第15回フリースタイル空手セミナー報告 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
【第15回フリースタイル空手セミナー報告】


6月17日、渋谷区で毎月1回行なわれるフリースタイル空手セミナーを無事終えた。参加者は少数であったが新しい参加者を得たことに喜んでいる。

さて、毎回のことだが、反省点が多々あった。この反省点を銘記しなければならない。

そのように思うのは、ヨーロッパ4国を回り、フリースタイル空手プロジェクトに対する一定の評価が得られたことが大きい。

また、先日の国内4日間の出張においてスポンサーの支援等の確約を得たことにより、次のステップが明確になったからであろう。

但し、そのような成功への期待と実感が私の〈身体〉を通すと、自分の能力のなさや資金力の乏しさ、プロジェクトメンバーの少なさ等、マイナス思考によるストレスとなって返って来るようだ。

おそらく、夢を実現する人間は、そのようなストレスに耐えられる人間に違いない。そして、そのストレス解消法は、速やかなマイナス点の改善が望ましいと思うが、それができないときは、発想の転換がその方法であると思う。

失敗を多く経験した私は、失敗を乗り越えるために、絶えず発想の切り替えを模索した。そして、失敗を乗り越えられたと感じた時は、発想の転換がなされた時である。蛇足ながら、私にとって読書は、そのためのものであると言って良い。また、私にとっての情報収集は、知識を増やすという表向きの目的のみならず、発想の転換のためにある。言い換えれば、多面的な視点を持つための準備なのだ。


話を戻し、今回のセミナーの反省点を挙げたい。先ず始めに、参加人数が少ない。(①)次にセミナーの実施に関し、私のストレスが大き過ぎる。(②)もう一つは、審判がTSルールを完全に把握していなかった。(③)
最後に、試合映像の撮影を行ったが、細かい部分に問題があった。(④)等々だ。

それらの対策に関する対応は以下である。①に関しては、映像等を使い、宣伝を強化する。②綿密な設計図(プロジェクト進行のスキーム並びにプロジェクトメンバーの組織化など)を早急に作成する。そして、すぐにできることをひとつ一つこなし、勢いをつけていく。③審判委員会を機能させ、もっと審判委員の育成を積極的に行なう。④撮影に際しては、絵コンテをしっかり作成する。また、私を始めプロジェクトの主要メンバーの意識に“外からの眼”を徹底すること、等である。

以上のことは、起業家から見れば、少し異論があるかもしれない。なぜなら、資金の確保の労力とリスクを私は横に置いているからだ。

お金を得ることを至上目的とする起業家からすれば、私のプロジェクトは小学生レベルだろう。実際、このプロジェクトコストの内訳のほとんどは、私のポケットマネーと人生の時間である。そんな個人的なプロジェクトに私の会社のスタッフや道場生、友人が協力してくれている。(本当に感謝している)

しかし、誤解のないように補足を加えたい。私はそんなレベルで終わるつもりは毛頭ない。これまでのやり方が良いとも思っていない。
私は、このプロジェクトをより多くの人、そして空手や格闘技界に貢献するものと信じて、このプロジェクトを行なってきている。

そして、個人的な思いから発した“夢”のように見えても、大きく観れば、みんなの“夢”なると考え、日々努力をしてきた。しかし、フリースタイル空手プロジェクトが“みんなの夢”になるには、もう少し時間を要するようだ。

これまで私は、いくつかのフリースタイル空手プロジェクトに関するキーコンセプトやキーワードを掲げてきた。

それらはまだ、みんなの心には的中してないようだが、繰り返し下手な〈矢〉を放ち続けよう。

【新しいキーワード】
フリースタイル空手プロジェクトのキーコンセプトは、〈空手の公共化〉である。
言い換えれば、空手や格闘技を一流派のみならず、〈みんなのもの〉にすることである。キーワードは「公正性」「開放性」「創造性」である。

私は、空手を含めた文化とは本来、自由で柔軟性に富んだシステムそのものだと考えている。

それを不自由で硬直化させるのは、文化が権力化し腐敗していくからだ。
ゆえに、文化のより善い継承には、たゆまぬ自己変革が必要なのだ。
一方で、人間は権力を好むもののようだ。それが私の悲しみの一つだと言っておく。

少し言い過ぎたかもしれないが、最後にフリースタイル空手プロジェクトに新たなキーワードを付け加えたい。
それは「つながる」というキーワードだ。携帯電話か何かの宣伝文句のようだが、そんな軽薄な意味ではない。


私は、これまでの人生経験とその考察で、すべてはつながっていると確信している。そして、そのつながりを読み解く“コード”、言い換えれば、原則を見つけたいと考えている。

そのような「つながり」を意識しながら、あらゆる格闘技を見ていくと、すべての格闘技が私には興味深く面白い。

そのような、古今東西の格闘技を大切にしながら、それらを“つなぐ”こと。それがフリースタイル空手プロジェクトの目的の一つである。それによって、多様なものの中に“一つ”を観ることが可能となる。同時に一つの中に“多様”を観ることが可能となるのだ。

稚拙な例えを許してもらえば、「みんな違って、みんないい」では、片手落ちだ。
「みんな違って、みんな同じだ」が合わさらなければならない。そして、それを前提に“つながる”こと。つまり“ひとつ”を前提にしながら、多様(個々)を承認し活かしていく。

そのようなレベルに達する手段の一つとして、フリースタイル空手という新しい武道スポーツがあると私は考えている。

(セミナーに於ける練習試合の映像は、空手武道チャンネルにてご覧になれます)