ドラゴンボールとフリースタイル空手 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める


帝京平成大学の准教授の南牧生先生から、菱田さんのことに絡めたフリースタイル空手へのメッセージをいただいた。南先生は、10月のフリースタイル空手・東京オープンに参加する、菱田さんの大学の教員仲間である。
また、南先生自身も伝統派の空手をやられているらしい。
正直言って、フリースタイル空手に関しては、どのくらい理解しているのかは分からない。しかし、大変好意的に考えていただいているようだ。

南先生は、とても真面目で優しそうな感じの先生である。
しかし、眼の奥に、何か信念の光のようなものを感じた。私の直観では、それは信仰であろう。私の哲学の奥底にも、信仰と言っても過言ではないものがある。

また、南先生は教育者であ
るから、フリースタイル空手を教育と結びつけている。菱田さんも然りである。今回の寄稿の内容は、ドラゴンボールの世界観とフリースタイル空手の目指す、世界観が同じものだというようなものだというエールだと理解した。

残念ながら、私は漫画を読む余裕がない程、修業時代,空手馬鹿だった。ドラゴンボールに関しては、最近、1巻を読んだ限りである。

少々、脱線するが、私の息子は、既に全巻を読んでいるらしい。愚息には、一時期、いじめ対策に、ブックオフにある私の道場に通わせた。その時に、50巻近くものドラゴンボールを立ち読みしたそうだ。
因に、愚息は空手が好きではない。運動が好きではないのだ。その息子が、真面目に空手に通っていたのは、ブックオフで本が読めるからだったのだろう(笑い)。私もブックオフが大好きである。それは、創業者である坂本孝氏にお世話になったことのみならず、幼少の頃から、本屋さんが大好きだったからだ。

時間がないといつも言っているのに脱線している場合ではない。話を戻す。
南先生とは、いずれ、ドラゴンボールとフリースタイル空手(拓真道)の哲学についてゆっくり話をしたいと思う。

できれば、近いうちにドラゴンボールについての考えを述べたい。現時点の直観は、孫悟空というキャラクターのコンセプト(?)は、「無邪気」である。
そして、他のキャラクターは、個々に「邪気」を少しだけ持っている。それが普通の人間の姿だ。
それが、初めは、ドラゴンボールを集めるという目標、次に戦うという手段の中で個々のキャラクターが交流する。その過程で、孫悟空の「無邪気」のパワー(宇宙の力)によって、「破邪顕正」していく(個々のキャラクタ-が有する「邪」が浄化されていく)。

そこにあるのは、作家、鳥山明氏の祈りである。すなわち、高次の人間性,言い換えれば、「良心」の存在への「祈り」だ。私には、ドラゴンボールの世界観は、そのような世界観に見える。

それは、私のフリースタイル空手プロジェクトの核心である祈りと同じだ。
以下、南先生の寄稿を載せておく。鳥山先生、勝手なことを書いてお許し下さい。南先生、ありがとうございました。


ドラゴンボールとフリースタイル空手
南 牧生

 菱田剛気という格闘家がいる。本名、菱田慶文。「下町の熱血先生」として知られ、現在は帝京平成大学の教員だ。私は、彼と親しい友人関係にある。彼は、東京大学で行われる「ドラゴンボール人生学」という授業のメンバーに入れられたと言う。ここで問題なのは、彼は、「ドラゴンボール」は名前を聞いたことがある程度で、漫画を読んだことも、アニメを観たこともない、ということである。また、ほぼ同時期に、増田章師範のフリースタイル空手の試合への出場を依頼されたと言う。
さて、「ドラゴンボール人生学」の授業まで一ヶ月しかない段階で彼は、ドラゴンボールを知らないでドラゴンボールを語るのは、メンバーに入れてくれた人に失礼だと考えた。私は、彼にドラゴンボールの基礎知識のレクチュアーを始めた。そこで彼は、増田章師範のフリースタイル空手の考え方は、ドラゴンボールの思想と共通点があるのではないかと考えた。何でも結びつけるのが、菱田剛気の特技だ。
ドラゴンボールの主人公、孫悟空は、闘うこと大好きサイヤ人だ。そして、闘いにおいては、ルールを守る。そして、止(とど)めをささない。相手を殺さない。弱った相手は、仙(せん)豆(ず)で回復させる。回復した相手に、お互いにもっと強くなってまた闘おうと言う。そして闘った相手が仲間になり、友情の環が広がっていく。
フリースタイル空手は、基本は極真ルールだが、ルールを細分化し、ポイント制で勝敗を競うスポーツである。そして投げ技を認めている。優しく、他人を殴ることを好かない菱田剛気は、これが気に入った。接近戦で我慢比べのような打ち合いをしなくても良い。接近したら、相手を倒し、「極め」という残身を取れば、勝利に結びつく仕組みになっている。危険性が少ないため、勝者も敗者も、納得した上で、稽古で研鑚をつみ、何度でも再チャレンジすることができる。
そう思いついた彼は、増田師範にそのことを話した。なんと、増田師範がそれに賛同したのである。師範もフリースタイル空手とドラゴンボールを結びつけたいと考えるようになった。実は増田師範も、ドラゴンボールについての知識は菱田先生と同程度で、現在「コミック」を購入して勉強中らしいのだが。
ドラゴンボールという何度でもチャレンジできるリセットアイテム。フリースタイル空手の選手も何度でもチャレンジしてもらいたい。孫悟空という、優しく、修行好きで、仲間を増やしていくキャラクター。フリースタイル空手の選手同士も、友情を育(はぐく)んでもらいたい。
私が、レクチュアーした孫悟空のキャラクターで、もう一つ菱田剛気のお気に入りがある。武(む)天(てん)老師(亀(かめ)仙人(せんにん))の稽古(けいこ)着(き)を、師匠を超えた以降もずっと愛用していることである。師を敬い、愛着を持つことが、彼の心情にマッチしたのだろう。フリースタイル空手も、ドラゴンボールと同様に、世界中で親しまれるようになり、菱田剛気と増田章師範の友情も深まれば、望外(ぼうがい)の喜びである。

$増田章の『身体で考える』