明けて翌朝。福田港から姫路行きのフェリーに乗るため、北東部の海岸沿いを走りました。石切り場が点在する荒涼とした風景の中を、駆け抜けます。早朝の交通量皆無な道は、小豆島が持つ奥行きの深さを物語っていました。

 

 

 福田港のフェリー乗り場はあっという間でした。ネット予約で5%割引を享受しつつ、余裕を持って港に到着しましたが、そこには瀬戸内ならではの穏やかな時間が流れていました。乗船した車両は、わずかに3台。 数十台を積載できる車両デッキも車間を大きく空けて駐車しました。客室もほぼ独占状態で、まるでプライベート・チャーターのような贅沢さを味わいましたが、同時にその採算性を案じてしまうほどでした。

 

 

 姫路港へ上陸後は、少し内陸を走ることにしました。市街地を抜け、加西、加古川の合間を縫って北上を開始します。 西脇市の「道の駅 北はりまエコミュージアム」で、堅実な昼食を済ませて再スタート。ここからは、地図を眺めるのが楽しくなるような快走路の連続でした。

 

 

 R175の対岸を走るK294で北上し、丹波篠山から南丹へと抜けるルート。R173からK80へと繋ぐこのエリアは、道の雰囲気が実によろしい。今回は雪のリスクを考慮して、「頼りなさそうな険道」は避けましたが、路面状況が良い時期に再訪し、さらに深く走り込みたいと思わせるポテンシャルを秘めていました。

 

 

 本日の宿は、南丹市の山間に佇む「日吉フォレストリゾート」。 コテージやキャンプ場を併設した複合施設で、案内された部屋は驚くほど広く、静寂に包まれた快適な空間でした。

 

 

 唯一、残念だったのは温泉のお風呂。二人で満員というコンパクトすぎる浴槽(洗い場は四箇所)には驚きましたが、幸いにも宿泊客が少なく、ほぼ独占して寛ぐことができました。このロケーションと静けさは、まさに旅の疲れを癒やすのに最適。雪がなくて客層が落ち着いた時期を狙って、また訪れたい隠れ家の一つになりました。

 岡山のホテルで、ちょっと寝過ごしてしまい、朝イチのフェリーを逃してしまいました。予約もしていなかったし、まあいいかと、次のフェリーで新岡山港から土庄港へ渡り、小豆島に上陸しました。

 

 

 1時間強の船旅は、驚くほど穏やかでした。揺れを一切感じない鏡のような水面を眺めながら、快適な座席で過ごす時間は、北海道へ渡る大間ー函館航路の百倍は快適でした。

 

 

 土庄港へ上陸し、まずは世界一狭い海峡を通過。もはや水路のようなその場所を、渡ったという実感すらなく内陸へ。中山千枚田はオフシーズンの静寂に包まれていましたが、瀬戸内の島特有の狭く急な坂道は、ちょっと運転のハードルが高いかもしれません。

 

 

 島の南側、K250の海岸線をトレースしながらランチの場所を探します。 目当ての素麺は見つけたお店が定休日という平日ツーリングの洗礼を受けましたが、福田港付近で偶然見つけたうめもとアナゴ蒲焼丼が当たりでした。昭和の香りが漂う店内でいただく美味しくいただきました。1,200円という今どきにしては、良心的な価格でした。

 

 

 さらに、二十四の瞳の舞台近くの土産物屋では、醤油への熱い想いを語る店員さん(ご夫妻でしょうか)に出会いました。「自分が本当に良いと思うものを売る」という彼らのスタンスに共感し、お勧めの醤油を買い求めました。こういう店の商品は私の経験上、ハズレはありません。

 

 

 小豆島は面積の割に懐は深く、本格的なワインディングが随所に隠れています。 今シーズンで履き潰す予定のスタッドレスタイヤを惜しむことなく使い、寒霞渓の頂上へ。霞がかった空の下、瀬戸内を一望する絶景を独り占めする贅沢(インバウンドの方も少々いましたが)を味わいました。

 

 

 四方指展望台で出会った人懐っこい猫に首を傾げ、大坂城の「残念石」に歴史の重みを感じつつ、最後は島の定番であるエンジェルロードへ。干潮を若干過ぎ、海に消えゆく砂の道を強引に渡る若者たちを眺めながら、「若さの特権」に微笑ましくなりました。

 

 

 地元のスーパーで地魚などを買い込み、島の西端の宿サンセットコーストへ。 残念ながら日没のグラデーションは拝めませんでしたが、あっという間に訪れる漆黒の闇と、波の音だけの世界。1日で島をほぼ一周し、充実感に浸りました。ほぼ、島巡りは終わったので、明日は朝一番の便で本州に戻り、次なるルートを模索するのも悪くありません。

 冬の数日間にわたるツーリング。目的地選びは常に「雪」との戦いになります。昨年、降雪で延期となってしまった紀伊半島の教訓を活かし、今回は天気予報と睨めっこしながら「直前予約」で、未踏の地、小豆島をターゲットに定めました。

 

 

 初日の予報は雨。移動日と割り切り、雪を避けて高速道路メインのルートを選択しました。しかし、上信越道の電光掲示板には「坂城ICから先、冬タイヤ規制」の文字。

 

 「本当かよ?」と半信半疑で突入すると、いきなり嘘のような積雪路面が広がっていました。トンネル一つで劇的に変わる山の気象。3年目に突入したDAVANTIのスタッドレスタイヤに一抹の不安を覚えましたが、車は挙動を乱すことなく最低限の仕事を果たし、私を雪の向こう側へと運んでくれました。

 

 伊那を過ぎる頃には雪も消え、名古屋を越えて鈴鹿山脈を抜けると、いつものドライな高速走行へ。土山SAでのハイオクは197円/L。暫定税率が解除されても下がっとらんやないかと、突っ込みつつ、給油をして一気に西を目指します。

 

 

 西宮から阪神高速、第二神明と繋ぎ、爆速で流れるR2バイパス群を経て、たつの市から海沿いのR250(通称:はりまシーサイドロード)へ。単なる遠回りの国道だから空いているだろう、という予想は外れ、そこは兵庫の定番ドライブルート(だと思う)。意外な交通量に少し気勢を削がれましたが、相生や赤穂といった情緒ある街並みを抜ける旅情は悪くありません。

 

 

 そして、日生からは岡山ブルーラインへ。 ここはまさに快走ルート。信号のない、高速道路さながらの線形をトレースするのは、今日一日の疲れを忘れさせてくれる至福のひとときでした。

 

 

 後楽園近くの岡山プラザホテルにチェックイン。 官庁街ゆえに賑わやかな繁華街とは無縁の静かな立地でしたが、その代わり飲食店は限られていました。散策ついでに見つけた一杯のちゃんぽんで胃袋を満たし、初日の長い移動を締めくくりました。明日は新岡山港からフェリーで小豆島へ。未踏の島はどんな景色を見せてくれるのか、期待に胸が膨らみます。