電気自動車について、自身の考えを整理するためにブログにアップしました。導入するか否かは置いといて、とにかくBEVに乗ってみないことには始まりません。初期費用がとても高いのですが、候補に残った2台のBEVのうち、タイトル通りiX1に試乗してきました。

 

 

 BMWはドイツ勢の中では電動化に熱心なメーカーだと思います。自他ともに認めるエンジン屋であるBMWが電動化に熱心なのは興味深いですね。iX1はBMWのSUVとして、エントリーモデルであるX1の電動車です。外観も内装もほぼ同じガソリンとディーゼルもあり、そういった意味ではICE車の延長線上にあると言えます。大型化の一途を辿る今の車としては、コンパクトサイズで、そのくせ荷物室の容量も十分です。運転席に座ると、かなり未来的なインパネが目に入りますが、これはBEVだからではなく、BMWの最近のトレンドです。

 

 BEVはとても静かと言われていますが、この車は想像していたほど静かではありませんでした。これは、みずがめ座が勝手に無音空間を想像していたためで、決してうるさくはありませんし、一般的に考えれば間違いなく静かです。アクセルに忠実に反応する動力性能はさすがで、2 tを超える車重を全く感じさせません。Bレンジで走行すると強い回生ブレーキが作動し、ブレーキペダルを踏む必要があまりありません。慣れないとギクシャクすると営業担当に言われましたが、それはアクセルペダルの踏み方がラフな一部の人にとってでしょう。


 

 BMWのBレンジは完全停止まで可能で、停止後はパーキングブレーキが自動でかかるため、非常に楽な運転ができます。市街地はこのBレンジが使いやすいと思いました。逆に回生ブレーキが弱いDレンジは、高速道路向きでしょうね。今回は高速道路での試乗はできませんでしたので、体験できませんでしたが。BMWと言えば「駆け抜ける喜び」というフレーズで有名ですが、SUVタイプのBEVでもそれを裏切らないとは、たいしたメーカーですね。

 

 走りに関しては全く文句がありませんでしたが、コネクティッドやインフォテイメントという、最近の車では必須になりつつある「付加的」な部分についてはイマイチの部分があるようです。ナビはあまりお利口さんではないようですし、地図更新の期間もいつまでやってもらえるか、不安な面が残ります。また、昔はレクサスの特権だった通信によるオペレーターサービスは国産車にはかなり浸透してきましたが、BMWではAIによる案内のようです。試してはいませんが、オペレーターにはまだ遠く及ばないと想像できます。

 

 ほとんどのシーンで満充電なら300 kmは走りそうなので、実用的には十分と思われます。正直、この走りを体験するとかなり欲しくなりましたが、V2Hに関する情報があまりなく、機器との接続相性などのデータもないようでした。V2HはやはりBEV導入の根幹を成すシステムですので、いくら走りが素晴らしくても、そこが明確にならないとこの車の導入は困難ですね。

 前回はBEV本体について経済的優位性が破綻と書きました。今回はV2H装置について考察したところ、これに拍車をかける結果になりました。BEV同様、V2H機器についても発展途上の製品と捉えるのが無難です。したがって、当面は最新の商品が最良の商品になると思われます。

 

(出典:ひだかや株式会社)

 

 V2Hで検索すると、これのいいところだけが強調され、あたかも電気代がガッツリ節約できるようなサイトが前面に出てきます。ところがこれに「非効率」とか「効率悪い」という単語を追加すると、全く異なる側面があぶり出されます。そう、検索文字通りこの装置はエネルギー効率が極めて悪いのです。太陽光発電との組み合わせが前提ですので、その条件で考えますが、発電した電力の6割程度しか使えず、残り4割はロスとして消えてしまいます。理由については詳しいサイトを見ていただくとして、単純にエネルギー効率だけを考えたなら、V2Hなどない方が絶対にいいです。

 

 エネルギー効率は最悪とも言えるV2H装置ですが、電気代に換算して考えるとどうでしょうか。その世帯でのEVや電気の使用方法によって大きく変わりますが、うまく運用できればエネルギー効率の悪さを補って現状より安くすることは可能なようです。逆に運用をミスると現状より高くなる可能性もあり、使い方にはコツがあるようです。V2H装置は高価であり、初期投資まで含めて考えると償却できるかは微妙なラインです。拙宅のように卒FITになっていると、その可能性はかなり高くなります。

