日本のチャツネはなぜ甘い?
カレーのお供というよりも
カレーの隠し味としてよく使われるチャツネ。
インド料理の“チャトニ”の親戚だというのは
名前からもわかりますが、
(※インド料理のチャトニは味変ソースやディップソースのようなもの)
インドのチャトニが塩っぱいのに対し、
日本のチャツネはスパイスが効いているものの甘いんですよね。
※英語でも発音はチャトニ。正確にはチャッンニーでしょうか。chutneyをカタカナ化する際にチャツネという独特の表記になったのだと思われます。発音を確認した方はこちら。
が、しかし、
インド式ベンガル料理が食べられる町屋の名店
プージャーで料理を食べた時に甘いチャトニが出てきてビックリ!!
はいっ、東インドのベンガルエリアには
甘いチャトニがしっかりと存在するのでした!!
(※ご飯と一緒ではなく食後にパポール【パパド】と一緒に出てきます。)
以前、ブログにまとめましたが、
日本にカレーライスを伝えたのはイギリス。
インドからイギリスに伝わったカレーが
お米で食べる東インド・ベンガル地方のカレーだったので、
イギリスでもお米と食べる料理として定着。
そのカレーが伝わったので
日本のカレーもお米と一緒に食べられているのでした。
ってことで、
チャツネも同じように
ベンガル地方の甘いチャトニがイギリスに伝わり
それが今度は日本にやって来たと考えるのが
妥当なんじゃないかと思っていたんですよね。
実際、日本初のチャツネメーカーで
チャツネを100年以上作っている
ハリマ食品のHPには以下のように書かれていました。
「チャツネとは果物や野菜とスパイスを使ってつくるソース・ジャムのようなものです。インドから、関係の深いイギリスに伝わり世界へと広まりました。」
インド→イギリス→日本という
カレーライスと同じルートだというのは間違いないのでしょう。
さて、ここからがいよいよ本題なのですが、
このほど興味深い新情報を発見することに!!!
チャトニの歴史について書かれた英文記事なのですが
長いので重要部分を抜粋しザッと訳してみます。
※大まかな内容はあっていると思いますが、長文だったので誤訳があるかもしれません。英語が得意な方はリンク先を自分で訳してみましょう。
Finger-lickin'good:インドのチャトニの話
https://indianexpress.com/article/express-sunday-eye/finger-lickin-good-chutney-recipes-5967892/
マハラシュトラにはthecha、ケララにはchammanthi、アーンドラプラデーシュにはpacchadi、タミルナードゥにはthogayalがありますが、時間の経過とともにチャトニという言葉がそれらの総称になりました。これには、食べる前にギーまたは油と混ぜる南インドの様々なpodi(粉末)も含まれます。食品史家Pushpesh Pantは「チャトニ」という言葉は、チャトニをあらゆる味わいにマッチするよう進化させたイギリス人の影響により、広く使われるインドの言葉になったと考えています。
実際、イギリス人は「チャトニ」という用語の範囲を大幅に拡大しました。Hobson-Jobson口語アングロインディアン用語集のチャトニの項では「チャトニはインドやイスラム圏で食べられているレリッシュ(薬味)の類でたくさんの香辛料とフルーツなどによって作られている。その素晴らしさは現在イギリスでもよく知られている。」と説明されています。もちろん、イギリスが介する全てのものと同様に、チャトニもインドから離れた瞬間から別のモノへと変わってしまいました。ケジャリーがキチュリとほとんど共通点がなく、マリガトーニスープがラッサムとはかけ離れているのと同じように、イギリスのチャトニはインドのチャトニとは全く違う物になってしまいました。これはヴィネガーの使用と過度に甘さを強調する点で特に顕著です。
