これまでは、主に相手の心理について検討してきましたが、今回は自分自身の心理状態について検討したいと思います。


自分の心理状態なんてわかってるしコントロールできるよ。


と考える方もいらっしゃるかと思いますが、はたしてそうでしょうか?


社会科学者のジェニファー・ラーナーたちは、次のような実験を行いました。


実験参加者を2つのグループに分け、Aグループの人たちには悲しい映画を見せて映画の主人公になったらどう感じるかという感想を書いてもらい、Bグループの人たちにはありきたりな魚の映像を見せて自分たちの日々の活動について買いてもらいました。


そして、映画とは無関係な調査であることを告げて、全員に蛍光マーカーセットを渡しました。

そして半数の人にはそれをいくらなら売るか、残りの半数にはいくらなら買うか、それぞれ値段を考えてもらいました。


Aグループに属していた買い手は、Bグループに属していた買い手と比較して、約30%も高い値段で買ってもいいと答えました。

Aグループに属していた売り手は、Bグループに属していた売り手と比較して、約33%も低い値段で売ってもいいと答えました。


つまり、悲しい映画を見て主人公になった場合の感想文を書いた人たちは、そうでない人たちより、30%の高値で買い、33%の安値で売ると回答したのです。

しかも、映画を見てから価格の判断を行うまで、感情の高まりが持続していたことに、参加者は自分では全く気づいていなかったことも明らかになりました。


つまり、人間は、何らかの行為を行うときに、自分では気づかないにもかかわらず、それ以前の感情によって行為が左右されるのです。


具体的には、職場で悲しい思いをした人は、仕事が終わって買い物に行くと普段よりも散財してしまったり、高価な物を買ってしまうのです。

職場を離れて気分転換ができたと自分では思っていたとしても。


ですから、大切な説得等を行う時には、その前に自分が感情的にどのような状態にあるのかをしっかり把握しておくべきです。


上司にひどく叱られた、彼女(彼氏)に振られた、という感情を大きく揺さぶる出来事があったとしたら、その後で大切な取引先などに合うのはやめておいた方がいいでしょう。

普段では考えられない弱気な条件提示をしていまいかねませんから。


悲しい気持ちだけではありません。

怒りの感情を持ち続けていた場合にも、その後の行為に影響が及んでしまいます。

ですから、ひとつの会議が終わったら、しばらく間をとってから次の会議を始めるというのは、終わった会議での感情の高ぶりなどを沈静化させる効果があると考えられています。

もっとも、しばらくの間をとっただけで、それ以前の感情の影響が消えるかどうかは、個人的には疑問ですが・・・。


最も望ましいのは、感情的になる出来事があった日は、大切な決断などが要求されることをしないことです。


そうはいってもスケジュールが組まれていてどうしようもない場合は、トイレにでも行って、目を閉じて5回くらい腹式呼吸をしましょう。

息を吸う時間の倍の時間をかけて吐くのがコツです。

息を吐いている間は副交感神経が働きやすいので、冷静になれます。


そして、自分はそれ以前の出来事に感情を揺さぶられていないか、ということを冷静に考えましょう。

もう一人の冷静な自分が、今の自分を見ていると想像すると効果的です(これを「メタ認知」といいます)。


これだけでもはるかに冷静になれますので、是非試してみて下さい。


え?

悲しい思いをした後の異性を誘うと効果的か、ですって?


確かにラーナーたちの実験によるとハードルが平均で3割くらいは下がります。


今日はWカップで悲しい思いをした人たちがたくさんいるでしょうし、金曜日でもあります。

以前御紹介した「脳内麻薬」からの引用(「セックスによって愛情が生じる」)を斟酌すると、今日などはチャンスかもしれません。


あくまで、ご自身の責任で試してみて下さいね・・・(^^;)