嫌いなフレーズがある。
どうしても納得できない考え方がある。
『お客様は、“神様”です』
商売において、この考え方が基本のように言われているが、
私は、そうは思わない。
『お客様は、“人間”です』
このほうが、よほどしっくりきます。
商売の基本は、「交換」にある。
一般的には、何かを与える代わりに、金銭をいただく行為。
その何かが、物であったり、サービスであったりする。
単純に言ってしまえば、古代の「物々交換」と何も変わらない。
ボランティア活動だって、「商売」と同じ。
いただく「金銭」が、「満足感」に置き換わるだけ。
金銭を得ることで満足感を満たすのか、直接、満足感を得るのかの違い。
ボランティア活動がすばらしいとは思わない。
それは、与える側にもメリットが存在する行為だから。
与えられる人がいて、初めてボランティアは成り立つ。
つまり、どんな善意も受け取る対象がなければ、それの成就しないってこと。
だから私は、ボランティア活動をする人を、否定もしないし、尊敬もしない。
それは、商売をしている人と、基本は同じだと考えているから。
人と人の間での、物々交換。
これが、商売のすべて。
だから、この関係において“神様”扱いなんて、したくないし、されたくない。
何でもかんでも、わがままを聞くのが、商売人の使命だなんて思わない。
何でもかんでも、わがままを言うのが、お客としての権利だとも思わない。
わがままを聞きすぎるのは、反対にお客さんをバカにしている行為だと思う。
わがままを言い過ぎるのは、人間として“ダサい”行為だと思う。
どちらも人間であるのだから、心遣いが必要。
それが、文化なのだし、人間の英知であるはず。
それを否定してしまう行為は、人として美しくないものです。
日本の企業の弱点は、お客様のニーズに、こだわり過ぎると、
指摘する外国の企業家がいました。
例を挙げれば、競泳水着。
日本のメーカーは、選手の要望である「着心地」を最優先に開発してきました。
しかし、いま世界中の選手が採用している水着は「着心地」が最悪。
きつ過ぎて一人で着れないし、着るのにも時間がかかる。
でも、速く泳げる。
その機能だけに特化した、水着。
選手の意見より、水着に求められている本質に着目した商品。
『お客様は、“神様”です』という精神では、
あのレーザー・レーサーという水着は開発できなかったでしょう。
『お客様は、“人間”です』
この感覚を、私は大切にしたい。
“人間”相手だからこそ、真剣に向き合える。
お客さんを“神様”扱いしてしまうと、
真剣に向き合う気が起こらないのではないでしょうか。