2023年に通年で、1987〜1993年の間に運転開始されたドイツ・オーストリアを走るユーロシティの歴史を振り返りました。その参考にしたのが、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenというドイツ語本であり、この続編がDie EuroCity-Zuege: Teil 2: 1993 bis 2020 として出版されています。そのため、引き続き私の後学、備忘を兼ねて原文訳を補足しながらまとめていきます。位置づけは前回に続き第2編となります。

 

第2編の7回目は、を取り上げます。

EC 116/117 Salzach

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 

(以下本文を参照に日本語訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

全長225kmのザルツァッハ川は、イン川の最も重要な支流。アルプスで最も大きな川のひとつである。源流はキッツビューエル・アルプスにあり、ハイミングの近くでイン川に注ぐ。

 

ユーロシティ マックス・ラインハルト号の項で述べたように、マックス・ラインハルト号2002年12月14日でその名称を失い、2002年12月15日からEC 116/117と改称され運行が継続。タウルスと呼ばれるÖBB-1116型電気機関車牽引のÖBB客車編成のEC116は、ウィーン西駅発6:00とマックス・ラインハルト号のダイヤを引き継ぐ。途中、ザンクト・ペルテン、アムシュテッテン、リンツ、ヴェルス、アットナング・プッフハイム、ザルツブルク中央駅に途中停車し、ミュンヘン中央駅着10:33。つまり、所要時間4時間33分、走行距離466km、表定速度は103km/hに達した。

 

逆方向のEC117は、ミュンヘン中央駅を1時間早い17:25に出発し、ウィーン西駅着22:05(表定速度100km/h)。EC 116とは対照的に、アムシュテッテンとアットナング・プッフハイムは通過、代わりにウィーン・ヒュッテルドルフ駅に停車した。

 

EC 116/117のÖBB客車編成は、他のインターシティ/ユーロシティ列車や快速列車を含む2日間の客車ローテーションで運行された(以下の通り)

 

1日目

・EC 116 ウィーン西駅発6:00 → ミュンヘン中央駅着10:33

・EC 113 ミマラ号 ミュンヘン中央駅発11:26 → クラーゲンフルト中央駅着16:22

・EC 110 クラーゲンフルト中央駅発17:26 → ミュンヘン中央駅着22:34

・RE 31025 (快速列車!!)  ミュンヘン中央駅発23:50 → ザルツブルク中央駅着1:46

 

2日目

・IC790 ザルツブルク中央駅発7:13 → クラーゲンフルト中央駅着10:22

・EC112 ミマラ号 クラーゲンフルト中央駅発11:26 → ミュンヘン中央駅着16:35

・EC117  ミュンヘン中央駅発17:25  → ウィーン西駅着22:05

 

2004年ダイヤ改正(2003年12月14日)で、EC116のウィーン西駅発車時刻が14分繰り下げられたが、従来の途中停車駅であったアムシュテッテン、ヴェルス、アットナング・プッフハイムを通過することで、ミュンヘン到着時刻を維持。その結果、表定速度は108km/hと大幅に向上。しかし、2004年12月12日からは、ローゼンハイムに追加で途中停車することで、所要時間は再び4時間26分に増加(ウィーン発6:07→ミュンヘン着10:33、表定速度105km/h)。一方のEC117は新たにトラウンシュタインに途中停車することになったが、所要時間への影響は軽微(ミュンヘン発17:23→ウィーン着22:05)。

 

2005年12月11日より、リンツ〜ザンクト・ペルテン間のヴェストバーン線が順次拡大され、2006年ダイヤでのサービスはさらに改善される: EC116の所要時間は4時間14分(表定速度110km/h)に短縮。EC117の所要時間は4時間20分に短縮され、ヴェルス中央駅とウィーン・ヒュッテルドルフ駅は通過となった。

 

2006年12月10日に施行される2007年ダイヤから、EC116/117は運転区間はウィーン〜ミュンヘン間はそのままにICE116/117(2008年12月14日からはICE260/261)となり、DB/ÖBB共同保有411系ICE-T列車に変更された(EC116/117は一旦消滅)。ウィーン西駅からザルツブルク中央駅を結ぶICE116は、オーストリア内を走るICE562 ザンクト・アントン・アム・アールベルク号(ウィーン西駅~ブレゲンツ間)と併結運転された。なお、両列車がザルツブルクでの分割後もローゼンハイムの手前までは同じルートを通る。しかし、反対方向のICE117では、2列車は別々のダイヤで約2時間半の離れてで運行される。

 

2008年12月14日より、EC117(土曜日除く毎日運転、対向列車が運休時も!)は、フランクフルト中央駅〜クラーゲンフルト中央駅間を結ぶユーロシティとして復活。EC117は、EC114/115とEC390/391を含む車両運用ローテーションに組み込まれた。DB-101型電気機関車が牽引するDBプッシュプル編成で、フランクフルト中央駅発14:20、途中、シュトゥットガルト中央駅(15:53着/15:58発)とミュンヘン中央駅(18:15着/18:20発)で方向転換する。ヴァイト、ドルフガスタイン、バード・ホフガスタイン、バード・ガスタイン、マルニッツ・オーバーフェラッハ、シュピッタル、パターニオン・ファイストリッツ、フィラッハ中央駅、フェルデン・アム・ヴェルターゼー、ペルトシャッハ・アム・ヴェルターゼー、クルンペンドルフに途中停車し、終点クラーゲンフルト中央駅着23:17。29の途中停車駅があるにもかかわらず、EC117の表定速度は89km/h、走行距離793kmを所要時間8時間57分で結んでいる。

 

その後2017年12月10日からEC117にはザルツァッハ号という列車愛称がついたものの、運行時刻は全く変更なし。ただし、2019年8月10日から9月29日までの土日は工事の影響で北側の発着駅がダルムシュタット中央駅となり、2020年4月11日から10月31日まではミュンヘン~クラーゲンフルト間のみの運行となる。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

2018/19冬ダイヤ

コンパートメント客車(1等、2等)、オープン座席車(1等、2等)、1等・ビストロ合造車

ドイツの客車列車、途中増解結なし

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Züge: Teil 2 1994-2020 /Jean-Pierre Malaspina, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)