「デストロイ8.8」 | 定年後の風景

定年後の風景

定年後や病気のこといろいろ書いてます

 

2011年チリ作をアマプラ176作目となります。日本にまで津波が来た、あのチリ地震の時に、収容されてた刑務所が倒壊して、逃げ出して彷徨ってる内に、トラに出くわしてどうのこうのとあり、へんてこりんでシュールかもと思い、ほぼ速攻で見始めます。

 

チリ映画は初めてと思いますが、やっぱり南米ラテンで、ブラジル映画とそっくりでしたが、えぐさ不気味さ、奇天烈さは殆どなくて、素朴極まりないドキュメンタリータッチですが、それでもこの先どうなるのか、何が起こるのかと気になり、必ず見てしまう不思議な魅力はありました。

 

殆どが地震津波の跡の瓦礫地で、あれは被災直後に撮ったのか、復興が殆ど進んでない中で映画撮影したのか、不思議で仕方無かったです。なのでドキュメントタッチで、ず~と撮ってましたが、手持ちカメラのホールドは悪く、揺れは多かったです。

 

トラは出て来ましたが、檻に入ったまま流されて来たもので、殆ど動いてるシーンは無く、ほぼ何も起こらず、意味あったのか、その後の展開には影響無かったような気はしました。個人的には、被災地で突然逃げたトラに遭遇して、面と向き合い何か起こるのか期待してました。

 

しかし、実際はもっと現実的なことが起こっただけでした。実話をもとにしていると言うので、これは実際に刑務所が崩れて逃げ出した当人か誰かが、その話を聞いて書いた作品のように思えました。彷徨う途中で銃を持った老人と知り合い、一夜を二人して飲み明かします。

 

その時に、老人は不思議な宗教的思想的話をしますが、意味はよく分りませんでした。主人公の中年髭ズラ男性は、崩れた刑務所を集団で脱獄して、そのまま逃げるつもりだったので、被災しながらも助けてもらう訳にも行かず、終始見つからないように隠れて逃げるのが、まあ言えば変わった設定だったでしょうか。

 

先ずは自分の家を見に行って、次に奥さんの実家へと一人で向いましたが、それ以外に目的地が無いのが悲惨で哀れだったでしょうか。

 

(以下ネタバレします)地震の前日に愛情一杯の美人の奥さんが、刑務所に面会に来ていて、なんかこうしたくて仕方が無い雰囲気まんまんで、よくある僻地の刑務所であるように、どっか片隅で二人は立ったままエッチまでしてました。たまに映画でもあります。

 

まあそれで、ラブラブ二人は分れを惜しんで迎えたその夜に、大地震が襲います。石積んだボロ刑務所ですから、囚人らは、崩れるぞ、と叫んで皆んな瓦礫の中を逃げ出します。特に刑務官に追われたり撃たれたりはしてませんでした。

 

多分彼らも警備なんかどうでもええわと、我さきに逃げ出してた思われます。また警察も大災害でそれどころではありません。男は当然先ずは、隠れながら我が家を目指しますが、家は無惨に崩れていて、奥さんと幼い娘さんは居ませんでした。津波に流されたようです。

 

それでまあ、最後の希望も絶たれて、ガックリ憔悴して彷徨って、こんどは、とある壊れた民家の中で一夜明かすと、そこには痩せた老婆の遺体があって、奥さんとは離れて住んでた母親かは分らなかったですが、優しく頬づけして、穴掘って埋葬していたので、多分実母だったと思われました。

 

すると今度は奥さんの死を知らせるために、奥さんの実家へと、とぼとぼ道路歩いてると、乗るか?と親切にも車にも乗せて貰えて、瓦礫屋に寝泊まりしながら、奥さんの実家へ隠れながら向います。するとある夜明け、ガオッと言う猛獣の咆哮が一瞬聞こえ、その方向へと行ってみます。

 

するとそこで、放たれたトラと素身で対面すると思いきや、トラは檻に入って漂着してました。生きてましたが、寝転んで弱ってました。しばらく男はまだ息をしている大きなトラを見ていましたが、何を思ったか、棒切れで鍵壊して扉あけます。

 

そして、ほら出んか、と言いますがトラは身動きしなかったので、男はそのままその場を立ち去りました。まあ、もう判断力無くしてましたか、助けたい一心だったのですかね。するとまあある日また、咆哮が聞こえたので、隠れて見てるとトラは悠然と遠くを歩いていて、トラは生きてました。

 

これら実体験なのでしょうか。しかし暫くすると住民の騒ぎ声とともに、一発の銃声が聞こえ、その方向へ行ってみると、トラは倒れており、撃たれて死んでました。これを見たあと、男は徘徊してて腹減ってたので、畑に並べてあったトウモロコシを取ってかじりつきます。

 

すると、一人の老人が銃突きつけて、なんで豚の餌食っとんじゃと脅されます。そして食ってもええから働けと、瓦礫運んだりマキ割ったりの手伝いをしこたまやらされます。しかし男は真面目に働くので、老人は気を許して夜中は二人で飲み明かします。

 

この時老人は、色々身の上話や神秘的なことも喋ります。俺は射撃の名人で優勝したこともある、と自慢話してます。今日も大トラ撃ったと自慢し、あの逃がしたトラはこの老人が撃ったのでした。男も喋り、とくに喧嘩することもなかく夜明けを迎えます。

 

しかし、何故か夜明けになると、男は大きなガラス片を紙に包んで握って、老人の腹を刺して殺しました。身元バレて警察に通報されると思ったですか。男は奥さんの実家へ辿り着きましたが、家は崩れて誰も居ませんでした。

 

もう男は行き先が無く、目的が無くなったので、拾った鉄棒で思いっきり近くの家の鉄柵を殴って壊しにかかり、近所の人に、近くに来ていた救援軍隊に通報されて、多分はまたもとの刑務所に戻るであろう軍の車の中の虚ろな男を映して、映画は終わります。

 

まあ、どうと言うことは無いのですが、どこへ行っても震災津波の瓦礫の山で、隠れてさすらい、トラが出て来て撃たれて、老人を殺してと、きっとこの男は殺人犯ではなかったかと思わせる、それだけの映画でした。

 

しかし、この先どうなるんやろう、何が起こるんやろうと、最後まで見てしまう映画だとは思いましたよ。緊迫感は終始漂ってましたね。因みにジャケあるような、奥さんか誰かの若い女性を抱いて助けてる場面はありませんので。

 

チリ地震は2010年2月と言うことで、これはやはり体験談をもとに、まだ残ってた実際の瓦礫現場で撮影してるように思えました。男は老人を殺したのも自供したのでしょうか。こまかいストーリーに間違い無いか例によってネット見てると優れた分析がありました。

 

トラが檻に入ってたのは牢獄に居た自分であり、なので危険など顧みずに扉開けて自由にした、とかトラが生きて自由になってたのを見て喜んだのに、それをこの酔いどれ老人が撃ち殺しよったので、この老人も殺したと、穿った見方してて感心しました。

 

ここまで読み取らんなあかんなと、まだまだ未熟な自分を思ったのでした。結構詳細なあらすじがいくつかネットに出てました。