前作に引続き、北九州スタートでおおくりします。
2023九州・後編です
今作は、小倉駅を発し、前作でご覧頂いた筑豊地区の東側を通り、福岡/大分の県境・英彦山(ひこさん)の懐を抜け、大分県日田市へ至るJR九州の路線、日田彦山線を取り上げます
今作のカテゴリー分けは"バスブラ"です。なぜ鉄道路線なのにバスブラでやるのか?ですが・
日田彦山線は、九州北部に大きな被害をもたらした2017年の豪雨被害で長期間、一部区間が不通になっていました。
本年(2023)8月、その不通区間がBRT(※バス高速輸送システム)によって6年ぶりに復旧、BRT区間は新たに"ひこぼしライン"として新発足しました
今作では、同線の鉄道区間/BRT化された区間の両方を全線乗り、その現状を実際みていくのと、BRT区間の経由地である福岡県東峰村の美しい風景や、日田の街もチラッとご覧頂きます。
"BRT"という包み紙で装い新たにはしましたが、粗く言ってしまえば『バス転換の一種』である事は否めません。日田彦山線は、どう変貌したのか?では出発です
今作スタートは、↑小倉駅からです。
当別荘過去作で何度も登場している駅ですが、ここからJRに乗る作は意外とこれが初です
市営モノレールが駅のコンコースに突っ込んでいる楽しい小倉駅ですが、モノレールについては2019年の北九州シリーズで書いてますので、今作は日田彦山線に集中します
ひこぼしラインへの切符は、小倉駅券売機で通しで購入できます(※ICカードの場合等は後述)
ホームに降りると、既に↑国鉄型DCの日田彦山線列車が入っていました。開扉を待つ高校生
日豊線と同じホームを使っています。
なお、同線の始発は少々遅めで、途中駅の田川後藤寺行が7:00、これから僕が乗る『鉄道/BRT乗換駅』の添田まで行くのは小倉7:26発が一番列車です(※2023現在)
懐かしの国鉄型ボックス席が並ぶ車内ですが、国鉄型については先月、吉備シリーズの岡山駅作で書いたばかりなので、今作では割愛します
発車しました!
途中の城野駅までは、日豊線を走ります
ここで、日田彦山線の概要を纏めておきます
日田彦山線は城野駅~夜明駅間、約70kmの非電化ローカル線です。福岡~大分の県境を跨ぐ路線です。
実際の運転系統としては小倉~日田間で、小倉~城野間は日豊線、夜明~日田間は久大線と共用しています
うち、鉄道区間が小倉~添田駅までの約40km。
この後みていくBRT区間は添田~夜明(日田)間(※豪雨で不通だった区間)で、約30kmあります
最初の区間が1915(大正4)年開業、前作で取上げた筑豊各線と同様、石炭輸送に活躍しました。日田までの全通は戦後になってからで、かつては急行列車も運転され、亜幹線としての地位を持っていました
大分県の内陸西北端に位置する日田市は、地勢的/経済的に福岡市との繋がりの方が深く、同線による小倉への直通需要は伸び悩みました。
やがて、筑豊炭鉱の閉山、又それによる接続路線の廃止が相次ぎ、ネットワーク性も減少。それでも同線は辛うじてJRへ継承され、生き残りました。
しかし前述の通り、2017年の豪雨被害で添田駅以南の県境地帯で壊滅的な被害をうけ、資金面で復旧の見通しがつかないまま、添田~夜明間の不通が続いていました。
JR九州と自治体の間で協議が重ねられ、軌道敷を一部利用したBRT(※バス高速輸送システム)により、今後もJR九州が運営する事でようやく合意。今夏(2023.8)、全線復旧を果たしました
日豊線との分岐駅、城野駅到着。
↑ホーム向かい側の日豊線電車は、朝の通勤通学客で大混雑
城野駅発車、これからが日田彦山線本番です^
架線が無くなり、いよいよディーゼルカーの威力(?)発揮
1駅目は↑石田駅、離合可能です。
早速対向車が現れる。鉄道区間は朝夕に限り、途中の田川後藤寺駅までは30分毎運転です
なお、石田の次・志井公園駅では、北九州モノレールの終点・企救丘駅と隣接します。
途中、主要駅格の駅は構内が広く、炭鉱時代の名残を感じます。
高校最寄り駅で大量に下車、朝8時なのに車内はガラガラに
同線で、この地域の歴史を一番感じさせる駅名といえば、採銅所駅。古代より、近傍の香春岳で銅の採掘が行われていた事に由来し、東大寺大仏殿の建立にも用いられたそうです。
石炭以前からこの地域には、豊かな地下資源がある事が知られ、石灰石等も産出していました。かつては自治体名"採銅所村"でしたが、昭和大合併で消滅。今はこの駅名が、悠久の歴史を伝えます
次第に沿線は、内陸へ入るにつれ、起伏が出てきます。緑の丘が目に鮮やかです
