ニケ月程前だったか・・・・・・テレビで習字に使う墨作りの大変さを見た。
私は幼い頃から墨の匂いが好きだった。
父母が普段筆を使って字を書くことが多かったので、自然と墨をすることを覚えた。
何とも言えない墨の香りは幼い私にも心を落ち着かせてくれるようだった。
母は一生懸命勉強して、書道とペン字の師範の資格を取った。
そして近所の子どもたちに書道を教えていた。
57歳という若さでなくなってしまったが、倒れる10分前まで子どもたちと字を書いていたと言うことは、幸せだったかもしれない。
母の毛筆もペン字も、私は大好きだった。
話を戻して、墨作りの大変さを知って、ふと思い出した。
母が亡くなる2週間前に、たまたま実家に行った私に母が、
「この墨はとても良い墨なのよ。貴女にあげる」と言って墨をくれた。
「この筆もあげるわ」と行って筆職人さんに頼んで作ってもらった筆もくれた。
筆はもうないけれど、墨はまだ残っている。
最近は筆を使うこともなく、硯箱にいれたまま眠っていた。
以前は封筒の宛名は筆で書くようにしていた。
夫の代わりに年賀状の宛名書き600余枚でも、必ず筆で書いていた私だが、最近はついつい筆ペンで済ますようになってしまった。
母の形見の墨を見て、これからまた筆を使ってみようかな・・・・・・ふと思った。