吉井勇「若き日の夢 その一」より吉井勇の第一歌集「酒ほがひ」の、「若き日の夢 一」より、抄出する。 かにかくにいとにこやかに親しみぬ深なさけびと薄なさけびと 鎌倉の扇が谷の山荘に朝の別れを惜しみけるひと かなしみと云ひがたきほどのかなしみに微かに顫ふわれの心か 饗宴のただなかにして君思ひこころ遽かに寂しくなりぬ この夜また身に染(し)むことを君に聴く沈丁花にも似たるたをやめ 底本は、岩波文庫「吉井勇歌集」、昭和40年10刷。