『座頭市あばれ凧』 | 日々是(ひびこれ)デス・ロード

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〜罪なき者の血が流れ美女の泪が落ちる時、恐怖の花火大会開幕!!〜

座頭市が撃たれた!
功名心に駆られたやくざの清六によって火縄銃で狙撃されたのだ。
しかし幸運にも市は名も知らぬ人々に助けられる。
傷も浅くすぐに回復した市は、自分を助けたという花火師の久兵衛という人物を追って、助けられた礼をすべく鰍沢へと向かう。
そして、その鰍沢では富士川を挟んで、町の皆を楽しませようと久兵衛を呼び寄せた人格者である津向の文吉と欲望の限りを尽くす竹居の安五郎の二大勢力が対立していた――。


今回はシリーズ第7作『座頭市あばれ凧』の感想です。

本作は、コメディ描写とバイオレンス描写が絶妙な具合で同居しているという不思議な映画です。
そして、その先に迎えるホラー描写、と素晴らしい映画でしたね。

本作の脚本を担当したのは座頭市を創り上げたうちの一人と言っても過言ではない犬塚稔。
で、その犬塚稔の障がい者に対するポリシーが如実に出た一本だとも思います。
犬塚稔には障がい者に対してなにかしら思い入れがあるように思えます。
例えば、第3作である『新・座頭市物語』ではヒロインを足が不自由な設定にしようとしたけどヒロインの事務所だかから猛反発を喰らってしまったのは有名な話だと思います。
本作は、市がコメディタッチである種滑稽に描いているし、障がい者やなにかしら不自由なキャラがよく出てきます。
そうした障がい者とか、まぁ所謂社会的弱者の悲哀を描いているといえば聞こえは良いですが、ところがどっこい決してそうにはならないんですよね。
俺自身が社会的弱者気味なんで言わせてもらえば、本作の社会的弱者に関する根底にあるものはか〜な〜りムカつきます。
更には、「社会的弱者はその哀しみは社会的弱者だからしょうがない」とか、果ては「哀しみは救いようがないから笑い飛ばせよ」みたいな空気がガチで最低極まりないです。
これ、もし俺が映画関係者だったらはっきり言って「脚本書いた奴出せよ!!」と即座に怒鳴り込むレベルですね。
そんぐらい酷いと思いました。

でも、多分監督が巧いんでしょうね。
そうした社会的弱者に対する脚本の明らかな屑さ加減を明るい描写や容赦ないバイオレンス描写やハラハラドキドキなホラー描写とかで一級のエンターテイメント映画に仕上げてるんですよ。
これ、本当に監督が凄い。

で、コメディタッチできたかと思ったら、いきなりバイオレンス描写がくるもんだから油断も隙もないですよ(笑)

本作は、市の水中戦とクライマックスの闇討ち&殴り込みは本当に芸術です。
あと、本作は市の戦闘シーンが頭脳戦という点が実に素晴らしいです。
で、その肝心の戦闘シーンは、語彙力が無くて本当に申し訳ないんですが、本当に凄いです。
照明の使い具合や、明るさと暗さの絶妙なバランスといい、本当に上手いです。こんな素人ですらそう切に感じるんだからこりゃ技術力と演出力は相当ですよ。
悪役の本拠地に殴り込みしてからの市の殺陣は本当にやべーです。
美しいんですよガチで。そんなシーンじゃないのに(笑)

で、最後、本作のボスキャラである竹居の安五郎を斬るシーンで、市は瓦を額に喰らって淀んだ血がドロリドロリと流れ出てくるんですね。
でですよ、そのまま竹居の安五郎を斬り殺して、自分の血で血塗れになった市の顔のドアップで完!とか、もう凄まじくて凄まじくて。

市が本作のヒロインであるお国さんに貰った綺麗な浴衣が、市が殺人を犯す度にどんどん血塗れになって汚れていくんですが、やるせねーなーと思いましたよ。


そんな色々と凄まじいシリーズ第7作『座頭市あばれ凧』、恐怖の花火大会がいざ開幕です!!