かつて、旧添田線(※1985年廃止)が分岐していた、香春駅。
この駅も、広い敷地やホームに炭鉱全盛期の残滓を感じます。
次の主要駅は、田川伊田駅。
この駅も広大な構内を有します
同駅で、国鉄伊田線等を引継いだ平成筑豊鉄道と接続します。
前作で登場した直方駅まで繋がっています
前作で容量限界のため載せられなかった↑平成筑豊鉄道のDCです(※平筑直方駅で撮影)
そして、次の主要駅が、現在同線で最も重要な結節点です。
この駅は~
田川後藤寺駅です。ホーム上屋の木柱が昭和の薫りです^
同駅は、筑豊線・新飯塚駅とを結ぶ後藤寺線と接続します。後藤寺線は、"筑豊内完結JR線"で唯一存続している貴重な路線です。
後藤寺駅から先は列車本数が減り、ちょっと寂しさも漂う光景となります
↑国鉄時代の駅名標が今だ残る西添田駅。あと1駅です
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そして~
鉄道区間の終点・添田駅に着きました!
いよいよBRTに乗換です
同駅は、BRT化の際、鉄道/バスの平面(対面)乗換が出来るよう、大改造されました。
鉄道線路は1線に減らし、ホーム向かいはBRT専用となり、線路を外してアスファルト舗装されました。
↑既に、接続のBRT車がスタンバイ
勿論、鉄道/BRT間は、接続を考慮したダイヤになっています
僕も早速、BRTバスに乗換えます
乗換えはスムーズにできる感じに仕上がってます
発車です!
同線BRTは"ひこぼしライン"と愛称が付けられ、地域の期待を背負って新出発しました。ここで改めて、ひこぼしラインの概要を纏めておきます
前述の通り、2017年の災害で不通となっていた、添田~夜明駅間が、本年(2023)、BRTバスとして復旧。
旧軌道敷の一部をバス専用道として整備し、一般道走行との併用で、鉄道の安定性/定時性と、バスが持つ用務先近接性の両方を目指す路線としてスタートしました
鉄道時代と同様、久大線・日田駅まで全便運行されます。
鉄道時代の12駅→停留所36ヶ所へと、乗降所数が3倍になり、運行本数も鉄道時代の約1.5倍へ増便。添田口/日田口の双方から区間運転車も設定され、細やかな輸送サービスを期しています
(※夜明~日田間の久大線並走区間を含む)
あとは、実際乗る中でみていきます
添田駅を出て、まずは一般道へ
ここで、運賃関係について纏めます
起終点の小倉駅/日田駅では、駅の券売機でBRT区間各停~鉄道区間を跨ぐ通し切符も買えます。但し、下関駅等、JR九州外の駅では売っていません
それと、"ICカード"で乗る時は要注意です。
使えるのは『BRT区間内で完結する場合』に限ります
鉄道区間と通しで乗る場合は使えません。なお、BRT車の料金収受機にカードリーダーは無く、乗務員が持つポータブルの読取機で処理するため、少々時間もかかります
BRT内完結なら、一般バスと同様に整理券による現金利用も出来るほか、18キップ等、一部のJR企画券が使えます。乗車前に、自身の行程に合わせた運賃支払方法を調べておく必要があります
駅を出て一般道へ、住宅街に入り・
添田から1駅目が早速、"BRTの真価発揮"の停留所です
『畑川(医院前)』、名の通り、診療所の敷地内に停まります。
県道52号(※八女香春線)を南下していますが、2ヵ所で途中下車します。
まず1駅目は、添田から20分程の"道の駅"です
『歓遊舎ひこさん』停留所です
なお、ひこぼしラインのBRT車は、↑の小型車(※中国製電気バス)が4台、中型路線バス型2台、計6台で運行しています
同名の道の駅に設置された停留所ですが、ここ、鉄道時代から『駅』もありました。現存するとの事なので、降りて確かめたかった場所です
楽譜がデザインされた楽しげな建物。内部はいつもツーリング作で訪ねる全国の道の駅同様、地場野菜等が並んでました
当別荘的に注目なのが、案内図で↑テープで消されている所。
テープで隠されているのは、鉄道時代の『歓遊舎ひこさん駅』です。
駅跡が再利用されているというので、見にいきます
建物の裏手にある、↑"フォレストアドベンチャー"
これが~
元・日田彦山線の駅を改装し、自然と親しむ各種アクティビティが楽しめる施設になっています
↑線路が一部、そのまま残されています。
道の駅歓遊舎ひこさんは2005年にオープン。その3年後に、隣接して走っていた日田彦山線を活かすべく、新駅として開設されましたが、わずか12年の命で不通に
この度、BRTとして復活したという訳です。
-*-*-
再び、次のBRTに乗りますが、この便が大混雑!
