48歳、吉田晴夫!! 〜 フリースタイル空手日誌、10−10 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
48歳、吉田晴夫!!

フリースタイル空手日誌 10-10

フリースタイル空手の大会まで、3週間を切った。
大会に参加する選手は、集中力がでてきた。みんな活き活きしている。
稽古後も道場に残り、各々が自主練習を行っていた。
ある者は打たせ稽古、また、ある者は倒し技の研究(打ち込み)、そして、ある者はミット練習等等、活気があった。

ふと、試合参加というストレスにより、彼らの中で成長しようとする力が活性化しているのではないかと思った。植物の成長には、ストレスが必要だという。植物のように人間にも適度なストレスが必要なのではないだろうか。同時にそのストレスを上手に昇華することが必要だ。私の考える武道はそのようなストレスの昇華、また、それを人間形成に役立たせるというものだ。そのことについては、年齢や性別を問わない。

本日の稽古では、吉田晴夫氏という48歳の道場生の動きが良かった。彼は、10月28日の大会でシニア軽量級に出場する。

彼は、デザイン会社を経営する社長だが、ストレス発散と健康維持のために、週1回のペースで道場稽古に参加して来る。

運動をされている方が聞いたら、週に1回なんて少ないと思うかもしれないが、週に1回でも、その効果はある。

また、吉田氏は、道場の稽古に参加しない日、自宅近くのジムにも通っているらしい。そのぐらいのペースで充分だというのが私の考えだ。48歳、年齢的に仕事が最優先である。また、子供がいれば、子供の教育にも気を使う時期かもしれない(個人差はある)。

大事なのは、コンスタントに運動を行う習慣を持つということである。

私は、長く武道修練を続けること、また続けられる武道を創りたいと考えている。さらに、空手を年齢や職業の異なる人を繋ぐ架け橋としたいのだ。
もし、空手が子供だけのものであるならば、私は少し寂しい。ゆえに、老若男女が楽しめるものにしなければならないと考えている。


稽古後、彼に聞いた。「組技も楽しいだろ(増田)」。「ええ、楽しいですね(吉田)」。空手の世界にありがちな「押忍」の感じではない。
彼は正直な男だから、私への社交辞令でもないだろう。

おそらく、吉田氏が楽しいと言った理由は単純な理由だったに違いない。
空手は、確かに実用的に見えるし、格好良い(一般的に)。しかし、その裏腹に寸止めによる不完全燃焼や我慢比べによるストレスの問題がある(私はそう思う)。それを、“良し”とするのは、何か他の満足を得る要素が空手にあるからだろうか・・・。

一方の組技は、一般論として、見た目は格好良くない(失礼、私は格好良いと思うが)。しかし、思い切り力を出し合えると言う点では、ストレスが少ない。さらに、柔道家やレスリンング出身選手の総合格闘技での活躍により、その実用性が見直され、最近は評価が急上昇しているようだ。

ここで言いたいのは、競技が楽しいか楽しくないかというのは、不満足感の大小ではないかということだ。その点に於いて、組技競技は、不満足感が少ない。

おそらく、空手を選ぶ人の基準は、実用性の評価を併せた見た目の好悪、すなわち好みなのだろう(人間の行動基準は大体そんなものかもしれないが・・・)。

勿論、それはそれで良い。また、他の理由もあるとは思うが、ここでは言及しない。兎に角、私は組み技の修練が有する良点、そして楽しさを空手に融合したいと考えてきた。まだ多くの人の賛同を得るには至っていないが、吉田晴夫氏、48歳が楽しそうに組手練習を行っている姿を見て自信を得ている。

「フリースタイル空手は楽しむ空手だ」、私の呼びかけに応じ、48歳の吉田氏が稽古を楽しんでいる。彼の体重は、70キロそこそこだとは思うが、もう少しで師範に倒し技が決まりそうだったと無邪気に喜んでいた。

私は、「吉田君、もう少しだったね」「段々良くなっていくね」と答えた。
無邪気な吉田君のおかげで楽しい時間を持つことができた。ありがとう。
是非、10月28日は、怪我をしないよう頑張って欲しい。




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