2015・秋のツーリング、岐阜県中部の『中濃』地域を走ってきました
旧美濃と飛騨の2国からなる、広大な岐阜県(※面積全国47都道府県中7位)ですが、その真ん中あたり、岐阜市から北方に広がる濃尾平野に位置するのが中濃地域です
都内から約8時間半(休憩時間込)走り、東海北陸道・美濃ICで降ります
去る8月にupしたvol.202、飛騨ツーリングでも登場した高速です
前回は飛騨、今回は美濃、なぜか今年は岐阜づいています
ICを出ると、岐阜県を南北に貫く国道156号(※通称イチコロ^)、
↑標識には、夏の飛騨ツーリングで訪ねた白川郷まで110kmと出ています
秋空が美しい、中濃の主要都市の一つ、美濃市へ入りました。
↑”和紙とうだつのまち”と看板に書かれていますが、どんな街なのか、これから訪ねます^
市街中心部は後程訪ねるとして、まずは美濃市にある『駅』を2ヵ所訪ねます^
↑1ヵ所目、街外れの古びた平屋建ての駅、ここは~
長良川鉄道・美濃市駅です
1923(大正12)年に開通した国鉄越美南線を引き継いで発足した第3セクター・長良川鉄道の駅です。
ここからさらに、盆踊りで有名な郡上八幡を経て、福井県境の北濃駅まで全長約70km、国鉄転換の3セク路線としては長距離の部類です。この美濃市駅は開業当時から残る歴史ある駅舎で、国有形文化財に指定されています
かつては賑やかだったろう駅前、現在は人影もまばら、↑駅前に残る、元店舗だった自販機コーナーの屋号"越美"に国鉄時代の名残を感じます
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”旧”の名の通り、現在この駅は使われていません。
1999年に廃止された、名鉄美濃町線の終点でした。
駅舎と車両が保存されています。
内部見学できるとの事なので、おじゃまします
改札のむこうに、今にも動き出しそうな電車が見えます
ホームは3線あり、2両の車両が保存してありました。
路電スタイルの車両です。
旧美濃町線は岐阜市内の一部が道路上の併用軌道だったため、路面電車型の車両で運行されていました。
↑は601号車(※1970年製)、現在の名鉄電車の塗色と同じで、近年まで現役だった事を偲ばせます
待合室に掲示していた時刻表を見ると、日中40分毎ダイヤ(※廃止時)だったとの事。路電1両のキャパで、そのダイヤで間に合うのであれば、鉄路でなくてもバスで充分代替可能、という事で廃止されてしまったようです
↑車体は原型をとどめていますが、座席は残念ながら取り払われていました。代り(?)にベンチが置かれています
現役の頃はなんと、転換クロスシート(!)が配置されていたそうです
運転台から見ると、↑途切れた線路の先は道路になっていました。
かつてはここから岐阜市内の路面区間を経て、現在の名鉄岐阜駅まで線路は続いていました
ホーム端、601号の隣にもう1両、↑頭の部分だけ置いてありました。清掃用品の倉庫に使われています
もう1両の保存車、↑1957(昭和32)年製の593号
こちらは塗色が“名鉄色”ではなく、緑とクリーム色の独自色です。
まさに"昭和の路面電車"の雰囲気です
593号は車外・車内とも原型をとどめ、↑座席も残っていました。
↑西日本の私鉄で時々見かける『お守り札』や、消毒済表等がそのまま残されていました。
1923(大正12)年開通、そして1999(平成11)年の廃止まで、70年以上にわたり地域の人々を見つめてきた鉄路。役目を終えた現在は地元の方々の努力によって保存され、思い出を伝える場所となっています
この駅、駅事務室だった部屋が面白いことになっていました。
店内には↑使われてない“初代・電車でGo!”や、写真に写ってませんがデュークボックスが置かれ、昭和歌謡が流れてました
ちなみにこの旧美濃駅、昼間は管理のおじさんが常駐し、改札では鉄道グッズも売っています
構内見学を終え、改めて待合室内に貼ってる車両一覧を見ていると、駅ホームにはなかった車両が。
軽快なツートンカラーがきれいな↑『512号車』
レトロな流線型の前面は、6月にupした片上鉄道のディーゼルカーと似た印象もあります。
添付文を読むとこの車両、つい最近までここ美濃駅にあったそうですですが、ここから約20km余り西の揖斐郡大野町へ1年間貸し出されているとの事
というのは、大野町にもこの美濃線を同じ、郊外路電路線の揖斐線があったんですが、2005年廃止となっています。
その終点だった黒野駅跡に最近『黒野レールパーク』という公園が出来て、そこへ貸出されているらしいです
現地でこの情報を知った僕は、即"これは行かなきゃ!"と思い、美濃市見学後、急遽行く事にしました
鉄道遺産が地元で愛されている街、ここ、岐阜にもありました
大野町へ走る前に、美濃市の中心部、"うだつと和紙の街並"を歩きます
旧市街の周囲には、↑数ヶ所駐車場が整備されています
古街の入口までやってきました
お~
電柱が地中化されている、素晴らしい街並が現れました
↑家の屋根には『うだつ』が見られます
家の屋根の両端、上から道路側へ、瓦屋根を縁取るように縦におりてきている出っ張り、これが"うだつ"です。
かつては日本全国の家屋に見られたという事ですが、現在うだつが最もまとまって残っている街は、ここ美濃だそうです
うだつが家並に連続してみられる貴重で美しい光景、美濃市が誇る"うだつの街並"です
