前回は、拙宅はBEV導入の好条件が揃っていると書いたのですが、BEVにはもう一つ重要かつ最大の欠点があります。前回あえて触れなかった、初期投資が高すぎるという問題です。厳密な計算はしていませんが、初期投資を電気料金を含むランニングコストで償却することはおそらく無理だと思います。サクラ、リーフ、あるいはBYDのような比較的安価な車種だとまだその可能性はありますが、以下に述べる条件によりそれらの車種は購入候補には上りません。

 

(出典:日産自動車)

 

 では、拙宅の場合の具体的車種について考えます。やぎ座が出す条件はBEVか否かにかかわらず、運転席が高いこと、4WD であること、そして現状よりボディが大きくならないことの3点です。これにV2H対応車種(前回の流れから、V2Hは必須と考えています)という条件を加えると、すべてを満たす車種は私の知る限り存在しません。

 

 ボディサイズの条件を少しだけ緩和すると唯一、アリアが候補になります。ソルテラまで大きくするのはかなり迷うところです。また、V2Hはフルでの対応が望ましいですが、停電時だけ対応する「ハーフV2H」もOKとすると、BMWiX1(システム的に共通のミニ・カントリーマンも)が候補に入ってきます。災害時のエネルギー備蓄という観点からすればギリギリ合格とも言えますが、やはり太陽光発電の電気を余すことなく使いたいと思いが強いので、ハーフV2H対応の車では中途半端な感が拭えません。最終的にアリア一択となってしまい、これが(いや、どれでも)かなり高く、導入の非常に高い障壁になっています。

 

 もう一点、BEVは発展途上の製品であることも購入を躊躇わせます。その発展スピードは「車」という今までの概念からは完全に一線を画すものであり、商品概念としてはスマホと似ていると思います(バッテリーの劣化なども点でも似ていますね)。例えば、現状のBEVがiPhone3程度のものだと想像するとわかりやすいですかね。そこからの発展を考えると、当面はいつBEVを買ってもすぐに陳腐化してしまうでしょう。となると、価格がこなれた中古車という選択肢もあまり期待できそうになく、バッテリーの劣化は不可避ですので、それが中古車敬遠に拍車をかけそうです。当然ながら、買い替え時に現有車の価値は二束三文になる可能性が高いです。

 

(出典:日産自動車)

 

 このように、BEVは車でありながら、その商品性はスマホと共通する側面があり、さらには今BEV業界に参入している特に車に関して新興メーカーの撤退、淘汰が起こることは十分に考えられます。したがって、購入するメーカーも慎重に選ぶ必要があるでしょうね。いずれにしろ、購入候補車がアリアだけになった時点で、BEV導入における経済的優位性の破綻が明白になりました。