フランスチーム  ブァンサン(ビンセント)・シモン | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
フランスチーム  ブァンサン(ビンセント)・シモン

フリースタイル空手日誌10-9

第1回フリースタイル空手チャンピオンシップ,東京オープンまで、あと数週間。

正直、まだ多くの業務が残っている。しかし、ひとつ一つ業務を処理していくしかない。時間との戦いだ。

本大会は、試合後に交流パーティーも企画しているので頭が痛い。試験で言えば、最後に難しい文章題が残っている感じだ。その準備が、最後の山場のような気がする。また、試合後、プロジェクトのパートーであるフランスの仲間との打ち合わせ、対応の準備もある。

私の問題は、それらの業務をなるべく自分でやると決めているところにある。そう聞けば、「どうして何でも自分でやるのか」と思うかもしれないが、人はこのプロジェクトを増田章の道楽にしか見ていない。ゆえに、なるべく自分が動かなければならないと思っている。勿論、私の回りの人間も私に協力をしてくれているが大変そうだ。本当に有り難く思っている(結果がでなければ、もう夢を追うのは止めるので安心して欲しい)。

さて、今回来日する“フランス魂道場チーム”について紹介したい。彼らはフリースタイル空手プロジェクトの重要なパートナー達である。

その中の一人、ブァンサン(ビンセント)・シモン氏は、ティエリー・ノーンズ師範の道場が所属するIFK(空手の世界組織)のフランス国代表だ。

ちなみにティエリー氏の道場の名前、“魂”は、私が23年程前にオランダのミッシェル・ウエーデル氏の道場に贈った名前である。ウエーデル氏が仕事の関係で道場を閉めた時、ティエリー氏が譲り受けたという。ティエリー師範は、とても人間味にあふれる師範だ。彼とは第4回世界大会の時に知り合った。

私が訪仏した際、ティエリー・ノーンズ師範は仕事が忙しく、私達と同行できなかった。その代わりシモン氏とロティジー氏、ビヨション氏が私達の一行の世話をしてくれた。
魂道場のティエリー・ノーンズ師範は、仕事が忙しく、フリースタイル空手のセミナーに参加はできなかった。しかし、私達のプロジェクトの意義をすぐに理解し、協力を約束してくれたのだ。

彼らは、決して組み技ができた訳ではない。しかし、さすが柔道大国である。
プロジェクトの理念とルールを丁寧に説明しただけで、「面白い、やってみよう」ということになった。

おそらく、軍隊を有することや、かつての植地等の紛争問題など、暴力が日本より身近にあることが大きいのではないかと想像した。つまり、実用的な武術に興味があるのではないかと想像した。私は、かつての日本もそうだったように思う。

但し、暴力に立ち向かうための武術を身につけた人間が、反社会的な勢力になることは当然ながら避けたいに違いない。

それは、かつてフルコンタクト空手(極真空手)を禁止したソ連も然り。ゆえに柔道のような武道理念が確立された格闘技が普及するのだろう。

とは言うものの、フリースタイル空手を彼らが始めて目にした時、戸惑いがあったに違いない。実際、そのような気配を私は感じていた。それを前向きに考えてくれたのはフランス人の国民性ではないかと考えている。


私はフランスとフランス人が大好きになった(単純だなぁ・・・)。
その前に、1年間、フランス人のヤニック氏と付き合ったことも大きいかもしれない。ヤニック氏の仕事はパリの警官だが、1年間、休職して日本に住んでいた。彼は、日本全国を旅する合間に私の道場に通ってきた。
彼は、とてもすばらしい人間性の持ち主だ。

勿論、人間性に国は関係ないだろう。どの国にもいろんな人がいる。
しかし、フランスは、どうも私の好みに合うようだ。

話をフランスチームに戻せば、フランスの“魂”道場の連中は、本気でこのプロジエクトに価値を見いだしてくれているようだ。

その証拠に、皆でお金を集め、そのお金で6人もの選手が来日する。
最初、今回は大会の視察だけだと言っていたが、途中で、試合にも参加すると告げてきた。それでも初めは全員が試合にエントリーはしてはいなかった。それが最終的には、全員が試合にエントリーという形になった。

私の感覚からすれば最高の形だ。何が最高かと言えば、何があるか分からない中、行動を共にしてくれている。勿論、彼らは盲目的に行動を共にするのではないだろう。しかし、大会の規模も社会的価値も未確定の中、私の理念とアイディアに共感し行動を共にしてくれているのだ。言い換えれば、一緒に探検、冒険をしてくれるということだ。

今、フランスを始めヨーロッパは、日本以上に不景気である。また、移民や難民の問題を初めとする社会問題も少なくない。

そんな中、新しい試みに付き合ってくれるフランスの“魂”道場の仲間達を、私は本当に好きになっている。


その中で、私がプロジェクトのパートナーにふさわしいと白羽の矢をたてたのがシモン氏だ。

シモン氏は、インテリ風で落ち着いた物腰の男だ。しかし、積極的に新しい試みを受け入れてくれた。年齢は、40代半ばだ。彼も試合に出場する(シニア)。

他のフランスの道場生も非常に親切だった。おそらく、ティエリー師範の人間性がすばらしいので、回りに集まる人間もすばらしいのだろう。

正直、彼の空手の実力は良く知らない。インテリ風で、身体も細身だ。
しかし、空手の実力よりも大事なものがある。

IBMAは、ティエリー師範をIBMA国際委員に、シモン氏をIBMAの国代表に任命した。彼らはそれを快諾してくれた。

最後に、シモン氏には怪我をしてもらいたくない。そういえば、彼は怒るだろう。彼は、フリースタイル空手を広めるには、経験が必要だと考え、試合に挑戦するのだろうと思っている。他の選手達も同様だ。非常に勇気があると思う。

今回、フランスからは、魂道場の“ノルディ・トンカン”氏と“ダニエル・ドゥグルートゥ”氏、“アレクサンドル・ビヨション”氏の両氏がチャンピオンシップに出場する。また、シニアクラスに“クリストフ・ルフェーブル”氏、“ヴァンサン・ロテジィー”氏、“クリストフ・ルフェーブルノ”氏の計6名のフランスチームが来日する。

フランスチームの活躍を期待したい。







$増田章の『身体で考える』-フランスチーム


$増田章の『身体で考える』-ヴァンサン・シモン氏