↑は駐車場に掲出していた旧市街の地図ですが、うだつ家がある中心部の街路が漢字の"目"のような事から、“目の字通り”とも呼ばれているそうです
うだつの街並には、店舗も沢山ありました。
↑は造り酒屋の『小坂家』、この街の家屋で唯一国重文に指定されています。1772年(江戸中期)築と伝わります。街全体も、国の重伝建築物保存地区に指定されています
それと、↑小坂家の屋根、よく観察すると、少しふくらんでいる感じがします。
この屋根の膨らみ、”むくり”といい、美濃のうだつ家の中でも少数の家でしか見られない独特のものだそうです。緩やかな曲線が優美さと気品を加えている感じもします
このうだつ、家の格式や富を表す装飾の意味もありますが、元々は、隣家との防火壁の役目から発達したものだそうです
ご存じ、”うだつの上がらない男”という慣用句、ふがいない男を指す例え(グサッ^)ですが、その語源です
うだつの上がらない男が訪ねてきた、うだつの街です
写真前後しますが小坂酒店の店内、置いてある日本酒はすべて自家醸造、まさに"地酒"です
↑”美濃の地酒”の文字、まさに“ヘタウマ”、お酒も文字も味わいが大切^
一方、うだつの街並中には地元の人々が居住して生活する家も多くあり、店舗も↑観光関係なしのお店も沢山ありました^
又、美濃市のもうひとつの名産として、和紙の里でもあります。
美濃は昔から和紙づくりが盛んで、扱うお店をあちこちに見掛けます
日本に和紙の産地は数々あれど、美濃紙は”別格”といわれます。
埼玉の細川紙・島根の石州半紙と共に、世界遺産に認定された”プレミアム和紙”です
和紙ギャラリーもあり、単に『書道紙』の用途にとどまらず、工芸品など様々なアートに変身していました。見事な彩色にも目を見張りました。さすが世界遺産
地元の生活と観光が混然となっているのが美濃の魅力だと思います。そして先程ご覧頂いた愛すべき鉄道遺産、“岐阜の宝石”と呼びたい程の美濃市です
次に、同市郊外にある”名物橋”を見るため、市街の西側を流れる長良川沿いへ向かいます
長良川のたもとに来ました。
ここに、我が国最古の吊り橋があるんです
『美濃橋』です(※国重文・土木遺産)
徳島の“祖谷のかずら橋”とかは別として、近代建築で造られた日本最初の吊り橋だそうです
1916(大正5)年完成、長さ110m、現在は歩行者・自転車専用になっています
Woも渡ってみます
端の入口には、↑渡橋人数制限『一度に20人まで』。
掲示には”大正5年に架けられたので、老朽化しており危険”と書かれています
↑木製の路面^
橋の上に20人いない事を確かめ、渡橋します
少しゆらゆらとしますが、でも不安感なくしっかりした渡り心地です
美濃橋から見た長良川
川辺でキャンプする人、渓流釣りをする人が見られます。
なんともうらやましい環境です
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ネタ豊富だった美濃市をあとに、濃尾平野を西へ走ります
木曽三川等、大河が多い岐阜県ですが、揖斐川の支流・根尾川を渡って揖斐郡大野町へ入ります
冒頭、旧名鉄美濃駅で知った『黒野レールパーク』へこれから訪ねます
街はずれの住宅地の中にあった小さな公園に・
ありました!
美濃駅で見た写真の、名鉄512号車です
ここが、かつて名鉄揖斐線・谷汲線が走っていた黒野駅跡です。
これは見事、ほぼ完璧な状態の車体でした。
1926(大正15)年製、レトロな中に機能美も感じられます。
路電車両の傑作といっても過言ではないと思います
ホーム屋根には、↑”おかえりなさい”の文字が。
冒頭前述しましたが、1年間限定で冒頭の美濃町駅から貸し出されているそうです。
かつてはこの黒野駅、岐阜市内から延びる名鉄揖斐線と、この黒野で分岐する谷汲線のターミナルでした。
両線とも2005(平成17)年廃止、512号は先に保存駅となった美濃町駅に運ばれて余生を過ごしていましたが、昨年この黒野駅でも保存改装が完成したため、おひろめで”里帰り”したとの事です
駅周辺を歩いてみると、↑廃線跡が確認できる所もありました(※2015当時)
↑駅舎(※おそらく復元)は『黒野駅ミュージアム』として、内部は当時の写真・模型コーナーもあるほか、焼きたてパン店が入っています
濃尾平野をトコトコ走っていた郊外路面電車、旧名鉄の揖斐/谷汲/美濃町線。惜しくも廃止された貴重な遺産を保存しようとする地元の熱意にはホント敬服します。
そしてこの黒野で、又々新しい情報を仕入れました^
美濃・黒野につづき、この中濃でもう1ヶ所、名鉄廃駅を保存している所があるそうです。
こんな感じで、”芋づる式”に現地で情報を得て訪ねていくのも旅の醍醐味と思います^
その”3ヶ所目”は、次作で掲載します^
その"3ヶ所目"に行く途中にあった、大野町の隣、本巣市にある樽見鉄道・木知原(こちぼら)駅です。
樽見鉄道は、旧国鉄樽見線を転換した第3セクターです。
冒頭の美濃市で長良川鉄道の駅に寄りましたが、岐阜県には他にも大垣~揖斐川町を結ぶ養老鉄道もあり、濃尾平野って実は、鉄道インフラがかなり充実している地域です
濃尾平野をさらに奥へ、Wo号は走ります
今作ここまでです!
次作・シリーズ2回目では、”3ヵ所目の駅”のほか、大きなお寺も訪ねます。お楽しみに
(※2023.3 2024.7 文一部修正)