新社会人・新大学生におすすめ「論文の書き方」小熊英二 | ああ、無情!!masarinの読書ブログ

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小熊英二「論文の書き方」
 

 

 


この本は慶應大学の学生向けの講座をもとにして作られた新書です。「アカデミックライト」の作法を、小熊英二がいちから教えていく本で、この本の手法を用いていけば、学生の卒論やレポートはもちろん、企業乗っ閣書を作成していく上でも役に立ちます。そのような用途を目指して作られた本です。

目次を見ていきましょう。+

第1章 論文とはなにか?
第2章 科学と論文
第3章 主題と対象
第4章 はじめての調べ方
第5章 方法論(調査設計)
第6章 先行研究と学問体系(ディシプリン)
第7章 方法(メソッド)
第8章 研究計画書とプレゼンテーション
第9章 構成と文章

・・・・・・と続いていきます。
あまりレポートなどを書いた事がない人には、特に第1章から第3章をサラッと読むと、その内容がとても役に立つということが理解できると思います。

企画書などを会社で書く必要がある人は、特におすすめです。

今の大学には、こういう便利な講座があるのですね。とはいうものの、これは小熊英二氏の独創なのだそうで、そのほかにもアカデミック・ライティングの講座は存在するものの、その書き方を網羅して調べている者ではないそうです。それを古今東西、ギリシャ時代の哲学者の弁から、現代のアメリカの大学の書き方まで、渉猟して授業にしたものだなのです。小熊氏のリサーチ力には、目を見張るものがあって、代表作「民主と愛国」でも、その調査料たるや半端じゃない。果たして、あの本を全部読み切った人間がどれくらいいるのか、と疑問になってしまう程の量です。

昔の大学は「見て盗め」の世界ですから、最低限レポートの体裁とはどう整えるのかは指示されますが、ここまで細かい文章の構成の作り方や、主題や研究対象の絞り方などは、あまり詳しく教わってないか、私が忘れているかのどちらかです。
緊急に来月までにレポートの作らねばならないという人には特におすすめの本です。

昔は、「理系の論文は論文の底をなしていない」とか先生方が言っていました。適当に数式をペラ一で書いて、提出してお茶を濁すという学生も多かったそうです。しかし、今では文系の方が、理系の科学的な論文の書き方の体裁をまねているそうです。アメリカでは、ハンバーガー式から書き方を習うそうで、非英語圏の人間でも取り残されないように工夫した学習方法になっています。しかし、フランスには別の論の立て方があって、どちらが正解というわけでもない。

その最たる例が、おそらく注の書き方で、学問や大学によって方式がバラバラなのだそうです。

人文科学系なら、「シカゴ・スタイル」、別分野では「ハーバード・スタイル」、「オクスフォード・スタイル・マニュアル」、「バンクーバー・スタイル」とさまざまです。

最終的には内容が吟味されるわけで、それ以外はスタイルがいろいろあっても問題はないのでしょう。

とにかく、論文や企画書の書き方で迷っている、新大学生や新社会人にぴったりな一冊です。