僕が編集役をしている同人詩誌、「群青」の第21号より、こぐま星座さんの作品を載せる。作者の同意を得てある。
被告 無実の焼鯖忠夫(本日の特売498円)
こぐま星座
眠い目をこすりこすり
真夜中に叩き起こされていきなり水の中に放り出されて
いやに手際よくはらわたを抜かれ
すっかりヒラヒラにされグショグショに真水で洗われて
少しでも大きく見せるために
わざと犯行は少しずらされて縫い合わされ
偽物の調書をとられ写真まで撮られ
全身を縫うようにごっつい竹串を刺され
なんとなくオレがやったような気分にさせられて
無実の瞳まで真っ白に監獄の鉄格子の上で
みりんまで塗られてカラカラに水分をなくして
カチャリと手錠姿のまま店頭に並べられて
オレ 焼鯖忠夫
鯖族としての尊厳までまるごと焼かれて
まだ小さく 銃 じゅう じゅう音をたてている
いいか水潟たちと母ちゃんの話はするな
いいか水潟たちをマトモだと思うな
いいか水潟たちはいつも数えている
いいか水潟たちからは決してタバコをもらうな
いいか水潟たちとはカツ丼を食うな
あれほど言ったし、みんな廊下で大声で叫んでいたが
その声さえも黒い油煙をあげ
口の周りはすでに真っ黒に焼け焦げて
叫びは夕焼けの海に届いていないばかりか
逆に今日は商業の夏の浮き輪になっている
売店のレジはチャリチャリチャリーンと鳴り続けている
「りがとうございますりがとうございますまことにりがとうございます」
「デカデカと広告で宣伝しといて もうねえってどういうこっちゃの」
店長に食い下がっている閉店の老婆
「ありますあります。ここにもう一パックだけありました。」
オレを指さして店員がすばやく二割引きシールを貼る
「最後だからお安くしておきます。」
店員の分際で軽く見やがって
ここまでしゃべらせておいてオレは二割引きか