「昭和天皇物語」能條純一 混迷の時代:天才と無力、日独伊同盟の興亡 | ああ、無情!!masarinの読書ブログ

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昭和天皇物語(14) (ビッグコミックス)

 

二・二六を経て、近衛文麿が首相として選ばれるあたりから話ははじまる。そして、日独伊三国同盟の締結前夜くらいまでのお話だ。

 

この巻で描かれるのは、「混乱」だ。誰も事態の行く末を見据えていないようで、陸軍がすすめる日独伊三国同盟も、場当たり的で、メンツや個人の出世欲のために結びたがっているような描写になっている。

 

もちろん、この漫画の中の描き方だ。

 

天才石原莞爾も、鼻っ柱が強く、すぐに悪態をつくために統制派の東條英機らに疎んじられる人物に描かれている。その結果、左遷されてしまう。

 

当の昭和天皇は、やはりどうしていいのかわからないのだが、近衛文麿は責任を取りたがらない人だし、続く首相たちも短期間で辞任していく。国政の舵取りをする人物がいないといった様相を呈する。

 

そのうち、陸軍主導で同盟締結に動く。英米と独伊を比較すれば、どちらが強大かは自明であるのに。政府も軍もそれを周知しているようである。

 

この同盟締結の政争(とあえて書こう)の最中、ノモンハンで事件が起こる。ソ連と日本の守備隊が衝突するのたが、守備隊800とソ連軍は5000という兵力差で、守備隊は300が死傷したのちに撤退する。四割近くが死んで引いたことになる。どだい無茶な戦闘であり、撤退も仕方ないのであるが、撤退を決断した中佐は引いたことの精神性を問われ、自決する。この時点で合理性のない戦争は始まっていた。

 

このことが印象に残った。