ことしの早春に、役者さんのツイッターアカウントに、「#高円寺に住んでるバンドマンの部屋に貼ってある遠距離恋愛中の彼女の写真」「#下北沢に住んでる雑貨屋店員の部屋に貼ってある片思い中の男友達の写真」というハッシュタグのツイートがひとしきり現れ、ちょっと思わせぶりなポーズをしているお写真がそこには貼られておりました。タグの長さでまずは圧倒されるのですが(笑)、一方で結構凝ったところを突くなぁ…という感じ。お写真を出しているひとの人数分の”思わせぶり”な仕方がそこにはあり、でもそのツイートの中でも試行錯誤。。。
筆者の感性が鈍いことを少々恨みつつ(^^;)、これはいったいどういうシチュエーションなのか?と「謎のお題」が示されてから幾年月…。
あ、幾年月…はちとオーバーにしても、春、夏…と時は過ぎて、この2つのハッシュタグのシチュエーションが舞台化。そして、それぞれの演題に当日記でも何度か登場された役者さんがいらっしゃる…。確かに、ポーズとってる写真出されてたな。
はたしてそのシチュエーションとは何者なのか?
その光景を観んがために、当日記でもすっかりお馴染みの会場となった、新宿のシアターミラクルまで行ってまいりました。
(筆者の観覧日は11月10日の昼夜連続と、少々時間がたっておりますが、公演期間が長く(全11日間)、ネタバレ防止のため、遅くなっております…)
「だからどうした」
単純にどうなった…からはじまり、あーだこーだ言ってんじゃねーよ!であったり、悩み聞いてやろうか?であったり、…
ともかく、これもいろんな想像ができる舞台。作者の表情豊さんは、当日記が“ぶたい”にも広がり始めた頃のこちらのステージに出られておりました。
(2018年11月23日@南阿佐ヶ谷)
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ツイッターで登場した当時のそれぞれのハッシュタグが、そのままサブタイトルになっています(以下、ここでは下北沢編、高円寺編と記します)。下北沢編は女子の想い、そして高円寺編が男子の想いを綴った物語。それらの想いをつなぐように、チケットのデザインもこんなふうに…
井の頭線をショートカットしないのがミソかも…っていう気もしますね。
確かに今作の会場が新宿…ではありますが、中央線沿線、小田急線沿線それぞれの色にこの舞台も染まっていそうな。
さて、筆者は先に昼公演で下北沢編を観覧。バンドマンであるユウスケに恋をしている雑貨屋店員のマユが主人公。もちろん彼氏であるユウスケに対する想いは一途。ですが、よく言えばクール、悪く言えば本当に愛してるかどうかほとんど読み取れない感すらあるユウスケくん。モテない君の筆者が観ていても、煮え切らないこのひと、ちょっとヒドいんじゃないと思うくらい、徹底したクールさです。
そしてもう一組。同じくバンドマンのコマツに恋をしているOLのミサトのカップル。こちらも女子のほうが想いが一途なのですが、ちょっと空回り気味。想いが強すぎてちょっと束縛している感があります。なぜか「ゼ●シィ」で彼氏をひっぱたくシーンがあったり(笑)。みためには笑える部分がありますが、こちらも彼氏君がちょっと煮え切らないなぁ…。
さらに、この2組を囲む周りの人たち。”あるある”とも”えっ、ほんと?”ともとれるくらいの微妙な立ち位置の皆様方。
ちょっとテキトーではあるけれど、娘であるマユに過保護なくらいに口をはさむお父さん。雑貨屋の店長夫婦にお友達…と、この2組の周りで起きるできごとも、ありがちな一方で、ちょっとどうなの?という感じもあったり。当日記ではもう何度か登場されている白野熊子さんが、ミサトの友人役として出演されています。ちょっとやさぐれ系…の役どころだそうでして、タバコを吸ってみたり(もちろん演技で)、奥さんがいるはずの雑貨屋店長と一緒に手つなぎ&抱き合ったり…。でもって女子会シーンで大騒ぎしてたりと、ちょいワル女子?を楽しんでいるかのようでした^^。
あっちでもこっちでも男女関係が生まれ、それぞれの状況に合わせて一喜一憂…。お題の通りの「だからどうした」ではあるけれど、観ているほうはあっちもこっちも様子が気になるストーリー。主人公のマユは、最終的には過保護であるはずのお父さんに促され、ユウスケの本音を引き出すために、自転車を必死に漕いで追いかけていきます(このシーン、黒子さんが登場して風&花吹雪の演出つき…)。その先がありそうな展開をもって、物語はクローズしていきます(ちょっぴりホッと…)。
