組手に勝つための9原則〜その2 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める

【組手に勝つための9原則~その2】

〈戦う前(準備・稽古)〉

1.基礎体力をつける。

2.常に原理原則を考える。

3.得意技を身につける。

4.絶えず新しい技を身につける。

〈戦う前と戦いの最中の両方〉

5.相手と自分の情況、状態を把握する。

6.負けないと決める。

〈戦いの最中(組手)〉

7.相手の戦略と戦術を知る。

8.相手攻撃を弱体化又は無力化する。

9.自分の攻撃の効力を最大化する。

 

5番目の「相手と自分の情況、状態を把握する」とは、古典兵法に「敵を知り己を知れば、百戦あやうからず」とあるように、相手と自分の体力レベル、得意技、攻撃力、防御力、性格、戦術、心理状態等等、可能な限りのデータベースを作ることだ。


組手に強くなるには、それらの情報を基に、得意技、防御技、攻撃技をどのように使えばより効果的か考えることが必要なのだ。


この原則は、組手を行なう前のみならず、組手の最中にも情報を収集し続けなければならない。そして、戦いながらデータベースを修正し、最善の戦い方(組手法)を選択、実行することが必要だ。 

6番目の「負けないと決める」については、後述の「不敗の組手」を読んで欲しい

7番目の「相手の戦略と戦術を知る」というのは、平たくいえば、相手の勝ちパターンとの技術を把握することといっても良い。


組手に勝つには、自分が勝つための流れを作らなければならない。また、その流れを作るための局面的な戦い方がある。前者を戦略。後者を戦術という。

また、相手の勝ちパターンを分析しその対策を考えること戦略的見方、思考であり、相手の得意技を分析し、その対策を練ることが戦術的見方、戦術的思考と言って良い。


勝つための組手の原則は、組手の流れが相手の勝ちパターンに陥るのを避けることだ。また、時にはその裏をかくような作戦が必要である。同様に相手の得意技を避け、時にはその裏をかくような技術が必要だということである。そして、私が考える武道的「見切り」とは、戦略を見切る眼と戦術を見切る眼の両眼が必要である。


8番目の「相手攻撃を弱体化又は無力化する」とは、防御技により、相手攻撃の威力を弱体化又は無力化することである。攻撃をまともに受けることは、威力のない攻撃なら受けることが可能だが、威力のある打撃をまともに受けることは、一瞬にして戦闘力を奪われる可能性が高い。また、弱い威力の攻撃でも、多数受ければ、必ず身体を損傷させ、戦闘力を奪われることとなるだろう。ゆえに相手の攻撃をまともに受けないようにしなければならない。


そのような原則を実行するために「運足」による「位置取り」(ポジショニング)や「間合いの調節」、「入り身」「退き身」等の「体さばき」の体得が必要になる。


9
番目の「自分の攻撃の効力を最大化する」は、相手に攻撃をする場合、無駄な攻撃は、自分の体力を奪うのみならず攻撃部位の損傷を招き、戦闘力を奪う。

ゆえになるべく攻撃技は効果的に使いたい。例外として、手数の連続攻撃により相手を崩して攻撃する方法もあるが、基本的にはより効果的な攻撃をしなければならない。この原則の実行にも「運足」による「位置取り」(ポジショニング)や「間合いの調節」、「入り身」「退き身」等の「体さばき」の体得が必要になる。


尚、8番目と
9番目の原則を組み合わせると、「相手攻撃を弱体化し自分の反撃の効力を最大化する」というカウンター攻撃戦術の原則となる。

但し、下位者(初心者)は、相手の攻撃を受け技等で防御する等して、原則の8番を実践し、間髪を入れずに反撃するようにして、原則9番目の実践を始めた方が良いだろう。なぜなら、カウンター攻撃から覚えることは、防御技術と攻撃技術の習得を中途半端にしてしまう可能性が高い。

また、見切りの能力も反射神経等に頼る皮相的なものになり、本当に困難な状況で役立つ見切りが身に付かない可能性が高いからだ。ゆえにクロスカウンターを身につける際は、基本から徐々に積み上げることを勧める。(続く)

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