『LOGAN/ローガン』 | 日々是(ひびこれ)デス・ロード

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〜走れ、ローガン!!〜



近未来。
ヒーリング・ファクターは衰え、アダマンチウムの毒素が身体中を蝕む。老いたローガンは、ジェームズ・ハウレットの名でしがないリムジンの運転手をして生計を立てていた。
末期の認知症を発症し、時折能力を暴走させるチャールズを介護する生活。
そんな二人の夢は、小船を買って海に漕ぎ出すこと。
ミュータントの黄昏の時代である。



ジョニー・キャッシュの“Hurt”を使った予告編。こんなにも魂の底に響く特報はそうそうお目にかかれないだろうと俺は思った。
こいつは傑作映画の臭いやーッ!!と本能が感じた。
そして、鼻の穴を開けまくって公開を待っていた。

しかし、残念ながら劇場で観ることは叶わず、俺は特典付きのBlu-ray&DVDを当時買ったのであった。

結論から言えばですよ。もう大大大好きな映画です。
X-MENの映画シリーズの中では問答無用で一番好き。

原案の『オールドマンローガン』も当然通過済み。

ジェームズ・マンゴールド監督の映画は、個人的に『3時10分、決断のとき』が果てしなく好きなわけだが、本作も然り、こういった乾いた西部劇風の映画を作らせたらもう神かと。
前作は前作でぶっ飛んでいてネタとしては面白かったけど、本作は真面目に感動する。


もうのっけからボロッボロなローガン。リムジンで寝てたらラテン野郎共にホイールをパクられそうになる。
で、抗議しようと外へ出たら問答無用でショットガンで撃たれて倒れる。
そして、倒れてる横でタイトル表示というね。
「本作のローガンはこんな感じですよ〜」っていうのを非常に分かりやすく視聴者に示してくれる。もうこの時点で泣けますよマジで…。
しかも追い打ちをかけるがごとく、いざ爪を出そうとしたら一本微妙にしか出ない、という…。泣ける。

なんとか賊を追い払ったローガン。こっから更に泣ける。
弾を取り出そうにも昔みたいにスムーズにはいかず…。

リムジンの運転手で生計を立てているシーンが映し出されるのだが、もうね、なんか寂れている。
土砂降りの雨の中、墓場で酒を飲むローガンの画は本作で一番好きです。この上なく哀愁があります。
というか、この映画、全編に渡って乾ききっていて哀愁がありまくり。

そんなローガンは、認知症患者で今やボケボケ爺となったチャールズを、日光が苦手なミュータントであるキャリバンと共に介護する日々。
所謂、老々介護ってやつですな。泣ける。
かつてのプロフェッサーXの面影はもうない只の禿爺なチャールズに泣けます。

しかも、ローガンは自決用のアダマンチウムの弾を一発隠し持っている始末。泣ける。

そんなチャールズはミュータントと交信したと言い張る。
どうせ爺の戯言だろうと全く相手にしないローガンだったが、それは事実だった。

ローガンにすがりつくようにストーキングするガブリエラという女性。彼女が連れている少女・ローラは、早い話がなんとローガンのクローン!
昔のローガンみたく立派なアダマンチウムの爪を生やし、本能丸出しで吼えながら敵をバッサバッサと千切っては投げ千切っては投げーー、流石のローガンもドン引きでった。

本作は、老いた爺二人と一人の少女の逃避行系ロードムービーである。
そして、行く先々でやっぱり不幸な目に遭うローガンや被害者達。
今回、敵が放った刺客である若きローガンと瓜二つの存在・X-24によって被害者家族は惨殺され、加えてチャールズが胸を刺されて死亡するという最悪の事態を迎えるのだった。

物言わぬ少女・ローラが目指すのは“エデン”なる場所。そして、ローラは『X-MEN』のコミックブックをバイブルとしていた。
これに対してローガンは「これは現実じゃねぇんだよ!」とブチギレ。
そう、本作のテーマである。
世の中にごまんと居るヒーロー達。しかし、いくら綺麗事を並べようが、いくら正しい行いをしたとしても、一度手を血で汚してしまったら間違いなく一人の殺人者なのだ。
このヒーロー全否定が本作のキモ。しかしそれでも、である。
ラストの「それでも彼は誰かのヒーローだった」という一縷の希望で見事どんでん返しされるのだ。
アメコミヒーロー映画としては遅いぐらいだ。
日本のヒーローものでは、そんなネタはとっくの昔に通過済みである。
しかしである。これがまた泣けるんですわなぁ。
このヒーローのジレンマと宿命は、本作では『シェーン』からの引用によって描かれている。

そして、実はバリバリ喋れたローラ。いざ喋り始めると、「あなたは死にたがってる」とかバシバシ真理を突いてくるからローガンにとってはこの上なく痛い。
更に、エデンはコミックブック上のネタであることが判明。エデンなんてもんははなから無かったのだ。

組織の手から逃れたミュータントの子供達が一時期に隠れている小屋に、遂に力尽きて運ばれるローガン。

ミュータントのリーダー格の少年から、金とミュータント能力を活性化させるステロイドみたいな薬を渡されるローガン。
約束は果たした。しかし何も残らなかった。

その翌日、案の定ミュータント達は森で組織に見つかり次々に生け捕りにされていく。
その危機を察したローガン。
バットマンは『バットマン ビギンズ』で「人の心は分からない。だが本性は行動に出る」とヒロインにヒロインの台詞を言っていたが、要はそんな感じである。
一もニもなくローガンは森に突っ走るのだった。

が、早くも息切れ。歳には勝てなかった。なので、大量投与したらマズい例のミュータントステロイドを一気に全部投入
見事元気一発百万馬力になったローガンは咆哮を上げて男気ダッシュ!次々と敵を薙ぎ払うのであった。

しかし、放たれたX-24に超苦戦。しかも例のステロイドはローガンみたいなオールドタイプにはあまり効かないのだった。

みるみる劣勢に追いやられていくローガンに、ローラが助太刀!
父娘二人体制でローガンのパチもんに挑む。

しかしながら、尚も粘るX-24。スタミナ切れのローガンは遂には樹の出っ張りに身体ぶっ刺されて貫かれてしまう!
ここまでか、と思われた時、ローラが例のアダマンチウムの弾でX-24の頭を撃ち抜き無事ローガンのパチもんを倒したのだった。

だが、もはやローガンは虫の息。「パパ!死なないで…!」と泣きじゃくりながら必死にすがりつくローラ。
そんなローラに「奴等の思い通りになるな」と言うローガン。
そして、ローガンはようやく理解する。
「そうか…、こんな感じなのか…」

カジノのホテルの部屋で観た『シェーン』のラストのシェーンの台詞を言うローラ。
そして、ローガンの墓碑を十字架から“X”に変え、仲間と共に去っていくローラであった。



エンディングが、これまたジョニー・キャッシュの“The Man Comes Around”というのがベタではあるが、これはこれで良い。
本作は傑作。異論は認めない!