早朝のJR蒲田駅西口(※↑駅ビル グランデュオ)です^
しかし、今作の主役はJRではなく・
JR駅ビルにくっついている、↑東急蒲田駅のビルです。
東急も独自の蒲田駅ビルを持っていて、その2Fに東急駅が入っています
今作の主役は、この駅から出ている”東急池上線”です
・この日、東急池上線で【首都圏の鉄道で初の試み】が行われました。その様子をご覧頂きます
東急蒲田駅・↑改札口です。
予備知識無しで初めてこの駅へ来た人は、「お~、東急にはこんな終端駅もあったのか・」という感想を持たれる駅だと思います。
僕も上京して初めて見た時そう思ったんですが、終端式串型ホームを4線持つ、堂々たるターミナル駅の風格です
同駅から、東急の”プチ路線”である池上線&多摩川線の2つが発着していますが、今作で取上げるのは、そのうちの池上線です
早朝の駅には、↑『池上線のフリー乗車券を配ってます!』と大書した看板を持ったスタッフが・
前述の【首都圏鉄道初の試み】とは、『池上線全線無料で一日乗り放題!』という、東急では前代未聞のイベントが、この日実施されたんです
今年(2017)、全通90周年を迎えた池上線を記念して、お堅いイメージもあるアノ東急が、度肝を抜く企画を断行したんです。
この日10/9(祝日)、通勤通学に影響少ない日を選んだとはいえ、はたして無事実行出来るのか、老婆心ながら少々心配でもありました。
僕は、前月にこの企画が発表された時、下記の2つの心配が頭をよぎりました。
▽1つ目は、『人口が密集する都内で丸1日、こんな企画がホントに完遂しきれるのか?』です
地方私鉄やバス会社ではこの手の企画を時たま聞きますが、ここは東京です。第一、沿線人口が段違いです
池上線の電車はわずか3両編成で、ホーム長もそれに合わせた駅なので首都圏にしては小さく、いかに増発したとしてもイベントを知った多数の人が関東各地から殺到し、キャパオーバーになって各駅が大混乱に陥ったらどうするんだろう?というのがまず1つ目の心配
▽そして2つ目、『他線と池上線を通しで乗継ぐ乗客に対する運賃収受はどうするのか?』
他線とは相互乗入しておらず、独立してやってるような池上線ですが、前出の蒲田駅では多摩川線と共通の構内だし、途中の旗の台駅で大井町線と接続しています。東横線や田園都市線ともちゃんと改札内で繋がっているんです。
僕は『蒲田駅は半分で仕切って、池上線寄りの改札機にはカバーを被せて自由に通らせるのかな?』とも一瞬思いましたが、じゃあ乗換通路が多く、通路も狭隘な旗の台駅ではどうするのか?という事になります。
しかし、結論からいうと僕の上記の心配は全く杞憂で、イベントは大きな混乱もなく、見事完遂されました。さすがは東急です^
東急が採った方策は、以下の通りです。
・まず2つ目の疑問からですが、『フリー乗車券方式』を採りました。
改札機は生かしたままで、↑の特別フリー切符を、改札付近に多数配置されたスタッフが声をかけ、手配りで配布
他線へ乗継ぐ場合は、着駅でこのフリー券を精算機へ投入、差額だけ支払えばOKというシステムです。
しかも、配布係員の方々は”しぶしぶ授与”という感じでなく、積極的に声を掛けて配りまくってました。
『どうせやるなら腹を決めて思い切りやろう』という東急の意気込みのようなものも感じられました
(※1つ目の心配は、今作さいごまでご覧下さい^)
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頂いた"フリー一日乗車券"で改札内へ
ホーム終端部には↑、沿線の池上本門寺でこの時期行われる”お会式”で登場する万灯飾りを模した飾りも(※お会式については、後日行って撮ってきた写真を末尾に掲載します)
↑五反田行の電車が入ってきました!
まずは蒲田~五反田の全線をザ~っと乗り通し、その後復路で、何駅か途中下車してみたいと思います
・なお、この日はバスブラや九州シリーズでブレーンとなってくれてる同僚『写真に写ると魂が抜ける氏』(略称:写魂氏)が同行してくれています。早朝集合にしたのは、2人とも午後から予定があるのと、日中大混雑になるだろうから、その前に乗ってしまおうという訳です
発車しました!
