吉井勇「郊外」より | 新サスケと短歌と詩

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吉井勇の第2歌集「昨日まで」の、「郊外」の章より抄出する。


たそがれは遠き秩父の連山(れんざん)を眺めて君を思ひけるかな

門出でていづこともなく歩みゆく日毎の吾をわれとあはれむ

鎌倉の海のごとくにひるがえる青草(あをくさ)に寝て君を思はむ

ともすれば酒に遁るるあさはかの吾を棄てむと思ひ立ちける


底本は、岩波文庫「吉井勇歌集」、昭和40年10刷。