2019.7.22

一日一季語 蚊遣火(かやりび)  【夏―生活―三夏】

 

 

佇まひ良き庭先の蚊遣かな    野口光江

 

 

*2019.7.19  群馬県の村上鬼城記念館(鬼城草庵)にて

 

群馬県の村上鬼城記念館(鬼城草庵)は、鬼城が晩年を過ごした「並榎村舎」を記念館として公開しております。

19日こちらに伺いましたが、生憎玄関は閉ざされていました。

しかし、縁側、玄関の脇などに、蚊取線香が置かれていました。

このような場所には、蚊遣がよく似合います。

 

 

 

【傍題季語】

蚊遣(かやり) 蚊火(かび) 蚊取線香(かとりせんこう《かとりせんかう》)

 

 

 

【季語の説明】

蚊を追い払うために、かつては松・杉・榧(かや)の葉や蓬(よもぎ)などを焚いていぶした。その後除虫菊を主原料とする渦巻状の蚊取線香が普及し、さらに現在では化学薬品を用いた除虫器具が主流になっている。

 → 蚊

 

 

【例句】

蚊遣焚く仏間に明治の肖像画     都留嘉男 

蚊遣香腰に庭師のふりをして       松井のぶ

持て成さる茶店の庭に蚊遣り豚       片野光子

子の寝息聞きつつ蚊遣焚きにけり     稲畑廣太郎

形くづれず蚊遣り香の灰の渦       岸洋子

 

 

 

【金鳥の夏 日本の夏 ふきん】

蚊取り線香が生まれる明治以前、日本人は長い間「蚊遣り火」というものを焚いていました。

 

蚊遣り火とは、よもぎや松・杉の青葉を火鉢にくべて焚き、その煙で蚊を燻しだすという方法です。

 

夏に蚊の部屋への侵入を防ぐものがなかったのです。

 

そこで登場したのが「蚊帳」です。上掲の浮世絵で描かれているのは蚊帳を部屋に吊るしている様子です。蚊を燻しだすよりも、自分が網(蚊帳)の中に逃げ込んで、蚊から身を守りました。

 

蚊帳は日本書紀に初めてその存在の記載があることから、奈良時代ころから使用されていました。しかしそのころの蚊帳は絹で作られていたので、身分の高い人にのみ使用されるものでした。しかし蚊帳の素材が絹から麻や木綿に変わっていったことで、江戸時代には庶民にも浸透していきました。

 

金鳥の夏 日本の夏 ふきん」ですが、金鳥のマークをよく見ていただくと右側に“蚊帳生地”と書いてあります。左側には“MOSQUITO CLOTH”とも。つまりこの「金鳥の夏 日本の夏 ふきん」は「蚊帳」の生地で作られた“ふきん”なのです。

 

中川政七商店は1716年に高級麻織物の卸問屋として創業し、現在は日本の工芸をベースにした生活雑貨を生み出しています。同社でロングセラーとして愛されるのが、蚊帳生地のふきん。生活様式の変化によって需要が減った奈良県の特産品である蚊帳生地をふきんに再生し、大ヒットしました。

 

蚊は刺されてかゆいというだけでなく、病原菌を媒介する害虫でもあります。“金鳥の夏日本の夏ふきん”は、長い時を経て、日本人を蚊から守ってきた「蚊取り線香」と「蚊帳」という文化のコラボレーションだったのです。

 

 

 

今日は何の日

下駄の日

全国木製はきもの業組合連合会が制定。

7は下駄の寸法を表わすのに「七寸七分」というように7がよく使われることから。22は下駄の跡が「二二」に見えることから。

 

 

著作権制度の日

ナッツの日

円周率近似値の日

 

 

 

主な出来事

642

    百済の使者に兵士による相撲を見せる(『日本書紀』)。最も古い相撲の記録。(新暦822)

1549

    イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸。日本にキリスト教が伝来。(新暦815)

 

 

 

誕生日

1946

    岡林信康 (フォーク歌手)

1958

    家田荘子 (ノンフィクション作家『極道の妻たち』)

1958

    原辰徳 (野球(内野手・監督))

1964

    内村光良 (タレント(ウッチャンナンチャン))

1988

    吉高由里子 (女優)

 

 

 

以下の図書、ホームページを参考、引用しています。

(合本俳句歳時記  第四版  角川学芸出版)

富山いづみ <admin@nnh.to>

(カラー図説  日本大歳時記  講談社)

(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)

( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )

(ウイキペディア)

575筆まか勢)

(俳句のサロン)

    (一般社団法人日本記念日協会)