東急蒲田駅から内陸側に向かって出ますが、駅から100m程だけ、多摩川線と並走します。両線とも複線なので、ほんのわずかですが、阪急の梅田~十三間のような”線区別複々線”なんですw
ここで池上線の概要ですが、1928(昭和3)年全通、"池上電気鉄道"によって開業されました。
後年東急に合併され、同社の一路線となります。
蒲田~五反田駅間、10.9kmを結んでいます。(※東急全体の歴史については、一昨年の作『田園都市線全線走破』(15.5.6up vol.195)を参照下さい
同線の電車は全て3両編成、ワンマン運転で各駅停車のみのダイヤです。この日はイベントのため特別増発されており、対向車と頻繁にスライドします
駅は全15駅、駅間距離は短く、のんびり停まりまがら五反田へ向かっていきます
↑の駅もですが、ホーム上屋は今だに開業当時を思わせる木造のままの駅も多く(2017当時)、味わいがあります^
なお、↑の写真、ホームドアがあるのかな?とも見えると思いますが、池上線はワンマン化されてますがホームドアは無く、ホームドアのように見えるのはホーム端に渡してあるセンサーで、万一転落等があった時発報する仕組みになっています
いわば、"エアホームドア"(?)です^
開業当時からの木造駅もある一方、一部区間で↑半地下化のように改造された箇所もあります(※荏原中延駅付近等)
蒲田を出発した時には乗客まばらでしたが、五反田に近づくにつれ次第に増えていき、祝日早朝なのにほぼ満員に
僕池上線に乗るのは久々で、普段使ってないので、通常の祝日早朝にどれ位乗ってるのかはわかりませんが、鉄分アリの人もチラホラ乗っており、明らかに"無料効果"は出ていると思います
終点ひとつ前の↑大崎広小路駅、無事定刻に到着。
そして・
蒲田から約25分、終点・五反田駅へ進入
五反田駅到着、満員の車内から全員が吐き出されます
写真撮ってる鉄ちゃんもチラホラ
山手線と接続しているので、平日朝はこれどころでない大変な通勤ラッシュになる駅です
池上線、なんせ”3両編成”と、都内の鉄道としては破格の短さのため、大量の乗客を捌くには本数を精一杯増やすしかなく、↑時刻表の通り平日朝は最大2分30秒間隔、昼間でも6分ヘッドで運転されています。
この日は無料イベントのため、日祝用のほうには『本日臨時ダイヤで運転』との貼紙。いよいよこれからの時間、沢山のイベント目当ての人々が乗りに来る時間帯です
はたして池上線、前代未聞のイベントを無事走りきれるのか?
まだ"嵐の前の静けさ"の、↑朝の五反田駅です
東急五反田駅は、↑JR線の上を跨いでいます。
開業時からこうなっていたといい、これは当時の池上電気鉄道が、五反田からさらに、都心方面への延伸を画策していたからだそうです。
しかし他鉄道とのせめぎ合いの中実現せず、やがて会社自体も東急へ吸収合併され、”幻の計画”におわりました
(※五反田から都心への鉄道は、都営浅草線の開業により実現しました)
五反田駅も、蒲田駅同様に東急のもつ駅ビルの中に入っていて、改札口もちょっと狭めな感じ
JR山手線に直接入れる、連絡改札もあります
↑東急五反田駅ビルはJR駅の品川寄りにあり、駅は4Fです。
東急ビル側から見る、↑JR山手線
美味しい食べ物屋さんも沢山ある五反田界隈ですが、今作は池上線ですので、街ブラは又の機会に譲ります^;;
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五反田→蒲田への復路です
復路は、数駅に途中下車しながら行ってみたいと思います。
駅に戻ると待っていたのは、↑同線で最新型の7000系電車^
↑半流線形の前面が、池上線のイメージを一新しました
内部は↑、角に丸みを持たせた窓と、木目模様の壁紙、なんか関西の阪急電車と似た雰囲気も感じます。
東急を創業した五島家は、阪急電鉄の創業者・小林一三と密接な関係にありました。鉄道の規格は両社大きく違いますが、沿線を高級住宅地として開発していく手法や、沿線イメージを極めて重視する姿勢は阪急と同じで、この電車の車内デザインも偶然のものではないと思います^
蒲田へ、発車しました
まず途中下車したのは、線名の由来ともなっている池上駅です。
この駅もホーム上屋が木造で(2017当時)、味わいがあります^
