FKP報告〜負けた人へ | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
フリースタイル空手プロジェクト報告+負けた人へ

プロジェクト参加の皆さん、いつもありがとうございます。荻野審判委員長、お疲れ様でした。また、遠く香川県から参加した川上さん、ありがとうございました。

今回の練習試合に参加できなかった人への報告と負けた選手へのアドバイスをしたいと思います。

今回の練習試合には、IBMA大会審議委員の大森さんからの紹介でシュートボクサーの菱田さんが練習試合を体験しました。

菱田さんは、格闘技研究で博士号を取った、知る人ぞ知る、学者でプロのシュートボクサーだそうです。

今回、シュートボクシングがフリースタイル空手に最も近いと大森さんに言われました。以前、ゴング格闘技の元編集長の熊久保さんにも、そのように言われました。

すでに、多くの極真空手愛好者が知らないようですが、極真空手の草創期は、掛けも投げもありの空手でした。言うまでもなく、ムエタイから総合格闘技まで、武術的な格闘技は打撃技のみならず組み技も含んでいます。

今はそうではありませんが、キックボクシングも昔は、投げ技を使っていました。なぜなら、昔のキックボクサーは、柔道や相撲等、日本の格技が得意な猛者がなるものだったからでしょう。ゆえにムエタイの首相撲に対抗するのに柔道の技を使ったようです。私もそのような光景を見た記憶があります。また、昔の日本人は、組み合いがお家芸のようなところがあったのではないでしょうか(戦時中は、格技の修練は当たり前だったのでしょう)。私の父親も柔道はやってはいなかったようですが、中学生の私に跳ね腰はこうやるんだと、投げ方を教えてくれましたのを鮮明に記憶しています。その形は間違っていませんでした。

さて、今回の練習試合では、極真空手がバックボーンの選手とシュートボクシングがバックボーンの選手の対戦がありました。結果はシュートボクシングの選手の圧勝でした。しかし、そんなに負けを深刻に考えてはいけません。その差は、そんなに大きいものではありません。
戦いの原則は情報戦なのです。今回の敗因は、相手に対する情報不足、格闘技に関する知識不足です。私もシュートボクシングのことは、昔、試合を見たことがある程度でした。御陰で研究になりました。

今回、シュートボクサーの戦いを分析すれば、シュートボクシングはムエタイに対抗するためにレスリングの技を取り入れたのだと考えます。

試合後、「バックをとられたらどうするのか?」と言っていたそうですが、この問題を考えるにあたり、敗因を冷静に考えて見ましょう。

敗因は、繰り返しますが、相手に対する情報不足と格闘技に対する情報不足(知識不足)です。更に、知らないことに対し、すぐにギブアップしたからです(勝つためにどうしたら良いかを考えることを停止したという意味)。
しかし、知らないことがあることを知ったことは収穫です。私のとってもシュートボクシングの戦法の片鱗が想像できました。

さて、シュートボクシングの組み合い(グラップリンング)の代表的な技は、首投げとそり投げだと思います。昨日の試合であなたがやられた技は、原型として、まず、胴取り(胴タックル)そこからバック、或はサイドポジションをとり、後ろにそり投げをするという型があると私は見ます。

レスリングでは、胴取り(胴タックル)から前に投げる“反り投げ”もあります。
あなたがやられたのは、“後ろ反り投げ”で、相手の目論見通りです。また、そのような技を重視するのは、ムエタイの首相撲に対し胴取りからそり投げというのがシュートボクシングの基本技なのだと思います。更に、それと連携する技として、”首投げ”があるのです。

まず、対策を立てる基本原則は、相手の手の内(戦法)を先ずは知ること(相手の技を練習してみるのです)。また、これで相手の戦法を知ったのですから、次回は、そのような戦法を封じ込めるように戦うことが基本です(それを逆手に取ることも応用としてはあるでしょう)。プラスαはブログでは教えません。先ずはレスリングの本を買って勉強してください。先ず、おすすめは、確か“笹原正三氏”が著した「レスリング」という講談社のスポーツ教本です。私は、その本を高校生の頃購入し、研究しました。もしかすると、今はもっと最新のレスリング教本があるかもしれません。

正直に言えば、私がこれまで教えてきた倒し技は、すべて空手家用に考えたものです。空手家用というのは、密着の度合いが少なくて済むように考えています。実はグラップリングというのは、“面の攻防”なのです。面の攻防に精通しなければ、グラップリングを制することは難しいでしょう。でもフリースタイルを難しくかんがえないでください。昔の日本人が行なったように、相撲をたくさんやったり、道場で投げ込みの練習をするだけで充分に対策になります。

繰り返しますが、フリースタイルに必要な“組み合い”の技術は難しくありません。相撲を取るのと同じだと考えて下さい。但し、簡単だからと言って相撲を侮っては行けません。そのシンプルな中に非常に重要な格技の原理が潜んでいるのです。

最後に、今回も他流派の人達と安全に楽しく交流することができました。
菱田選手は、空手の世界には余りいないタイプです。個人的にはとても素敵な男性だと思いました。

是非、10月28日のIBMAフリースタイル空手チャンピオンシップス、東京オープン2012にも、より多くの他流派の方々が参加して欲しいと思います。










増田章の『身体で考える』