 

 以上のように経済性で考えると、BEV+V2Hを一から揃えるのは明らかに時期尚早でしょう。いや、おそらく私の生きている間はこの組み合わせの経済性優位性はないと思っています。したがって、災害時の電力備蓄とBEVのある生活の魅力にいくら支払うかということになりそうです。

 

(出典:NHK)

 

 さらに経済的な観点から災害時の電力備蓄について考えてみます。災害と一口に言っても、自宅が崩壊や流出といったレベルになると、個人宅での備蓄など何の意味も為さないため、自宅は無事だがインフラが損害を受けたというレベルの話です。この場合、状況にもよりますが、インフラが復旧するまでは自宅から離脱して、被害のない地域でホテル暮らしをするという方法が考えられます。私の場合、既に半分リタイヤしているので、仕事の心配は無用なのが大きいです。宿泊や食事などで1日5万円かかったとしても、10日で50万円です。この金額だけをみると大金ですが、BEV+V2Hの設備費は数百万円ですから、かなり安くつくことがわかります。つまり、現状維持をしてお金を「備蓄」するというのが、災害時でも合理的なのかもしれません(ちょっと極端かもしれませんが)。

 

 そうすると最後に残るのはBEV+V2Hのある暮らしの楽しみ、要は自己満足です。これにそれだけのお金を使うかということになってしまい、それならもう少し製品が成熟してからでもいいかな?というのが最終結論になりそうです。それにしても、拙宅のようにかなり好条件が揃っている場合でも、残るのが「自己満足」だけとは、一般への普及は棘の道ですね。

 前回は、拙宅はBEV導入の好条件が揃っていると書いたのですが、BEVにはもう一つ重要かつ最大の欠点があります。前回あえて触れなかった、初期投資が高すぎるという問題です。厳密な計算はしていませんが、初期投資を電気料金を含むランニングコストで償却することはおそらく無理だと思います。サクラ、リーフ、あるいはBYDのような比較的安価な車種だとまだその可能性はありますが、以下に述べる条件によりそれらの車種は購入候補には上りません。

 

(出典:日産自動車)

 

 では、拙宅の場合の具体的車種について考えます。やぎ座が出す条件はBEVか否かにかかわらず、運転席が高いこと、4WD であること、そして現状よりボディが大きくならないことの3点です。これにV2H対応車種(前回の流れから、V2Hは必須と考えています)という条件を加えると、すべてを満たす車種は私の知る限り存在しません。

 

 ボディサイズの条件を少しだけ緩和すると唯一、アリアが候補になります。ソルテラまで大きくするのはかなり迷うところです。また、V2Hはフルでの対応が望ましいですが、停電時だけ対応する「ハーフV2H」もOKとすると、BMWiX1(システム的に共通のミニ・カントリーマンも)が候補に入ってきます。災害時のエネルギー備蓄という観点からすればギリギリ合格とも言えますが、やはり太陽光発電の電気を余すことなく使いたいと思いが強いので、ハーフV2H対応の車では中途半端な感が拭えません。最終的にアリア一択となってしまい、これが(いや、どれでも)かなり高く、導入の非常に高い障壁になっています。

 

 もう一点、BEVは発展途上の製品であることも購入を躊躇わせます。その発展スピードは「車」という今までの概念からは完全に一線を画すものであり、商品概念としてはスマホと似ていると思います(バッテリーの劣化なども点でも似ていますね)。例えば、現状のBEVがiPhone3程度のものだと想像するとわかりやすいですかね。そこからの発展を考えると、当面はいつBEVを買ってもすぐに陳腐化してしまうでしょう。となると、価格がこなれた中古車という選択肢もあまり期待できそうになく、バッテリーの劣化は不可避ですので、それが中古車敬遠に拍車をかけそうです。当然ながら、買い替え時に現有車の価値は二束三文になる可能性が高いです。

 

(出典:日産自動車)

 

 このように、BEVは車でありながら、その商品性はスマホと共通する側面があり、さらには今BEV業界に参入している特に車に関して新興メーカーの撤退、淘汰が起こることは十分に考えられます。したがって、購入するメーカーも慎重に選ぶ必要があるでしょうね。いずれにしろ、購入候補車がアリアだけになった時点で、BEV導入における経済的優位性の破綻が明白になりました。