〜「よくある話よ――、愛、殺人、和解……」〜
第二次世界大戦の匂いが感じられるロサンゼルス、ベイ・シティ。
老境に差し掛かった私立探偵フィリップ・マーロウは、大女優ドロシー・クインキャノンの娘であるミセス・クレア・キャヴェンディッシュから失踪した元愛人の映画監督ニコ・ピーターソンを捜すよう依頼を受けた。
しかしながら、彼はひき逃げ事故で死亡していた。
だが、クレアはその後に生身のピーターソンを目撃したという。
半信半疑のまま調査を続けるマーロウはニコの妹リンと出会う。
だが、その矢先にリンは謎の二人組のメキシコ人によって惨殺されてしまう。
煮え切らないドロシーとクレアの母娘事情、そして、リンが受けたその非情なる仕打ちに遂にマーロウは怒った!
遂に…、遂に観れましたよ『探偵マーロウ』!!
いやはや、長かった……。
因みに、原作は未読です。
では、もうね、さっそく感想をば。
しかしながらですね、やはりネタバレをしてしまうとチャンドラーのマーロウシリーズ同様にほんとに台無しになるので、極力ネタバレは控えますから短めになるかと思います。
まあね、一にわかチャンドラーファンの独り言みたいな感じと思っていただければ幸いです。
して、もう、のっけから本作は本当に凄まじい!!
というのも、チャンドラーのマーロウシリーズを読めばわかると思いますが、本作はまんまチャンドラーのマーロウシリーズを極めて忠実に実写化したって感じで、極めて作品の雰囲気の完成度が鬼激ヤバなレベルです。
もうね、その雰囲気で一京点!!
監督とかチャンドラー作品大好きなんだろーなー……、という感じが作中の至るところからひしひしと切に伝わってきますよ。
でね、会話劇も一京点!!
特にメインヒロインのクレア役のダイアン・クルーガーが作品にめちゃくちゃハマっていて大変良かったです!
では、肝心のリーアム・ニーソン版マーロウはというと……、個人的には総合で大体90点レベル!(特に後半からが実に90点なのです)
残念ながらリーアム・ニーソンは個人的にイメージする完璧なマーロウではありませんでしたが、物語が進むにつれてリーアム・ニーソンが不器用ながらもマーロウっぽくなっていくではありませんか!
リーアム・ニーソンとハンフリー・ボガートのマーロウしか実写では見たことありませんが、皮肉と皮一枚の余裕っぷりといやらしい微笑ならハンフリー・ボガートの勝ちではあります。
リーアム・ニーソンのマーロウは、なんか全体的に固くて余裕が感じられなかったのがなにより残念でした。
しかしながらです!リーアム・ニーソンのその若干くたびれてるけれどどっしりした様や、くたくたになる感じは自分がイメージするマーロウまんまなんです!
ちゅーわけで、リーアムマーロウは「なんか非常に惜しい感じのフィリップ・マーロウ」という着地です。
鬼の様な完成度な本作は、チャンドラーの著作ではないマーロウ本が原作ではあれどちゃんとチャンドラーしてました。
もうね、脱帽を軽く超えますよこれは。
あとは、キャラ的にはギャングのボス・ルーの運転手で、途中からマーロウのサイドキック的な感じになる巨漢セドリックが大好きになりました。
セドリックがルーを蜂の巣にしたのは心底スカッとしましたし、シカゴタイプライターってやっぱり良い銃だよな、なんて実感したり。
マーロウ作品の十八番で案の定意気投合したマーロウとセドリック。
最後の最後、セドリックの着地点が本当に良かったです。
セドリックなら巧くやってけますよ。
そして、コルム・ミーニイ演じるバーニー・オールズがまんまバーニーだったのが凄えですよ!
混沌とする世界、目まぐるしく変わる展開、チャンドラー作品独特のテンポ、個性爆発なキャラクター達、粋な台詞と会話劇、漢マーロウの生き様、煮え切らないけどちゃんと煮え切るラスト。
もうね、本当に本作は大傑作です!!
非常に上品な映画ですし。
今は珍しい感じかも。
で、因みに、リーアム・ニーソン大好きだけどチャンドラー作品は一切ノータッチ!けど、推理ものとか大好き!なうちの母に改めて感想を訊いてみると、「お話はわかった!けどフツー」的なみたいな感じでした。
一方で、チャンドラー作品を網羅しているうちの父は大体俺と同じ様な感想でしたよ。
なんにせよ、わたくしは本作の一刻も早い円盤化を切に望みます!!
『探偵マーロウ』、最高!!