続いて、夜公演の高円寺編。
筆者が男子(まぁ、オジサンというほうが実態に近いかもですが(笑))であるからか、こちらに登場する男子諸君のシチュエーションのほうが、「あぁ、それわかるわぁ」というイメージでございました。モテない君の筆者としては、主人公のバンドマン、カズ君が、その恋人であるユミを、あまりにも美化していく姿が最も近いかも(苦笑)。確かに、女子を前にするとその時々の程度の差はあれ、そういう感じになりますもん…。
ユミは、留学帰りの状態でカズ君の前に登場しますが(つまり、留学中は”遠距離恋愛”ということ)、はじめは仲良さそう…な二人が、こんどは男の子のほうからの束縛が強すぎて、最終盤でドン引きするようなことをユミに言わせます。それでも一途なカズ君は、バンドマンらしく絶叫系の唄で想いを伝え…、こちらもなんとか”その先がありそう”なところで終わっていきます。
高円寺編にも、周りに多彩な人々が、それぞれの営みを通してこのカップルに絡んできます。
人生経験が幾分豊かな、コンビニ店員の村田さん。落ち着き払った部分が似てるかな?と思っていると、意外なところでやり手だったりします。決め台詞は「高円寺はそういう街ですから」(笑)。
そして、もう一組のバンドマンとのカップル、マツとエリ。このうちエリを、長友美聡さんが演じています。もっとも、この二人もカップルではあるけれど、当然社会の中では”ずーっとカップルである”生活はできないわけで、それぞれ違うひとと一緒に手をつないでいたりするシーンも随所に。そして、そういった時のほうが、彼氏彼女ではなく気楽なお話になるせいか、はじけ飛んでいる部分があります。特に美聡さんの場合は、当日記での初登場時がかなりおとなしい役だったからか、観るたびにはじけ飛んでいくように見えます^^
さらには、マユが働いている風俗店の先輩店員であるニーナと、そのお客であるヨコヤマさんの組も、これをあるあるといっていいのかと思うくらい、結構ぶっ飛んだ組み合わせ。強気な女子であるニーナが圧倒しているのですが、最初は風俗店のお客でしかなかったはずのヨコヤマさんが、次第にニーナへ恋心を抱いていく場面がけなげです。逆に、かわいいのに高飛車な言動が災いしてか、まったく彼氏ができないアユ。不思議ちゃん…の範疇なんだろうと思いますが、実に美人さんなだけに、ちょっともったいないなぁ(笑)。ちなみに”ゴリラ”のイメージだそうでして^^結構ぶっ飛んだ演技です。
…と、いただいてきた台本と、観てきた印象とを照らし合わせてきているはず。
だけれども、この舞台、珍しく劇中に撮影OKのシーンがございました。通称“悪夢”のシーン。それぞれの主人公が、本格的にお相手とのやり取りを進めていく前に観てしまうとんでもないシーンを全員で演じています。
スマホカメラですので、多少鮮明ではない部分があるのはご容赦のほどを…
(下北沢編)
(高円寺編)
筆者もこのあたりの写真をツイッターに出しておりましたが、「ずっきゅんずっきゅん…」とはじまるBGMとともに、ここだけまったく毛色が異なる強烈さのせいか、ほかの真面目なシーンがなかなか思い出せません(笑)。
特に、よりよく撮れてた?高円寺編。1枚目でセーラー服姿で腰のあたりをいじっているのは、主役のユミ役の吉田のゆりさん。このひともものすごくきれいなかたですが、”悪夢”の間はご覧の通り(笑)。
2枚目には、ピストルを持った長友美聡さんのお姿もあります。暗い中で黒ずくめの衣装なので多少わかりづらいですが、とうとうサングラスに武器まで持つようになったのね^^。
あ、まじめな方のお写真はこんな感じ。開演前の舞台セットも撮影OKでございました。
(下北沢編:女の子バージョンのお部屋)
(高円寺編:男の子バージョンのお部屋)
そして、前説をされている作者の表情豊さん。気配りも豊かな方でした。
たぶん、それぞれをもう1回観ると、あちこちで展開される筋道がよりつながって見えるんだと思いますが(そこがちと筆者個人的には不完全燃焼…、いや、まだまだツイートのタイムラインで反芻中ですね)、役者さんの発想からスタートしたこの物語を、ちょっと印象度合いは偏ってそうな気はしますけれど(^^ゞ、存分に楽しめたかなと思います。ありがとうございましたぁ。