組手に勝つための9原則〜その4 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める

早稲田大学極真OBの集まりでの講演が終わった。



参加したOBの中には、日頃から親しいお付き合いをしている方々もいた。



その中の一人である石川先生から「優しい突っ込み」があった。石川先生は、稲城市の市長を16年も努められ、我々の武道団体の大会会長を10年間努めて頂いた方だ。石川先生はいつも優しく「饒舌過ぎる」「もっと言葉を短く(端的に)」というような突っ込みを入れてくる。



それは、私の身内のそれと同じである。



直そうと思ってはいるが、相手に理解してもらおうと思う気持ちが強い私はいつも饒舌になる。また、私がどのようにして、原則を意識していったかを先に、9原則を結論として述べた方が良いと言われた。確かにそうかもしれない。でも、結論から先に述べ、それを検証していく方法もあると思うのだが・・・。



とにかく、私は、空手競技を野球やサッカーのような戦略や戦術論が成立するように変えたい。それが「フリースタイル空手プロジェクト」の目標のひとつだ。それでは、「原則の実践について」記した部分を掲載したい。



【組手に勝つための9原則】

1.基礎体力をつける。

2.常に原理原則を考える。

3.得意技を身につける。

4.絶えず新しい技を身につける。

5.相手と自分の情況、状態を把握する。

6.負けないと決める。

7.相手の戦略と戦術を知る。

8.相手攻撃を弱体化又は無力化する。

9.自分の攻撃の効力を最大化する。

 



【原則の実践~私の事例】



私は選手時代、日本のみならず世界中の強豪と多くの競技試合を経験した。その時、私は激しい稽古をするのみならず、「勝つためには何が必要か」を絶えず考えていた。



私が競技試合を始めたばかりの頃、私が勝つために必要だと考えた事(仮説)は、いかに攻撃力を増すかであった。そのために体力増強(基礎体力をつける)をテーマにした。空手の稽古と同時にウエイトトレーニングが私の日課だった。これは間違いではなかった。私は先ず、原則の1番を実行したのである。



それと併行して、私は突き技や前蹴り等を得意技としようと考えていた。体力増強は、それらの技の習得(得意技とすること)とその威力(攻撃力)を増加させることに役立った。また、ウエイトトレーニングによる基礎体力の向上は、攻撃力のみならず防御力の増加にも役立った。



筋力トレーニングによる筋量の増加は、鎧を身にまとうような効果がある。フルコンタクト空手においては、打撃に対する防御力(鍛えられる可能性のある部分の)の強化に役立った。



得意技を身につけ防御力が向上した私は、組手が楽しくなった。得意技を使い、技を磨く楽しさを実感するようになったのである。また、初心者にとってフルコンタクトの組手は恐いものだが、防御力が増すことによって、その怖さが緩和され、組手を考える余裕が生まれてくるのである。更に、新しい技術の習得も意識できるようになった。稽古内容が組手上達のサイクルに入っていったのである。



【体力のみに依存する事には限界がある】



しかし、そのような防御力や攻撃力には限界があった。換言すれば、体力のみに依存する事には限界があったのだ。それは、人間の身体には筋肉ではカバーできない急所があり、そのような急所を護るには、どうしても防御技術が必要になるということと。また、どんなに強力な攻撃力を持っていたとしても、相手防御の固いところを攻撃することや攻撃技を読まれて防御されてしまえば、効果が減少あるいは無力化するのだ。更に強力なクロスカウンター(交差攻撃)をもらう事も考えられる。



そのように考えた私は、組手に負けないために、どのような組手を行なったら良いかと同時にどのような技術を身につけたら良いかを考えるようになった。



そのような考えの萌芽は、柔道経験によることが大きい。私にとっての柔道のイメージは「柔よく剛を制す」である。昔も今も柔道を力技だと批判する向きがあるが、私はこれまでそのように思ったことがない。柔道は技の創造という意味において、非常に魅力的な武道である。私は柔道修練においても空手修練においても、得意技のみならず、絶えず新しい技を身につけることを夢見ていた。それは原則の3番、4番に該当し、自分と異なる得意技を持つ多様な相手に対応することに役立った。



ここまでは、主に原則1番から4番、組手に強くなる準備段階、稽古における原則だと考えて良い。(続く)



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