駅前には、↑池上本門寺の看板が
池上線は元々、本門寺への参詣客輸送を目的の一つとして敷設されました。
これから、この池上本門寺を訪ねます^
池上は、大田区のほぼ中央に位置します。
駅前には小規模ながらバスターミナルがあり、JR大森・品川等へ東急バスが出ています
駅から本門寺までは5~600m位あり、何ヵ所か曲がる所がありますが、本門寺通りの商店街を辿るように歩けば、迷わず行けます
お店が途切れると、”南無妙法蓮華経”の石碑が・
ご存じの通り、池上本門寺は日蓮宗の本山です。
日蓮上人入滅の地は、この池上です。
総門(山門)が見えてきました。
本門寺は、↑の門の奥、小高い丘にあります
総門の横には、日蓮宗の本部ともいえる宗務院と、なぜか区立の小学校がピタッとくっついています
そして当別荘恒例w、↑石段登り
丘の上に建つ、大堂(本堂)
先の大戦で焼失し、戦後再建されたものです。
ここの絵馬は、桜の花の形
日蓮入滅の際、秋にもかかわらず桜が咲いたとの逸話からとの事です。
大堂の内部は撮影禁止でしたが、祖師像(日蓮聖人尊像)を安置しています。僧侶の勤行の声が響きわたっていました。
この池上線無料デーの三日後に行われた同寺最大のイベント、『お会式』にも行ってきたので、今作ラストに付録として掲載します
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再び池上線に乗り、次の下車駅は・
洗足池(せんぞくいけ)駅です。
逆光ですみませんが、この駅は都心から川崎市方面へ延びる、中原街道に面しています
池の正面にある建物、↑なにやら朝から大行列が
この建物、池の正面にある貸しボートのセンターで、この日の池上線無料デーに協賛して、一日券呈示で洗足池名物のスワンボート等貸ボートを無料にするとの事。
営業開始前から長い列をつくっていました
僕と写魂氏は、男2人でボートに乗ってもしょうがないので(笑)、池の周囲を一周してみます。
洗足池、周囲を1周歩くと20分位の大きな池で、水源は湧水、独立した池としては大田区で一番大きいと思われます。
というか、都内に池なんてそんなに無く、貴重な存在です
元来このあたりの地名は、読みが同じで字が違う『千束』で、名の由来は諸説あるんですが、日蓮がここで足を洗ったからという伝承もあるとか
昔は農業用水に利用されたようですが、現在は都会のオアシスとして、大田区民の憩いの場となっています
勝海舟も一時ここに居を構えていたとか
(※2023追記:後年当地に、勝海舟記念館がオープンしました)
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次の立寄り駅は鉄分全開でいきますがw、車庫のある雪が谷大塚駅へ向かいます^
池上線では珍しく、駅舎が線路を跨ぐ橋上駅の雪が谷大塚
この駅の蒲田方に車庫があります。
池上線・多摩川線の全車はここの所属です。車庫内は一般見学出来ないので、↑踏切から望遠で撮ります^
車庫の周辺でしばし鉄ちゃんw
池上線の電車は現在、大まかに分けて3タイプあります。
↑は、東横や田園都市線の中古等の、赤帯を巻いたちょっと古いタイプ
2タイプ目は、↑その古い車を改造し、内装や表示器等を今風に改造している『緑帯』の電車、最近増えてきました
そして3タイプ目が、先程五反田駅でもお目にかかった新造車・7000系です^
雪谷で鉄ちゃんしてると、↑レアな特別塗装車も通りました。
1編成だけある、昔の塗色を再現した電車、側面には”T.K.K”と昭和期の同社ロゴが書かれています
駅に戻ると、東急の公式ゆるキャラ『のるるん』がいましたw
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途中下車ラストは、↑戸越銀座駅です。近年、↑ホーム上屋を暖かみのある木造に改修し、いい感じです^
ご存じ、この駅を降りると都内有数の長い商店街、戸越銀座があります
普段から買い物客で賑う駅ですが、時刻既にお昼前、だんだん凄い人になってきました
前述の通り僕池上線に乗るのは久々だったんですが、先程の上屋と共に、駅舎もレトロ風に改装されていて、なんか水戸岡デザインっぽいです(?)