↑小型車だと便によってかなり混みます(※特に添田~日田の全線を走る便は注意)
やむを得ず運転席横の最前部に立つ事となりましたが、そのぶん、前面の写真が撮りやすくなり、僕にはかえってラッキーだったかもw
そして~
途中の彦山駅から、↑BRT専用道路へ入ります
専用道区間は、彦山~宝珠山間の、約14kmです
専用道区間は、↑鉄道単線の幅そのもので、バス1台ギリギリの幅員です。2018年upのバスブラ・白棚線バス専用道を思い出す光景です。
専用道区間になると、運転席横の↑タブレット端末画面に"運行許可"の表示が出ます。
専用道ではGPSを利用した信号システムが作動し、ダイヤで定められた駅で離合するよう、鉄道並みの運行管理をしています。
一般道との交差点では"専用道側"に↑遮断バーがあり、BRTが手前で一旦停止してからバーを開く方式です。この辺りはやはり鉄道より弱い点で、まだ歴史が浅いため、BRTの優先度をしっかり明示する法体系が現状では未整備で、鉄道の踏切とは逆にせざるを得ない現状です。
-*-*-
次の途中下車、筑前岩屋駅に着きました
ここは、鉄道駅時代の敷地・駅舎をそのまま使っています。
同駅には、↑離合や折返しも可能な幅員があります
BRT各駅には↑運行状況表示の画面があり、遅延等はリアルタイムで待っている乗客に知らせます。僕が行った日はまだ開業10日程だったので、乗客/運行側双方が不慣れなせいか、各便とも少々遅れがでていました
↑筑前岩屋駅舎。
1997年に改築されたもので、そのままBRTの待合所として使っています
専用道区間のちょうど真ん中、筑前岩屋~宝珠山駅間は、福岡県でも"秘境村"の一つともいわれる、朝倉郡東峰村に位置します。
日田彦山線の復旧を、最も待ち望んでいた地域です。
東峰村は、平成大合併で旧宝珠山村と小石原村が併合して誕生しました。『村+村=村』という、全国的にも珍しいパターンです
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同駅からは、2ヵ所の見所があります
駅近くにも拘らず絶景の棚田がみられる『竹地区の棚田』と、ひこぼしラインのシンボルマークにもなっている『めがね橋』です。
駅前の橋の欄干にも、↑棚田の写真が刷り込まれています
では早速、実物を見にいきます
宝珠山川沿いの道を、北へ進むと~
お~
早速見えてきました!
これは絶景・^
福岡の秘境・東峰村、竹(たけ)地区の棚田です
(※日本の棚田百選指定)
近年は村おこしにも力を入れる同村、↑見晴らしの東屋も
東屋からの眺望は~
これは、一生に一回は見ておくべき風景でしょう^
棚田といえば、2012年の能登ツーリングでの千枚田や、昨年の山口ツーリングで長門市の棚田も訪ねましたが、この竹棚田はまさに、里山に見事溶け込んでいます
思い出に残る、竹棚田の絶景をご覧頂きました^
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一旦岩屋駅まで戻りましたが、今度は竹とは逆、南下していきます。
筑前岩屋~大行司駅間にある、日田彦山線のシンボルとして知られる橋、『めがね橋』を見るため、大行司駅まで1駅歩きます
岩屋駅ホーム上屋は、↑めがね橋のデザイン
ひこぼしラインのマークも、↑めがね橋の意匠です
再び、宝珠山川沿いの道を進むと~
見えてきました!
筑前岩屋~大行司駅間にめがね橋は3つあり、↑は栗木野橋です。
1938(昭和13)年に完成した5連アーチ橋で、その美しい姿は土木遺産/近代化産業遺産に指定されています
現在はBRT専用道へと改修され、橋上は舗装されています。
もうすぐバスが通る時間なので、撮っていきます
↑BRTが橋に近づいてきました!
