女子レスリングの吉田沙保里選手について | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
女子レスリングの吉田沙保里選手について

兵法の勉強会仲間から、吉田沙保里の強さについて解説を求められたので、書き記した。

吉田沙保里の強さが何故生まれたか?大きく3つに絞り込む。
1番目は、素質(厳密に言えばDNAレベルも含める)。
2番目は、素質を開花させる環境があった(レスリングを選ぶということも含めて。吉田沙保里が新体操を選んでも可能性は低いだろう・・・)。
3番目に本人の自覚(目標達成のために厳しい練習に耐えるという意志も含む)。

1番目に関しては、幼い頃の吉田選手を知らないから想像だが、群を抜く身のこなしや闘争心(競技に対する集中力を含める)があったに違いない。
2番目に関しては、レスリング一家に育ったこと。
3番目に関しては、彼女の性格がとても率直で素直な事が大きい。また、自分を活かす道を分かっているのだと思う(私にはそのように見える)。

私には、すべては天の采配のようにも思えてしまう。
但し、真剣に結果を出したければ、今後、DNAに関する情報収集と研究、環境の創造と整備、人間の意志(こころ)の研究、それらの研究が進むであろう。但し、そこまでいくと人生という意味では面白くないと思うのは私だけではないだろう。

スポーツも人生の一部だ。人生は、多様な巡り合わせの中で、彩られる芸術だと考える私には、順位だけしか見ないような競技スポーツのあり方は、未だ成熟はしていないと考えるのは私だけだろうか・・・。

さて、吉田選手に話を戻せば、オリンピック3連覇に関しては、大会前得意技を封じられて負けたことが良かったと見る。なぜなら、それがオリンピックだったらと考えて欲しい。

しかしながら話はそう単純ではない。吉田選手にとって、オリンピック直前の不安材料は、大変厳しい試練であったに違いない。
彼女はそこから逃げず向かい合った。その最大のポイントは、父親の指導だと私は想像させてもらった(過剰な想像かもしれないが、その指導に誰よりも理解を示したからこそ、父親をセコンドにつけたと見るのだ)。おそらく、父親は、現役時代自分の経験、おそらく武道で言えば四戒、「驚・懼・疑・惑(驚き、懼れ、疑い、惑い)」を念頭に指導したに違いない。佐保里(吉田)のタックルが悪いのではない。使い方の工夫だと・・・。

私は、父親のすばらしさを讃えたい。また、陰で支えたであろう吉田選手のお母様もすばらしい方に違いない。本当に吉田ファミリーを讃えたい。すばらしい娘を育てましたねと。

蛇足ながら、吉田選手には最高に幸せになって欲しい。余計なお世話だが・・・。
それが、家族を始めレスリングやスポーツに対する恩返しだと思う。
レスリング界だったら、それが可能だ。

更に蛇足だが、私がかっこいいと思ったのは、伊調選手だ。なぜなら、伊調選手は3番目に上げた”本人の自覚”が凄いように見えたからだ。それは単純な金メダルを取りたいというようなものではなく、深い思いから沸き上った自覚に違いない。
ゆえに試合時の彼女は静かだった。私にも経験がある。真に自覚がある者は静かだ。(私は普段、うるさいが・・・笑い)
そんなアスリートの究極形を見せてもらった。

以上、女子レスリングの解説をさせていただきました。(守屋先生へ)