端から端まで数キロはあろうと思われる細長~い商店街、戸越銀座を写魂氏と歩きます^
洗足池では"貸ボート無料企画"やってましたが、ここ戸越銀座でも池上線イベントとコラボした企画をやってる店があり、特にここの名物・コロッケの無料券は大人気で、やってる店の前には長蛇の列
蒲田ではちょっと有名なお店、↑『ドッキリカメラのキシフォート』、戸越銀座にもあります
店名の通り、かつては写真・DPEの店だったそうですが、現在の戸越銀座店では食品を主に売ってました
踏切待ちの人々が↑ダンゴ状態💦
お昼になってくるにつれ、ますます増えてくる人波、池上線、大丈夫か!?(汗笑)
駅に戻ると、やはり数分の遅れが発生していました。
↑ホームには人が溢れ、発着する電車は超満員、でもしっかり運転されてましたし、駅頭では一日無料券も配り続けてました^
再び五反田駅まで来ましたが、↑ご覧の通り、立錐の余地もない大混雑!
しかし多数の係員(本社から応援?)が整理に努めていて、混乱もなく捌いていました。がんばれ、東急^
・この後、五反田で写魂氏と食事した後解散し、午後別の所用をしてたんですが、やはり池上線の”その後”が気になりw、帰宅前、夜の蒲田駅へ再び寄ってみました
無料イベント、ちゃんと継続していました。
スタッフが声を枯らして無料券も配り続けていました。無事、予定通り一日貫徹したようです。東急は『本気』でした
ただ、日中はかなり混乱もしたようで、ダイヤは夜になっても乱れが続いたようです。
↑の蒲田駅ホーム出発案内板、多摩川線は正常運転で時刻表示があるのに、池上線は発車案内は消されていました(※運転されています)
・しかし、なぜ普段お堅い東急が、こんな思い切った企画を実施したのか・
報道等によれば『東横線や田園都市線に比べ、池上線の知名度が低いので、認知度upのため』が主目的だったそうです。
当日はTVやネット等でも大きく取り上げられ、まぁ目的は達成できたのではないでしょうか^^
池上線の【熱い一日】が無事おわりました
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今作ラストに、この無料デーの3日後に本門寺で行われた『お会式』の模様を撮ってきたので、ご覧下さい
場面かわって10/12の夜、池上駅です。
さきの無料デーで賑ったばかりの池上線、そのわずか3日後に、又沢山の人が駅に溢れています。
池上本門寺の祭礼、『お会式』の日です^
駅を降りたら、もう既に始まってました
↑『万灯』と呼ばれる、造花と提灯で華やかに飾られた屋台が、次々と駅前を練り歩いています
万灯は、全国の系列寺院から集まった『講中』という信者さんの集団が担ぎ、数十台はあるとの事です。
しかし凄い人、そして華やかな雰囲気です
普段は生活道路の池上界隈も、夜店と人波で埋め尽くされています
鮮やかな万灯練を見ながら思ったんですが、こういう『構造物を担いで街中を練り歩く』という祭は、ふつう”神社”が行っていると思うんです。”お寺”が、こういうタイプの祭礼を行うって珍しいと思います
万灯練のルートは、駅前から本門寺へ向かいます。
万灯は、石段を上がり、大殿へ
大殿前に到着した万灯、担いでいた講中の人々は大殿内へ入り唱題して参詣していました。
実は僕、上京してこの大田に住み約10年になりますが、お会式をみるの今回が初めてです。今回の池上線無料企画がきっかけを与えてくれました
3日前の無料デーに続き、この日も池上線は臨時増発。
池上線はこれからも、"都会のローカル線"として、大田・品川区民に親しまれながら、元気に走り続けるに違いありません^
(※2023.7 文一部修正)