビーから教えてもらった「ガンマン十ヶ条」を口にしながらのクライマックスが本当に良い。
そして、タルビーから心得の其の十を教えてもらった後の決戦…。

本当に、虚しい勝利だ…。


「寂しい曲だ…。上手く吹いてたけど、二度と聞けないんだ…」