フリースタイルカラテ・プロジェクト趣意書 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
【フリースタイルカラテ・プロジェクト趣意書】

フリースタイル空手プロジェクト(FKプロジェクト)の目標は、多様な空手流派や空手家、また格闘家による技術の交流を可能とするような場(競技会)を創出することです。
 
そのためには、より「公明正大」な競技ルールが必要だと考えました。そうして考案されたものがTS空手競技ルール(TS- Rule=Freestyle Karate Rule)です。
 
「公明」意味は、「公正で私意がないこと」(広辞苑)で、「公明正大」の意味は、「心が公明で少しも私心がないこと」(広辞苑)です。つまり、様々な背景を有する人間が全力を出し合い、それを評価するには、なるべく私意が入り込まないようにし、どのような人間が見ても納得できるようにすることが重要ではないかと私は考えたのです。
  
また、空手界が世界中の誰が見ても、普遍妥当だと認識できるルールを有するならば、これまでのマイナーなイメージを払拭し、メジャーなイメージを世界中にアピールする事になるでしょう。
 
 なぜなら、他流との交流を拒絶する流派間の壁をなくし、空手家が仲間(パートナーズ)だと認識し合えば、スポーツの中でサッカーに次ぐほどの愛好者の数を空手は持つからです。
 それが社会的な承認面で、サッカーに遥か及ばないのは、競技が持つ魅力のみならず、空手家が流派という壁を創り、排他的な社会やルールを形成しているからではないでしょうか。
 
繰り返しになりますが、フリースタイル空手プロジェクトの目標は、流派間の壁を無くし多様な流派の交流を実現することです。その交流をより深いものにするには共有可能なルールが必要だと私は考えます。その共有可能な新ルールがTSルールなのです。

私は、新ルールを考案するにあたり、格闘競技と格闘技の本質を考えました。そして、格闘技の本質を見極めた上で、より普遍性のあるルールとして考案したのがTSルールです。

私は新ルールの普及を通じ、武道とスポーツを融合させ、空手道に新しい価値を与えたいと考えています。言い換えれば、フリースタイルカラテ・プロジェクトとは、国家、宗教、言語の壁を乗り越え、人と人とを繋ぐ事業なのです。

断っておきますが、TS空手武道競技ルール(フリースタイル/クラシックスタイルの2種類)は、既存の伝統的競技ルールや流派の存在を全否定しているわけではありません。

私は、多様なルールや流派が存在することを否定しません。しかし、既存のルールや流派が絶対だと考えているとしたら、やがて創造性やダイナミズムの喪失に繋がると考えているだけです。

ルールとは、何らかの目標と目的を有し形成されています。そして、その目標や目的は、時代背景や状況により変化するものなのです。

私は、空手やスポーツも芸術の一種だと考えています。また、芸術とは人間性の回復に必要なものだと考えています。

フリースタイルカラテ・プロジェクトの核心は、空手や空手競技を人間性の回復の機能、そして創造性やダイナミズムを生み出す基盤にしたいという思いです。

さて、ここで新しいルール(競技方式)と伝統的なルール(競技方式)との改良点について簡単にお話します。
 
新しいルールは、技が決まった時、その効力を数値化して、競技者のみならず観客に知らせることです。また、打撃技のみでは、判定材料が少なく優劣がつけにくかった試合に「倒し技」や「背後取り」を加え、判定材料を増やしたこと。そして、観客を魅了する蹴り技に「テクニカル・ハイキックポイント」を与える事などです。それらの改良点によって、競技者と観客が、競技をより共有しやすくなり、楽しむことが可能となるのです。

また、多様な戦闘アプローチを可能としたことや格闘技の本質をより踏まえた判定基準の採用により、競技に戦術性や戦略性が育まれていくはずです。その意味は、空手競技をチェスや将棋のように知的なものにしていくということです。

最後に、このプロジェクトの究極的ゴール(目的)とは、異種として排してきた他者と交流し、それらに対する理解を進展させ、それらとの相互承認・和解を実現するということです。

最後に、空手とは「empty hands」英訳されますが、「空(くう)」の「手」とは、絶えず外部に開かれ、同時に内部を開拓するという、「open mind 」(オープンマインド)を意味すると私は考えます。

言い換えれば、絶えず他者を包摂、融合し、自己を変革、創造していく営みのことです。それは、絶えず新たな自他の関係を創造していく、「Freestyle karate (フリースタイル空手)」の思想そのものです。


是非、多くの空手家、格闘家の参加をお待ちしております。