10-28の「フリースタイル空手オープン2012」に向けた、定期的な「フリースタイル空手セミナー」が始まった。
今回の参加者は少数であったが、総合格闘技、テコンドーの修練者が参加した。また、セミナーの締めくくりとして、希望者による練習試合を行なった。
セミナーの内容は、技術的なことは、初めての参加者がいたこともあり、基本的な技術の説明のみであった。しかし、セミナーの構成を少し変更してみた。それは、フリースタイル空手の説明を、「間合い」をベースに行なったことだ。その内容を大雑把に記述してみたい。
現在のフルコンタクト空手は、「近間」(ショートレンジ)を基本に競技を行なっている。そして、多くのフルコンタクト空手が採用しているルールは頭部への突き技を禁止している。
しかし、そのような間合いで戦うことに慣れ、接近戦(近間での攻防)の可能性を把握することが無いとすればどのような結果を招くか。おそらく、相手に掴まれたり、組まれたり、密着されたりすれば、「お手上げ」になる。ゆえに、安全性と反復練習の可能性を担保にするため、頭部への打撃に限定を加えながらも再考が必要だと思う。
そこで、接近戦の攻防の幅を少し拡げる。具体的には、中国武術や古流の空手の技に観られるような「掛け」等の接近戦に有効な技術を修練可能とするということだ。
ここで繰り返し言っておきたいことがある。それは、フリースタイル空手競技(TSシステム)とは、反則行為の限定と、技術の評価のシステムのことだということである。
ゆえに、反則行為以外の技術は各々が自由に創作し、試行すれば良いのだ。技術体系は、これから創り上げていけば良い。そして、これまで紹介した技術は、あくまで極真空手である私の流派の技術であり、それ以上でも以下でもない。秘伝でも必殺技でもない。ただの提案にすぎない。この点を、是非、憶えていて欲しい。
先ずは、手刀や背刀などによって、相手の首を掛け、それを制し、崩すような技術を競技(組手)の中で有効とすることを提案したい。それによって、突きによる頭部打撃を禁じたとしても、頭部への攻撃に対応・防御する技術が生成される。
そのような技術は、格闘技の訓練としてフルコンタクト空手競技を見た場合、非常に重要なことではないかと思う。
そのような観点のもと、先ずは近間を再考してみた。
次に、再考した近間を前提に、中間(以下、ミドルレンジと表記する)を見直してみる。
ミドルレンジとは、ボクシング、キックボクシングのみならず、剣道も含め、格闘技の基本的な間合いとされる。
それは、打撃技の技術のレベルを判断する要素として、「見切り」の能力があるからだと思う。
武道でいう「中間」とは、相手の打撃を見切るために、ワンステップで相手に打撃技が当たる。ワンステップで打撃技をかわせる間合いのことだ。
そのような間合い(ミドルレンジ)を相手と対峙する基本として、組手(戦い)を行なうことによって、相手の動き(攻撃技)を察知し、それに対応するための「見切り」の能力を養成するのだ。
剣道に倣い、我が国の空手は、本来、そのような間合いを基本として行なわれる。そして、そのような考えは、現代の空手道においても、妥当だと思われる。
そして、そのような考えを基本として、それに対応する応用変化がある。その一つが「接近戦」なのだ。(勿武術の流派によっては、その逆もあり得る。ここでは、そのことに言及しない)
ゆえに接近戦は、本来、応用変化として自覚するべきである。それを応用変化として自覚しないで、絶対的とし、技術錬磨に臨んでいては、基本と応用の千変万化の妙を体得することはできないであろう。
ここで確認しておくが、フリースタイル空手では、伝統的な空手の普遍性に回帰したいと考えている。その原点回帰とも言える見直しを、言葉によるものではなく、身体で感じ取ってもらおうというのがフリースタイル空手競技の狙いである。
具体的に言えば、接近戦による攻防の可能性を拡げること。それによって、伝統的空手が重要視する接近戦の技術が蘇る。実はそれが武術としての空手の真髄である。
同時に、中間(ミドルレンジ)での「見切り」とそれに付随する「体さばき」が醸成される。その見切りと体さばきこそが、先師、大山倍達が伝えた「円の動き」の真髄である。
先ずは、その理想への階段の一歩を、ムエタイクリンチ(首相撲)や頭部への「掛け」「掴み」等を使った組み合いを有効にすることで感じ取って頂きたい。
蛇足ながら、フリースタイル空手競技にも技の限定がある。なぜなら、すべてを認めれば、複雑になり過ぎ、一部の人間にしか対応できないものになる可能性がある。
また、意味のある限定(ここが難しいが今回は言及しない)により、動きの無限性に内在する「普遍性」を掴むことができる。
その普遍性を掴んだものが真の「達人」である。
私は、空手の可能性を追求するために、先ずは立ち技の達人を養成するシステムを考えた。ゆえに、グランドの攻防は除いた。そして「組み合い」を3秒以内とした。
今回の練習試合では、組技を3秒以内と限定したルールが上手く機能したように思う。上手く機能したというのは、空手家が危惧する、「組手が汚くなる」というようなことは、私には感じられなかった。
また、参加した総合格闘家からすると、3秒あれば、倒し技の精度を上げれば、充分に技を決められるし、逆に総合格闘技者のテイクダウンを奪う技術力向上にも使えると評価して頂いた。
一方、総合格闘家と対戦した空手家は、掴みやタックル(FKでは「足取り」という)に対する勉強不足を実感したと感想を漏らしていた。
それは、積極的な意味での感想だと私は感じた。つまり、今後は、掴みやタックルに対する対応技を、今後は、しっかり学んでいきたいという意思表明であったと思う。(ちなみにその選手は、40歳代の会社役員である。多忙な中、私の道場に通って来る)
今回の参加者は、空手をバックボーンにするものが多かったが、空手家の基本を再認識できたのではないかとも思う。
その基本とは、打撃技の使い方、また、その精度や威力を強化していくということである。(報告)