多くの説明によると、このチャトニの最も初期の形態がメジャーグレイズチャトニ(Major Grey’s chutney)であり、現在もさまざまなブランドで販売されています。The Routledge History of Food (2015)によると、このチャトニはインドに旅していたイギリス人将校によって開発されたと考えられています。「この製法は、おそらく1800年代初頭に誕生し、最終的にイギリスの大手食品メーカーであるクロスアンドブラックウェルに売られました」と本は述べています。ニューヨークタイムズの‘Tea and Chutney: 2 Different Greys’というタイトルの作品で(1982年7月10日)、料理評論家のMimi Sheratonは、Major Grey’s chutneyを「Colonel SkinnerやHot Bengal Clubなどのスパイシーなブレンドと比較して、マイルドなチャトニ」と表現しました。彼女は次のように書いています。「本物の製法を主張するCrosse&Blackwellは、とても甘く柔らかくジャムのようです。コーンシロップ、カラメル色素、脱水玉ねぎなどの材料を使ってこの国で作られていますが、これがオリジナルレシピの一部だったのではないかと考えています。」
食の歴史家でコンサルタントのPritha SenはMajor Grey’s chutneyはColonel Skinner's chutneyに影響を受けた可能性が高いと主張。彼女は次のように述べています。「18世紀、James Skinner大佐というイギリス人傭兵が、Skinner’s Horseと呼ばれる独自の連隊を運営し、最終的には最初のベンガル槍騎兵になりました。彼は食通で、さまざまな種類の料理を試しており、生姜、ニンニク、マンゴー、カシミール赤唐辛子を使用してチャトニを発明しました。このチャトニはGrey少佐(Major Grey)を含む多くの人々に影響を与えました。」
このチャトニは、植民地時代にイギリスとインド料理の伝統が互いに影響を与えたことをを示す良い例だとPritha Senは言います。「イギリス人は私たちから“チャトニ”という名前を借りました。ベンガルの人たちは甘いチャトニを作るために、イギリスの甘いジャムに触発されたのです。」ベンガルはイギリスの植民地時代に世界の中心であり、最初の100年間はカルカッタが首都であったことを考えると、この相互影響は驚くべきことではありません。
baataやaumboleような伝統的なベンガルのチャトニはイギリス統治以前からあるものであり、消化を助け、体を冷やし、食材の不要となる部分を使用するなど、多くの目的を果たしていました。しかし、今日私たちが知っている多くのベンガルのチャトニは、トマトのチャトニであろうとお店に売られているパパイヤのチャトニであろうと、植民地時代に開発された可能性が高いとPritha Senは主張します。植民地時代、甘くて酸っぱいチャトニは、トマトのような新しい食材に夢中になった裕福な人々に人気がありました。Senは、「豊かになればなるほど、ドライフルーツのような材料をより多くレシピに追加していた」と述べています。これらのチャトニは、食事の終わりとデザートを食べる前に、口直しとして食されました。
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翻訳部分が少々長くなってしまいましたが、
なんと!ベンガルのあの甘いチャトニは
もともとベンガルにあった土着のチャトニではなく、
イギリスの甘いジャムの影響を受け、
ベンガルのインド人とイギリス人、
双方の影響で誕生したものだったのですね!!!
へぇーー!!面白いなあ!!!!
最後にレシピ動画も貼ってみます。
日本のマンゴーチャツネに似ている
インド・ベンガルスタイルの甘いマンゴーチャトニ。
こちらはイギリス式の甘いマンゴーチャトニのレシピ動画。
日本のチャツネはイギリスのチャトニとも言えますが
東インド・ベンガル地方で食べられている
インド式チャトニの1つでもあると言えますね。
まとめ
日本のチャツネはなぜ甘いのか?の答えは
モデルになったのがイギリスの甘いチャトニだったから。
しかし、そのチャトニはもともとインドにあったものではなく、
インド・ベンガルの地で
イギリスのジャムの影響を受けて誕生したものだった!!
いやー、今回は意外な着地点となり、
調べていて久しぶりにワクワクしちゃいましたね。
丁寧に調べると意外な真実が見えてくる!!
食にまつわる歴史探求は疲れるけど楽しいです。
スパイシ~~♪♪♪
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