3月最終週。関東(南部)が桜満開の喧騒に包まれる中、私はあえて北へと車を走らせました。花見の混雑を回避し、そして冬の名残を惜しむ雪景色を楽しむことを目論みました。スタートは一ヶ月前と同じ、郡山のカフェから。

 

 

 磐越西線と複雑に交差するK7を抜け、今回のメインイベントであるR459(福島横断国道)へと足を踏み入れます。多くの一般ドライバーがR49を選ぶ中、あえてこの大迂回の国道を選ぶのは、ひとえにマイペースで走るためです。霧が晴れた瞬間に現れた、純白の雪を抱いた磐梯山の威容は、八ヶ岳とはまた違う、東北の春の力強さを感じさせてくれました。

 

 

 山都から先、除雪が完璧に行き届いたドライなアスファルトを、誰もいない貸し切り状態でトレースします。飯豊山展望スポットに堆く積まれた雪を眺めながら、静まり返った山中で休憩する時間は、まさに至福の一言です。

 

 

 県境を越え、新潟県内へ。お気に入りの農村レストランすがばたけでは、運良く打ちたてのざるそばにありつけました。「今打っている最中」という言葉は、急がない旅人にとっては最高のご馳走です。瑞々しい蕎麦の香りが、と言いたいところですが、嗅覚を失っている身としては残念で。でも、胃袋だけでなく心まで満たしてくれたのは事実。

 

 

 午後のステージは、魚沼の山古志地区へ。K24は、周囲に雪壁が残る豪雪地帯でありながら、この地域の主要道ゆえに路面は完璧にドライ。雪景色を楽しみながら、ノーマルタイヤ(※注:私の車はスタッドレス継続中です)でも走れるほどドライな路面を独占するという、この時期だけの極上の贅沢がそこにありました。

 

 

 旅の締めくくりに立ち寄った魚沼のGSで、現在の国際情勢の厳しさを突きつけられました。イラン情勢によるエネルギー不安の余波か、ハイオク価格は 181円/L。値段だけなら、そこまでは驚きませんが、数量制限がかかっていることにビックリ仰天。最大の2000円分を指定しても、わずか 11.24Lしか給油できませんでした。これは、この先、ツーリングに出るのは難しくなるかもしれませんね。

沼津での一夜を明け、次なる目的地は平塚。 日曜日の箱根周辺の混雑を想定し、早朝にホテルを後にしました。R1の登坂車線をバイクに導かれるように駆け上がり、あっという間に箱根峠へ。芦ノ湖畔をのんびりと流しながら、静かな朝の空気の中、TTRSを元箱根へと進めます。

 

 

元箱根からは旧東海道、通称七曲り(K732)へ。 久々に足を踏み入れましたが、そのタイトなコーナーと急勾配はやはり強烈。低いギアを駆使し、対向車に気を配りながら慎重に下ります。

 

 

 箱根湯本の喧騒を横目に、小田原の急斜面にへばりつく住宅街を抜け、尾根筋に出るとそこには素晴らしい広域農道が待っていました。神奈川県民だった頃も知らなかったこの道は、並走するK74より明らかに静かでしょう。 沿道には早咲きの桜が彩りを添え、一足早い春の訪れを感じさせてくれます。交通量皆無の神奈川とは思えない快走路との出会いは、今回のドライブの大きな収穫でした。

 

 

 時間に余裕があったため、ふと思い立って湘南平へ。 内陸のK77を経由したルート選択が功を奏し、渋滞知らずで山頂に到着。そこで目にしたのは、期待を大きく上回る眺めでした。 西に富士と丹沢、南に相模湾、そして東には横浜・東京のビル群。海、山、都会という異なる表情を一望できるこの場所は、まさに湘南の特等席。適度な賑わいと清潔感のあるレストランも好印象でした。

 

 

 その後、大山阿夫利神社近くの寺院にて義父のお墓参りへ。 昼餉は豆腐料理の夢心亭へ行ってみました。店構えに反してカジュアルに楽しめる店内で、みずがめ座は湯葉丼、やぎ座は湯葉つけ麺を頂きました。親子丼を思わせる優しい味わいの湯葉丼は、旅の疲れを癒やす最高の逸品でした。

 

 

 旅の締めくくりは、平塚の施設に入所している義母との面会。 この日はちょうど誕生日だったのです。素晴らしいワインディングと景色、そして美食を堪能しつつ、やぎ座の点数稼ぎもしっかり果たすという、まさに一挙両得な二日間となりました。

 1月に小海線と身延線を繋いだ乗り鉄を楽しんだ後、今度は、同じルートを車で駆け抜けたいという欲求が芽生えました。 やぎ座の用事という絶好の口実を得て、あの時車窓から眺めた景色を、自らの手でトレースする便乗の旅へと出発しました。

 

 

 早朝、上信越道から中部横断道を経て、R141を清里方面へ。 1月には雪雲に閉ざされていた八ヶ岳連峰が、この日は澄み渡る青空の下、その峻険な姿を惜しげもなく現していました。白銀の山脈と抜けるようなブルーのコントラストに、車のエンジン音が心地よく響きます。

 

 

 長野・山梨県境の八ヶ岳元気村で朝食。650円という破格のモーニングは内容も悪くなく、軒先の巣箱に集まる野鳥を眺めながらの食事は風情たっぷり……なのですが、いかんせん寒すぎた。 開店直後の広々としたウッド調の店内は暖房が追いつかず、石油ストーブに身を寄せながら、文字通り震えて味わう忘れられない朝食となりました。

 

 

 八ヶ岳大橋の鮮やかな黄色をアクセントにした絶景を抜け、定番の釜無川ルートから南アルプス市へ。 富士川の最上流・富士川大橋を渡り、いよいよ身延線に並行するK9、そしてK10へ。

 

 

 勝手なもので、電車に乗ればこの道を車で走りたいと思い、ステアリングを握れば電車の窓から眺めたいと思う。このジレンマこそが、旅好き・車好きの性なのでしょう。 今回、特に収穫だったのはK10の十島から万沢にかけての区間です。R52に交通を譲った結果、交通量は皆無。十分な道幅と適度なワインディングが残されたその道は、まさに打ち捨てられたからこその当たりと呼べる快走路でした。

 

 

 山を抜け、富士川を渡ると正面には圧倒的なスケールの富士山が。山梨側も良いですが、裾野まで一気に見渡せる静岡側からの眺望は、やはり王者の風格を感じます。

 

 

 13時過ぎ、予定より早めに沼津港へ到着。 観光地と化した漁港ではありますが、ここで手に入れるアジの干物や、解禁されたばかりのシラスは、海無し県である地元のスーパーとは次元が違います。売れ残りのタイムセールを狙い撃ちし、早々にホテルへチェックイン。鉄路をなぞり、アスファルトの感触で上書きした一日。 明日の用事を前に、すでに十分すぎるほどの満足感に包まれる旅となりました。