小さなバスが大きな希望を乗せて、歴史ある橋を軽やかに渡っていきます
3ヵ所の橋ともに、並行する県道から見えます
ここで県道52号は、国道211号と合流します
このあたりが、旧宝珠山村の中心あたりと思われます。東峰村役場もこの近くです。そして、この集落の山際に~
大行司駅があります。
↑駅舎は2017年の豪雨で全壊し、現駅舎は同村が建替えしたものです
駅名に"行司"が付く縁で、↑相撲文字風。
気になって後日調べると、豪雨からの復興を期して、立行司・式守伊之助の揮毫により作成されたとの事です。
BRT乗場(※軌道敷跡)は、↑山の斜面を上がった所にあります
鉄道時代のホームが残されていました。上下線別になっていたので、離合可能だったと思われます。
日田行のBRTに乗ります。
↑初めて中型車に乗れましたw
専用道は、大行司駅の次、宝珠山駅までです。
駅舎を廻り込むように走り、同駅前から一般道へ出ます
宝珠山駅を出るとすぐ、県境を越え大分県に入ります
宝珠山~夜明間には元々、駅は2つでしたが、BRT化後は12停留所へ増加。途中、今山駅では道路から外れて↑鉄道駅跡へ入る場面もありました
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そして・
久大線と合流する、夜明駅(停留所)到着。
鉄道駅は↑写真の左側にありますが、一段高い所にあるため久大線は見えません
夜明駅を出ると、↑筑後川が見えてきます
ここから日田駅まで、久大線並行区間です。
久大線の踏切を渡り、線路の反対側へ。その後・
久大線の駅、光岡駅前へ入って停車
光岡駅の東側で再び踏切を渡りますが、朝夕の一部便はここを渡らず、日田市内で3ヵ所の停留所を経由するルートを通ります
日田市街へ入りました、ゴール近し^
そして・
着きました!
終点・日田駅前です
添田~日田間、全線走り通せば約1時間半ですが、僕はご覧の通り2ヵ所で途中下車したので、半日かかりましたw
↑JR日田駅舎です。
時既に昼過ぎ、夜小倉まで戻る時間を考えると、日田市で滞在できるのは2時間位だけです。大急ぎでプチ街ブラしてみます
駅舎内はJR九州よろしく、水戸岡風。
戻りの切符を買っておきます
待合室は↑ホームが眺められる構造。改札外なので、勿論BRTの待合わせにも使えます
日田には、国重伝建造物等保存地区に指定される古街があります。
↑久大線の北側、豆田町地区です。歩いてみます
筑後川の豊かな水に恵まれ、江戸期には天領として独特の発展を遂げてきた日田の街。残念ながら作容量が逼迫してきたので詳説できませんが、実に趣きある街並でした
↑"天領日田資料館"を見学しました。内部は撮影禁止でしたが、古文書の展示が多数あり、Wo的には大変興味そそられる内容でした^
日田には他にも史料館等が多数あり、いずれここだけで1作つくらないとです^
↑咸宜園跡。儒学者・広瀬淡窓が江戸後期に開いた私塾で、身分に関係なく受け入れ、個性を重視する先進的な教育をしていたとの事。日田の文化的な深みの源が窺える遺跡です。
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名残は尽きませんが、時間となりました!
17時過ぎ、戻りのBRTに乗ります
戻りは添田まで、めがね橋を渡って乗り通します^
英彦山系の稜線に沿って走る、地域の希望輝く彦星・ひこぼしライン
地元の方々の区間利用も多く見受けられ、まずは順調なスタートという感じですが、今後長く走り続けるためには勿論、さらなる改善は必要と思います。
例えば、運賃関係をもう少し鉄道寄りにもっていく必要もあるし、日田市内の"朝夕のみルート"も、ちょっと中途半端な位置付けに感じます。又、全線便については極力中型車を充当するのが望ましいと思います。
添田駅での鉄道/BRT接続のつくりは上手く出来ていると思いますが、現在"どちらかが遅延した場合の接続待ちは原則しない"と謳っており、全線便は約2時間空く時間帯もある中で、このあたりの対応をもう少し検討したほうが安定性がupするでしょう。
添田駅に着くと既に真っ暗、小倉行DCが静かに待っていました
2023秋・九州、筑豊を中心とした北部九州の前後編2作、これでおわります。有難うございました^
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