再投稿!『燃えよドラゴン』 | 日々是(ひびこれ)デス・ロード

日々是(ひびこれ)デス・ロード

自分の好きなものについて垂れ流していくブログです。基本ネタバレ全開なんでそこんところ注意。


※この記事は、以前投稿した『燃えよドラゴン』の記事を改造したものになります。

〜考えるな、感じろ!!〜


少林寺の武術の達人・リーのもとに、ある日、国際情報局から依頼が来る。
それは、リーが麻薬王・ハンが住まう孤島にて3年に一度だけ開かれる武術大会に出場し、ハンの悪事を暴く証拠を掴めというのだ。
実はハンは少林寺の元門弟であり、悪の道に走り少林寺を裏切った男だったのだ。
更にリーには縁深いことに、そのハンのボディーガードであるオハラはリーの妹を自刃に追いやった者であった。
リーは妹の復讐を誓い、そしてハンの悪事を暴く為、武術大会に出場する決心をするのだったーー。



「考えるな、感じろ」
もはやこの世に、この言葉を知らぬ奴は居ないであろう。
今回は、伝説の映画『燃えよドラゴン』の再投稿です。

して、この映画はブルース・リーがふんだんに役職を兼任した『ドラゴンへの道』と同じく、ブルース・リーの哲学が豊富に詰まっている映画といっても過言ではないでしょう。
禅からの引用、“争わざるの理”、無手勝流、等…。
自身のプロモ的な『ドラゴンへの道』を経て、ブルース・リーの到達した一つの境地がこの映画なのでしょう。
はっきり言って、この映画はあまりにも難解すぎて全てを理解することは相当難しいと思うんですよ。
こう書くと、「お前の脳ミソが足りねーだけなんじゃねーの?」とか言われそうなわけですが…。
でも、「考えるな、感じろ!」で思考停止して流してしまうにはあまりにも勿体無い!

だがしかし!この映画はそんなもん知ったこっちゃねぇよ!!という気合いに満ち溢れているのもまた事実!!
恐らく世界指折りに有名であろうラロ・シフリンによる血湧き肉踊るテーマ曲をはじめとする素晴らしい楽曲達、ブルース・リーの肉体美と問答無用の惜し気もないアクション、相変わらずのボブ・ウォール、ヤン・スエ、ジャッキーにサモ・ハンにユン・ピョウやユン・ワー、色っぽいネーチャン達、作戦は大体がゴリ押し、という観る者の思考を見事にゴキゲンにしてくれる数々の要素がこの映画にはごまんと溢れているんですな。

そんな中であっても、ブルース・リーの哲学はちゃんと健在。
達人にとって戦いとはゲームのようなもの、敵は無、真の敵の姿は虚像とか初っぱなから色々出てくるのだが、中でも一番有名なのは教えを乞いに来たガキとのやりとりのシーンであろう。

「蹴ってごらん」とブルース・リー。
「蹴るんだ!」
蹴りを放つガキ。ブルース・リーはそんな青二才に言う。
「なんだそれは?見せ物か?
いいか、“emotional content”だ!もう一度!」
また蹴りを放つガキ。すぐさま静かにキレるブルース・リー。
違う!“emotional content”だ。怒りではない!もう一度だ!」
(↑大切なのは“emotional content”だッ!!)

またまた蹴りを放つガキ。今度は満足げなブルース・リー。
「そうだ!今ので何が解ったか?」
「えーと…」
すぐさまガキの頭を叩くブルース・リー。
ここで本作…否、ブルース・リーの言葉の中で最も有名であろう文句が飛び出る。
「考えるな!感じろ!
それは、いわば月を指差すようなものだ!
指を見るのではない!
指にばかりこだわっていてはその先にある美しいものを見失ってしまうぞ!」
(↑目先のことより常にその先を見据えるのだ!)

それからお辞儀をしてまた頭を叩かれるガキ。
「決して敵から目を放すな!礼をする時もだ!」
これ、剣道をすご〜くほんの少しだけかじっていた時代に一番最初に先生に言われた。これだけは剣道の中で非常に勉強になった。あとは全くダメだったけど。

因みに、この月云々のくだりは禅からの引用である。

で、俺がこの一連のシーンで何度本作を観ても未だに一番気になるのがブルース・リーの言う“emotional content”なる文句。これはなかなか和訳がし辛いのでは?…というか、それ以前に英語圏でも理解し辛いのではないだろうか。
和訳では、富山敬版ではもはや言葉にすらせずにさらっと流され、谷口節版では「気合」というまったくもって極めてトンチンカンな訳がされている。

そして、武術大会の会場に行く途中の船にて船員の若者を苛める性悪な白人ファイターに遭遇したブルース・リー。そいつに「お前の流派はなんだ?」と訊かれ、「私の流派は、言わば、“The art of fighting without fighting”だ」と答えるブルース・リーである。
(↑“The art of fighting without fighting”――すんばらすぃ〜!!)

ちょっと見せてみろよと言うそのファイターを、ブルース・リーは小舟に先導。で、そのままファイターのみを乗せた小舟を船から放すという、まさに「戦わずして勝つ」ことをした粋なことをするブルース・リーなのであった。
因みに、このシーンは明らかに塚原卜伝の超有名な伝承リスペクトであろう。

そして、この「争わざるの理」や「戦わずして勝つ」という点について、孫子の兵法にこんなものがある。
「〜争って勝つは勝の下なり。勝って争うは勝の中なり。争わずして勝つのは勝の上なり〜」
まさにこの時のブルース・リーは争わずして相手に勝ったのである。

そして、鏡の間でのハンとの最終決戦。
敵は無。真の敵は虚像。
最初の師匠との会話の伏線回収である。
敵は無。真の敵は虚像。相対するは己自身。
そしてそれを打ち破った時、初めて高みの境地へと至ることが出来るのだ――。
(↑虚像に惑わされるな!がんばれブルース・リー!)

鏡を打ち破り、真の敵を倒したブルース・リー。
この時、彼は一体何を思ったのだろうか…?


以上、三点を主に紹介したが、本作から学べることはめちゃくちゃ多い!多すぎるのだ!!
個人的には、是非とも本作を道徳の教材に採用してほしいと切に思う次第である。

フォーエバー、ブルース・リー!!